Coach's VIEW は、コーチ・エィのエグゼクティブコーチによるビジネスコラムです。最新のコーチング情報やコーチングに関するリサーチ結果、海外文献や書籍等の紹介を通じて、組織開発やリーダー開発など、グローバルビジネスを加速するヒントを提供しています。
フィードバックを活かすリーダー

リーダーが周囲にフィードバックを求めることは、自己成長にとって重要であるだけでなく、チームとの信頼関係を深め、組織全体のパフォーマンスを高めるうえでも欠かせない行為です。このことは組織における共通認識になってきており、多くの組織がリーダーのマネジメントに関するフィードバックアンケートを導入しています。
では、そのフィードバックは実際にマネジメントに活かされているのでしょうか。
私のクライアントである企業のリーダーに、フィードバックをどのように活かしているかを聞くと「会社がシステマティックに行い結果を共有されますが、毎年、ほとんど同じ結果なので、あまり気にしていません」との声が多く、せっかくのフィードバックを活かせていない人が多いように感じます。
そのような問題意識の中、フィードバックを活かせるリーダーが増えていくためのヒントを得るために、コーチ・エィのコーチング研究所と調査(※)を実施しました。
フィードバックを活かすリーダーと活かさないリーダー
コーチ・エィが対話型組織開発を支援するコーチングサービスでは、インターナルコーチ(コーチングを学び社内で実践する人)とステークホルダー(インターナルコーチのコーチングを受ける相手)の両方にコーチングの開始時と終了時に前後の変化を可視化するためのアンケートを実施します。「インターナルコーチのコーチングスキル」に関する項目の中には「ステークホルダーにフィードバックを求める」と「ステークホルダーからのフィードバックを活かす」というものがあります。
私は、フィードバックに関するこの2つのコーチングスキルが、事前事後で上がるインターナルコーチと、上がらないインターナルの違いに着目しました。そして、それぞれのグループのインターナルコーチの「個人の状態、リーダーとしての意識・行動」の項目の変化に焦点を当ててみることにしました。
「ステークホルダーにフィードバックを求める」スキルが「終了時に上がらなかったインターナルコーチ」と「終了時に上がったインターナルコーチ」を比較すると、自身の「個人の状態、リーダーとしての意識・行動」にプラスに有意な変化があった項目は以下の4つでした。
- 自分から積極的に目標を立てて挑戦している
- 創意工夫しながら仕事に取り組んでいる
- 自分の目標や行動・ふるまいについて、周囲にフィードバックを求めている
- 組織の目標達成・成長のために、周囲の人に対して、言いにくいことでもあえて伝えている
また「ステークホルダーからのフィードバックを活かす」スキルが「終了時に上がらなかったインターナルコーチ」と「終了時に上がったインターナルコーチ」を同様に比較すると、自身の「個人の状態、リーダーとしての意識・行動」にプラスに有意な変化があった項目は以下の7つでした。
- 自分から積極的に目標を立てて挑戦している
- 創意工夫しながら仕事に取り組んでいる
- 自分の目標や行動・ふるまいについて、周囲にフィードバックを求めている
- 組織の目標達成・成長のために、周囲の人に対して、言いにくいことでもあえて伝えている
- 組織の存在意義や目的について、自分なりの意味づけをしている
- 市場や社会の変化について、周囲の人と情報や意見交換をしている
- 自分の強みや課題を明確に認識している
2つの結果を比較してみると「フィードバックを活かす」スキルが上がったインターナルコーチに関しては、太字の3つの項目が増えていることがわかります。
この調査結果からあなたは、フィードバックを活かすリーダーについて、どのような人物像を思い浮かべますか?
私には「自分の外側にも内側にも積極的にアクセスし、視点を固定せず、柔軟に自分自身を更新し続けている人」という人物像が浮かびました。
ワクワクする新しいことにもっと触れてみる
あらためて考えてみると、フィードバックを活かすということは、これまで自分が正しいと思ってきたことや当たり前のように行ってきたことを「変える」選択をすることです。しかし、今のままでも十分できている(と自分は思っている)ことについて、そのやり方を変えるには、それなりの動機とエネルギーが必要です。自分自身にも照らし合わせてみると、いつも通りの毎日を過ごしている状態では、あえて変化を選ぶエネルギーは湧いてきません。
このような背景を踏まえると、前述の調査で明らかになったリーダーの「個人の状態、リーダーとしての意識・行動」の項目を体現することが、変化へのエネルギーを生み出すことになると感じます。
- 組織の存在意義や目的について、自分なりの意味づけをしている
- 市場や社会の変化について、周囲の人と情報や意見交換をしている
- 自分の強みや課題を明確に認識している
たとえば、外に出て新しい人と出会ったり、新しい情報に触れると視界が開けます。そして、会社に戻り「こんな人に会えた、こんな情報に触れた、こんなことに興味を持った、もっとこういうことをやってみたいと思った」と仲間に話すことで、組織の存在意義や目的について、自分なりの意味づけが広がるのを感じます。同時に、やりたいことが見つかると、それを実現する能力を自分は十分に持っているだろうか?という問いが湧き、自分の内側にある能力やリソースに向き合うことができます。
その上で、もらったフィードバックを眺めてみると、手に入れたい未来に向けて大事なことが浮かび上がってくるのです。フィードバックをとおして自分に必要なものが見つかれば、人はそれを自然と活かし、今までのやり方、あり方を変えられるのではないでしょうか。そして、手に入れたい未来に向けて、さらに自らフィードバックを求めるようになるのではないでしょうか。
フィードバックは、周囲の人が自分のために手を止め、時間をとって届けてくれた贈り物です。そのフィードバックを活かすリーダーになるために、意識と行動を外に向け、ワクワクすることにもっと触れてみませんか? あなたが見つけたワクワクを、社内に持ち帰り、未来に向けた対話に周囲を誘ってみませんか?
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※ 調査対象:コーチ・エィのプログラム・DCDに参加したインターナルコーチ 1,164人
調査内容: D-meter 1回目・2回目
調査期間:2021年3月~2024年12月
コーチング研究所 2025年
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