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組織に広がるコーチングの可能性

原文:New Opportunities for Coaching in Organizations
組織に広がるコーチングの可能性
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数字は現実を物語る。2013年に実施されたエグゼクティブ・コーチング調査によると、アメリカでは、34%のCEOと51%のシニア・エグゼクティブがコーチングを受けている。(米スタンフォード・ビジネススクールのリーダーシップ研究開発センター、スタンフォード大学 コーポレートガバナンスのためのロックセンター(Rock Center)、また、マイルス・グループ(The Miles Group)社による調査結果)

また、国際コーチング連盟(ICF)とヒューマン・キャピタル・インスティチュート(HCI)が発表した、組織におけるコーチングに関する調査「Building a Coaching Culture(2014年)」によると、43%の回答者は、彼らの所属する組織は社内コーチを採用していると報告しており、60%が、自社の優秀な社員にはコーチングが提供されていると回答している。リーダーシップ・コーチングやエグゼクティブ・コーチングが、高いポテンシャルを持つ社員層のためのビジネスであり続けている一方で、コーチングは組織の下層レベルにまで浸透しており、コーチに新しい機会を提供している。

組織の中の新しいコーチング需要

組織では、優秀な社員を繋ぎとめるため、また、リーダシップ開発やソフトスキルを促進するための方法として、コーチングがますます認識されつつある。

優秀な人材を繋ぎとめる

2008年の不況からの回復は、スピードは遅いものの確実に進んでいる。2009年以降、900万件の新しい仕事が創出されてきた。現在は、たくさんの優秀なマネージャーたちが、彼らの組織の中で、もしくは、組織外でさらに上のポジションを目指している。今世紀初頭からのドラマティックなシフトの中で、多くのエグゼクティブ達が直面している主たるチャレンジのひとつは、能力のある人材を魅了し、繋ぎとめることである。特にポテンシャルの高い人材が去っていくと、離職によるコストはとても高いものになる。したがって、トレーニングや人材開発に対する組織の取り組み方が、大きな違いを生み出すことになる。

昇給や金銭的なインセンティブだけで、優秀な人材を繋ぎとめることは難しい。調査によると、会社を辞める社員に共通している理由は報酬ではない。「機会に恵まれないこと」「仕事に新しさが感じられないこと」「挑戦できる機会がないこと」「ワークライフバランスがとれないこと」が退職理由の70%を占める。報酬に満足していないことは、離職にあまり影響していないのである。

そして、ここにコーチングがその効果を発揮できる場がある。企業のコーチはマネージャーに対して、昇進に向けた準備をさせたり、脱線した行動を是正させたりして、ポテンシャルの高い社員を開発している。それだけではなく、コーチはマネージャー達が自身の会社に対して、よりコミットするように働きかける。マネージャーや社員達は、組織へのロイヤルティと、自分自身の成長実感をもつことを求められているが、個人のスキルやソフトスキルを扱うことを通じて、コーチングは社員のロイヤルティを維持していくことに役立っているのである。ICFとHCIの2015年度のデータによると、コーチング文化が強い組織に属する60%の社員は、組織に対して高いロイヤルティがあると認識している。

リーダーシップ開発

HCI独自の調査や、ICFとHCIでの合同調査によると、リーダーシップ、パフォーマンス、変革管理は、組織を対象とするコーチングにおいて鍵となる分野である。リーダーシップ開発、変革管理や、新人研修は、特に組織が最も頻繁にコーチングを活用する領域である。

エグゼクティブやC-Suite(CEO, CFO, COO) は、組織コーチングにおいて中心となる対象であるし、また、彼らへのコーチングは高いポテンシャルを持つ領域である。スタンフォード大の調査によると、大規模な組織の33%のCEOはコーチングを受けており、100%のCEOは外部からのフィードバックを受けて、自分を変えることに対して前向きである。さらに、取締役会は、取締役やCEOに対してコーチングを奨励することが多くなってきている。

ソフトスキルの向上

人材の繋ぎ止めやリーダーシップスキルといった、従来からある領域の他に、コミュニケーション、チームワーク、意思決定などのソフトスキルも、昨今では会社にとって利益を生む分野として認識されている。その分野におけるコーチの役割は、社員の自己認識を高めることを手助けすることである。たとえば、コーチは、クライアントが効果的なフィードバックをしたり、チームに積極的に参加したりできるような能力を養うためのサポートができるかもしれない。

組織は、すべての階層において、コーチング文化を築くことの価値を理解し始めており、そのことがもたらすであろう影響はとても大きい。2015年度のICFとHCIによる「コーチング文化と社員のロイヤルティ」の調査によると、「社内に強いコーチング文化がある」と回答した企業は、参加企業全体のわずか13%だった。このようなまだ未開拓の領域から、新しい機会が大きく開かれている。

すべてのコーチに機会を

賢明でビジネス上成功しているコーチは、組織の中に顕在化しているニーズや傾向に合わせて、自分たちのサービスをシンクロさせたり、前に押し進めたりすることを習得している。

すでにCEOやC-Suiteのリーダー達にエクゼクティブ・コーチングを実施したことがあるベテランのコーチ達は、自身の経験を広げたり、多様化するための一つの手段として、新米や中堅のマネジャ―達を新たな対象とすることができる。

企業の中で経験を積んでいくことについて野心的なコーチにとって、これらのマネージャー達にコーチすることは、最高の機会となっている。

コーチが自身の価値を示し、組織の中で、新しいビジネスを創り上げていくためには、どのようなサービスをつくり出すことができるだろうか?独自のプレゼンテーションやワークショップを実施することは、人事の役員のような、組織で決裁権をもつ役員に対してどのようにコーチが彼らの戦略的ゴールを支援したり、コーチングがその対価に匹敵するくらい高い効果を提供できるかを示すことができる。

まず、スタートラインに立とう。小さいところから始めよう。具体的にしよう。成長に向けた目標にフォーカスして、目に見える変化を起こせるようなプログラムを作ろう。

多くの組織が必要としている、改善すべき領域が存在するのだ。だから、自分にとってのチャレンジを選んで、進んでみよう。

筆者について

マーク・ウェインスタイン(Marc Weinstein)博士は、フロリダ国際大学(Florida International University)の人事管理の分野における博士課程プログラムの教授/担当ディレクター。また、Greater Miami Society for Human Resource Management(GMSHRM)のコア・リーダーシップ担当バイス・プレジデントである。

【翻訳】Hello, Coaching! 編集部
【原文】New Opportunities for Coaching in Organizations
(2016年4月16日にICFのCoaching Worldに掲載された記事の翻訳。ICFの許可を得て翻訳・掲載しています。)


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