コーチングの基本

コーチングの歴史、具体的なコーチングスキルなど、コーチングとは何かを知るための基礎知識をご紹介します。


【図解】コーチングとは?ティーチングとの違いで学ぶ、その意味と効果的な使い分け

【図解】コーチングとは?ティーチングとの違いで学ぶ、その意味と効果的な使い分け

1.育成手法としての「ティーチング」と「コーチング」

企業のリーダー層から、主体性を引き出す育成手法として注目、導入されているコーチング。けれど、コーチングももちろん万能ではありません。ゆえに、無理に全てをコーチング型に変えようとすれば、弊害にもつながります。

成果を上げているリーダーは、従来の育成法である「ティーチング」ともう一つの育成手法である「コーチング」を適切に、効果的に使い分け、時には、両者を合わせて使うという試みをしています。

まずは、それぞれどんな育成手法なのか、コミュニケーションスタイルなのかを簡単に確認しておきましょう。

1.1.ティーチングとは

ティーチングは、学校教育から始まり、組織における人材育成、あるいは生涯教育など、「教育=ティーチング」といってもよいほど一般的に使われている、私たちにとってもなじみのある手法です。

平たく言えば、ティーチングとは、知っている人が知らない人に教える、できる人ができない人に教える指導法です。言ってみれば「自分が持っている知識、技術、経験などを相手に伝えること」と定義することができるでしょう。この性質から、基本的に、コミュニケーションスタイルは、一方通行となります。

1.2.コーチングとは

一方、コーチングでは、基本的に「教える」「アドバイスする」ことはしません。その代わりに、「問いかけて聞く」という対話を通して、相手自身から様々な考え方や行動の選択肢を引き出します。

コーチングは、次のように定義できるでしょう。

「問いかけて聞くことを中心とした"双方向なコミュニケーション"を通して、相手がアイディアや選択肢に自ら気づき、自発的な行動を起こすことを促す手法」

コーチングについての情報はこちら
Hello,Coaching「コーチングの基本」

2.どんなときにコーチングし、どんなときにティーチングするのか?

コーチングとティーチングのどちらを適用するかは、相手に求められるタスクの重要度やその人が持っている能力(スキル)によって異なります。

その目安となるのが、次のマトリクスです。

重要度・難易度とスキルの高低の四象限マトリクス

ケーススタディを交えながら、具体的に検討してみましょう。

2.1.ケース(1)A領域:

営業部メンバーのOさんがある顧客から、「当社にカスタマイズした詳細な資料を至急持参して欲しい」という依頼を受けました。この顧客とは大口の契約を見込んでおり、重要な案件です。しかし、実はOさん、ワードやエクセルを扱うのは大の苦手で、一向に手をつけらないと上司であるあなたに相談にきました。

さて、あなたが上司なら、どのような関わりをしますか?

(もちろん、資料作成が得意なメンバーの協力を得るというような選択肢もありますが、今回は、あくまでもOさん本人が資料作成を行うことが求められる場合という設定で考えてみましょう。)


このケースは、先ほどのマトリクスでいくと、重要度・難易度の高い業務をスキルの低い人がする「A領域」になります。ゆえに、「ティーチング」が最も適する領域です。Oさんは現状、ワードやエクセルを十分に使えないわけですから、問いかけてみたところで、それ以上は引き出せません。基本的には手取り足取り教えてしまうのが効率的です。

では、次のケースはどうでしょうか?

2.2.ケース(2)B領域:

先ほどのOさん、別件で、社外での重要なプレゼンテーションを行うことになりました。そのプレゼンテーション内容について、上司であるあなたにOさんが相談に来ました。Oさんは仕事の知識や経験も豊か、かつ、プレゼンテーション能力も高い人材です。

さて、この場合、あなたが上司ならどう関わりますか?


このケースは、スキルの高い人が、重要度・難易度の高い仕事をするという「B領域」に当てはまります。場合にもよりますが、基本的には「コーチング」が最も適する領域です。

「どのようなプレゼンにしたいのか?」
「プレゼンを成功させるポイントは何か?」
「一番に伝えたいことは何か?」

などと問いかけることで、成功イメージを具体化するといった関わりが効果的です。

もちろん、Oさんにない視点や経験が役に立ちそうな場合、また、Oさんもそれを求める場合は、それらを共有したり、教える、ということも合わせて行ってもよいでしょう。(この時、すべてをあなたが直接教える以外に、最適な人物を紹介するのもひとつです。)しかし、基本的にはコーチングのスタンスで向き合うのが効果的なケースと言えます。

2.3.C領域/D領域

残り2つの領域についてもみておきましょう。

C領域のように、重要度・難易度が低いことをスキルが高い人が行う場合、一般的には一任してよい領域と言えます。余力がある場合や、新たな取り組みやさらなるバージョンアップをしたい場合などは、コーチングを取り入れるのもいいでしょう。

一方、D領域のように、重要度・難易度もスキルも低い場合なら、本人の自発性を促進し、自ら考え、自ら行動する力を養う目的で、コーチングを用いることも検討の価値があるでしょう。ただし、他の案件の優先順位や求められるスピードによっては、ティーチングを選んでもいい領域でしょう。

そうした判断のもうひとつの目安となるのが、ティーチング、コーチング、それぞれの特性になります。

3.ティーチング、コーチングのメリットと限界

ここで少し視点を変え、ティーチングとコーチング、それぞれの特性、具体的にはメリットと限界に着目し、使い分けを考えてみましょう。

3.1.ティーチングのメリットと限界

メリット:

  • 一度に大勢の人数を育成できる
  • やり方や価値観の統一を図ることができる
  • 速いスピードで育成できる

ティーチングのこうした特徴から、ティーチングが適しているのは、たとえば、次のようなときになります。

適した場面:

  • 基本的な知識を教えるとき
  • 社内のルールを徹底させるとき
  • 緊急性が高いとき
  • コンプライアンスを遵守させるとき

ティーチングは、情報伝達という一方通行な手法ですから、同時に大勢の相手に同じ内容を学ばせることに優れています。また、基本知識やコンプライアンス、社内ルールというように、正解が明らかなことや、すでに実証されている方法を伝達する場合、教えられる側が考えたり、思考錯誤する時間を最低限に抑え、お互いにとっても、組織全体にとっても、生産性が高まると言えるでしょう。

また、緊急性が高い場合など、スピードを求められる時にも有効です。

限界:

  • 教える側の知識や経験に左右される
    →教える側が持っていること以上を伝えたり、引き出したりできない
  • 教えられる人の個性は活かされない
    →教える側と違うタイプの人にとっては、役に立たなかったり、苦痛や労力を伴う場合がある
  • 教えられる側を受け身にさせる
    →成功しても自信につながりにくく、失敗した場合は責任転嫁する場合がある

また、一方通行というコミュニケーションスタイルゆえに、「本人の中にあるもの(「ビジョン」「やりたいこと」「価値観」「リソース」など)」を引き出すことには、ティーチングはあまり向きません。

3.2.コーチングのメリットと限界

メリット:

  • 相手の考える力を育て、自発性や応用力、再現性を高められる
  • 相手の可能性を引き出すことができる
  • 相手の個性を活かすことができる
  • 相手の学習力自体を上げることができる

コーチングのこうした特徴から、コーチングが適しているのは、たとえば、次のようなときになります。

適した場面:

  • 本人の中にしかない情報やリソースにアクセスしたいとき
  • 答えを見つけるプロセスを学習させたいとき
  • 目先の答えだけを与えたくないとき
  • 自発的な行動を促したいとき

具体的には、キャリアビジョンを考える、目標設定をするといった場面が当てはまります。また、新たな役職や役割を得たとき、それをいち早くこなすことをサポートする手段としてのコーチングも有効です。

コーチングする時、経験のあるから上司から見ると、部下自身には見えていないことも見えるので、ついついそれを教えたくなることがあるかもしれません。しかし、コーチングで向き合うと決めたのなら、押しつけは禁物です。(ただし、視点を提供するサポートとして、本人に聞きたいかどうかを確認してから、1つの視点として伝えるのはよいでしょう。)

相手に自ら気づいてもらうことで、自発的な行動を促していくのがコーチングです。最終的に答えが同じような場合でも、与えられた答えなのか、自分の内側から導き出された答えなのかで、本人の取り組みやコミットメントに大きな差が生まれます。

限界:

  • ある程度の時間がかかる
  • 一度に大勢を育成するのは難しい
  • 方法や価値観が多様化するので、対応やマネジメントが複雑になる
  • 相手に全く知識や経験がないとき

基本的に、緊急事態などスピード最優先のときには、コーチングはあまり向かないと言えます。ただ、初めは時間や労力がかかったとしても、結果的に、多様性や主体性が育ち、最終的にはスピードアップや高い成果に結びつく可能性が高いことにも目を向けておくといいでしょう。

注意したいのが、相手に全く知識や経験がないときです。このとき、無理にコーチングをしても、何も出てきません。むしろ、相手は苦しさや反発を感じたり、自信を失ったりしかねません。相手にある程度の知識や体験、もしくは想像力でカバーできるような疑似体験があるかを見極めて、コーチングは用いる必要があります。

3.3.メリットと限界、適した場面のまとめ

ティーチング コーチング
メリット
  • 一度に大勢の人数を育成できる
  • やり方や価値観の統一を図ることができる
  • 速いスピードで育成できる
  • 相手の考える力を育て、自発性や応用力、再現性を高められる
  • 相手の可能性を引き出すことができる
  • 相手の個性を活かすことができる
  • 相手の学習力自体を上げることができる
限界
  • 教える側の知識や経験に左右される
  • 教えられる人の個性は活かされない
  • 教えられる側を受け身にさせる
  • ある程度の時間がかかる
  • 一度に大勢を育成するのは難しい
  • 相手に全く知識や経験がないとき
適した場面
  • 基本的な知識を教えるとき
  • 社内のルールを徹底させるとき
  • 緊急性が高いとき
  • コンプライアンスを順守させるとき
  • 本人の中にしかない情報やリソースにアクセスしたいとき
  • 答えを見つけるプロセスを学習させたいとき
  • 目先の答えだけを与えたくないとき
  • 自発的な行動を促したいとき

4.ティーチングとコーチングをうまく組み合わせ、効果を発揮する

多くの職場では、育成や指導の際にティーチングが用いられています。まずは、場面やケースを見極めながら、適宜、ティーチングをコーチングに置きかえたり、ティーチングとコーチングを補完的に合わせて使えるようになれば、育成の質や効果を高めていくことができるはずです。

たとえば、先ほどティーチングのメリットのところで扱ったコンプライアンス遵守などの場面。基本的にはティーチングが向いているケースですが、もしそのとき、「こうすべき」「これが正しい」とティーチングされるだけではなく、加えて「どうしてこれが重要だと思うか?」「具体的にはどのような行動になるか?」と問いかけられれば、遵守しようという意志や行動への意欲が高まります。このように、1つのケースに2つの手法を補完的に使うことが効果的な場合もあります。

一方で、ティーチング、コーチングどちらの手法かにかかわらず、場面や状況に適切でない手法を用いることで、効果が上がらないばかりか、かえって不満や不信を生みかねないことにも十分注意しておく必要があります。

大切なのは、ティーチング、コーチング、それぞれのメリットと限界を念頭に、目の前の相手の状況やケースを見極め、最も効果的と思われる関わりを毎回「選ぶ」ということなのです。


この記事はあなたにとって役に立ちましたか?
ぜひ読んだ感想を教えてください。

投票結果をみる

※営利、非営利、イントラネットを問わず、本記事を許可なく複製、転用、販売など二次利用することを禁じます。

コーチング

関連記事