コーチングカフェ

コーチが、日々のコーチングの体験や、周囲の人との関わりを通じて学んだことや感じたことについて綴ったコラムです。


あなたの「好き」はあなたのパフォーマンスを上げる

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社会人になって9年になりますが、いま、仕事が楽しくて、面白くて、たまりません。なぜいま、これほどまでに「楽しい」と思えるのか?それを考えてみました。

松下村塾とコーチング

私は、幼少のころから、幕末史が「好き」でした。

幕末の偉人に吉田松陰がいます。吉田松陰は、松下村塾の塾長を務め、その塾は、奇兵隊を作った高杉晋作や初代内閣総理大臣の伊藤博文といった数多くのリーダーを輩出しました。

この松陰による塾生の育成方法とコーチングに親和性があることに気づいたのは、コーチになって間もない頃です。

松陰が祀られている東京都世田谷区の松陰神社には、復元された松下村塾(模造)があり、そこには、次のような説明があります。

「先生(吉田松陰)は塾生それぞれをよく観察、記録し、そこで気付いた大切なことは手紙にして渡しました。先生が手を加えて正していく教育ではなく、自分で気づかせ、個性を生かす」

なんと、松陰は塾生をよく「観察」して、それを「記録」し、気づいたことをもとに「個別」にコミュニケーションをとり、塾生に「自ら」気づかせることを重んじていたというのです。これはまさに、コーチングと重なります。コーチングでは、クライアントをよく「観察」した上で、その人に合わせて伝え(個別対応)、主体性を促すことを原則としているからです。

この説明を読んだ瞬間、私の気持ちは高揚しました。松陰の塾生との関わり方とコーチングとのつながりを発見したからです。持っていたスマホで説明の写真を撮り、そして模造を前に、松陰がどのように高杉晋作や伊藤博文と接していたのかを想像し始めました。

「松陰はきっと、そこに座って晋作と話していたんだ」

「コーチングが存在しなかった時代に、松陰はどうやって、観察・記録・主体性を促す手法に至ったのだろう?」

こんなことを考えながら、松下村塾の模造を見つめていました。

吉田松陰とのつながりを見つけて

自分が昔から大好きな幕末史の重要人物である吉田松陰とコーチングのつながりを見つけたことで、自分が仕事としているコーチングがさらに面白くなり、「好き」の度合いが進化していきました。

仕事だけでなく、プライベートな場面でも、コーチングについて話すことが増えました。

相手が歴史好きだと知ればもちろんのこと、そうでなくても、自分の言葉でコーチングについて話したくなり、また話せるようにもなりました。そして、コーチングのことがさらに知りたくもなってきました。

最近では、コーチング前の準備の際に自分にこんな問いを投げかけることもあります。

「松陰から、今の私がコーチとして学べるものは何か?」
「逆に松陰が、私の今しているコーチングから何を学びたいと思うのだろうか?」
「私は松陰ほど、クライアントに対して観察、記録、個別対応できているのだろうか?」

特に最後の問いをするようになってからは、クライアントについて、より詳細な記録をするようになりました。

「好き」はパフォーマンスを上げる

一橋大学大学院教授の楠木建氏は、その著書『「好き嫌い」と経営』で、経営者に大事なのは誘因(インセンティブ)ではなく、動因(ドライバー)であると説いています。

これは、どういうことなのでしょうか?

誘因(インセンティブ)とは、人の行動や意思決定をある方向へ「誘うもの」であり、当事者を取り巻く外的な環境や条件にあります。たとえば、給料やボーナスといった金銭的なものや昇進や出世などで、目の前にそうした誘因を提示されれば、人はある種の行動をとります。

一方、動因(ドライバー)は、人の内部から自然と湧き上がってくる、内発的なモチベーションで、強い動因さえあれば、外的な誘因が弱く、負の誘因(ディスインセンティブ)があったとしても、人は動きます。

松陰が好き。
幕末が好き。

私の場合、松陰の手法とコーチングの重なりを知った瞬間から、仕事の面白みが増したのは言うまでもありません。私にとっては、この「重なり」こそが、楠木教授のいう、「動因」(ドライバー)です。そして、この動因によって、私はより、情熱をもって仕事に取り組めているのです。

周りの人の「好き」は何だろう?

みなさんは、自分の「好き」をどれだけ意識されているでしょうか?
あなたの「好き」は、何ですか?
あなたの「好き」は、仕事にどんな影響を与えていますか?
あなたの「好き」とあなたの仕事には、どんな重なりがありそうですか?
そして、みなさんだけでなく、周囲の人たちの「好き」をどれだけ知っているでしょうか?

自分の「好き」を仕事に活かそう。自分の体験からも、強くそう思います。

【参考資料】
楠木建(2014)『「好き嫌い」と経営』東洋経済新報社。
東京都世田谷区「松陰神社」公式ホームページ


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