コーチングカフェ

コーチが、日々のコーチングの体験や、周囲の人との関わりを通じて学んだことや感じたことについて綴ったコラムです。


「コンフリクトをあつかう技術を身につける」

「コンフリクトをあつかう技術を身につける」

以前、 経営幹部に抜擢されたAさんのエグゼクティブ・コーチング をすることになりました。スポンサーである社長がAさんに期待していたのは「経営者になる」ということでした。

スタートして半年ほど経った頃、 Aさんとのコーチングについて社長に報告をすることになりました。

Aさんはこれまでよりも多くの部下を束ねつつも、事業の数字は伸びてきており、コーチングはとても順調に進んでいると、私は思っていました。

しかし、社長が私に放ったのは「(Aさんは)全く経営者になっていない」というショッキングな言葉でした。

社長が期待する経営者とは、今の事業の枠を越えて、会社を成長させる人のことでした。

それに対し、社長から見えるAさんは、「自分の事業の数字を伸ばしていて、それは評価できるけれど、経営会議で会社を成長させるような提案をしていない」というものでした。

社長への報告を終えた私は、次のAさんとのセッションがとても憂鬱でした。Aさんに社長からのフィードバックを伝えなければならなかったからです。

Aさんは、情熱的に部下を牽引していく一方で、どちらかと言うと感情が表に出やすいリーダーでした。部屋でAさんを待っている時間が、私にはとても長く感じられました。

セッションがはじまり、私はメモしていた社長の言葉をゆっくりと読み上げていきました。

Aさんは黙って聞いていましたが、顔がみるみる紅潮していくのが分かりました。

3分ほどで読み終えると、Aさんは「今日のセッションはここまでにしてください」とだけ言って部屋を出て行ってしまいました。

次のセッションでも、社長からのフィードバックを思い出したAさんは感情的な口調になっていきました。

そこで、私は「Aさんのコーチとして、私はAさんと会話を続けたいです。だから、セッション中の話題を変えたくなったり、気分が乗らないときには、その場で遠慮なく教えてください」と伝えました。Aさんは「分かりました」と答え、やがて、Aさん自身の課題について話し始めました。

社長のフィードバックは 、Aさんにとって痛いところを突くものだったということでした。

Aさんは、まさに経営メンバー同士のコミュニケーションに難しさを感じていたからです。

相手の事業領域に踏み込むような話題を持ち出すことには躊躇したり、利害が一致しない時に前向きに議論しづらいとのことでした。

この時のコーチングで、私が深く学ばせていただいたことは、経営者は、彼らが管掌していない組織のことにおいても他人事にせず、意見を伝えたり、疑問をぶつけたりすることが必要であること。また、その時に生じる感情的な昂ぶりや私心をコントロールして、建設的な関係を築いていくこと、すなわち、対人関係におけるコンフリクトをあつかえることが求められるのだということでした。

コーチングによる学びがもたらすもの

コーチ・エィが提供している、coachAcademia(以下、アカデミア)は、 部下に対してコーチ型マネジメントを目指す管理職の方々が数多く受講されています。その、受講生に対して、学習の成果に関する調査(※)を実施しました。

その結果、 84%の方が「考え・意見の違う人とも、建設的な話をできるようになった」
83%の方が「表面的ではなく、相手に踏み込んだコミュニケーションを交わせるようになった」
という実感を持っていることが分かりました。

また、コーチングを活用した対象は部下だけではなく、受講生の55%が同僚という選択肢を選んでいました。

コーチングには、人それぞれの違いを認識し、違いに合わせるための「個別対応」のスキルや、コンフリクトが生じた際に、それを乗り越えて建設的な関係を築くための「アサーティブネス」といったスキルが必要です。

アカデミアの受講生たちは、対人関係におけるコンフリクトをあつかえることができるようになった実感があり、それは部下だけでなく、同僚に対しても行えるようになった可能性があるということが、調査結果から読みとれます。

コンフリクトを乗り越えるための鍵は?

社長への報告から更に半年くらい経った頃、Aさんは、「幹部同士のコミュニケーションが活発になって、全社的な新しい取り組みが始まりましたよ」と語っていました。

その時までに、Aさんは二つの「自分に対する問い」を手に入れていました。

一つは、「いま、この瞬間、自分は何をすることが会社の成長につながるのか?」。

まさに社長のフィードバックによる視座の変化でした。

もう一つは、「いま、自分はどのような感情か?」というものでした。

実は、Aさんは、私とのコーチングをスタートした当初から、大きな組織を率いてパフォーマンスを高めることを目指して、自らコーチングを学んでいたのでした。

このことによって、Aさんは目の前の出来事に対して感情的に反応するのではなく、一呼吸置いて対応することができるようになったそうです。そうすることで、議論が対立した時にも冷静さを保って、建設的な話し合いができるようになり、またそのことがAさんの自信にもなって、他の経営幹部と議論することへの躊躇が減ったと語っていました。

その後、Aさんは若手の管理職にもコーチングを学ぶことを推奨しているということでした。

これから、多くのビジネスリーダーに求められるのは、あらゆる相手と建設的なコミュニケーションが取れる能力ともいえるかもしれません。

コーチングは部下育成のスキルとしてだけでなく、多様性やコンフリクトを乗り越えるコミュニケーションの技術としても活用することができそうです。


調査期間:2018年3月12日~3月23日
対象:2018年1月時点で、アカデミア受講開始1年以上~卒業後6ヶ月以内の受講生(有効回答数:80人)
調査方法:ウェブアンケートへの回答
調査内容:coachAcademia卒業生・受講生向けアンケート(「自身の変化(8項目)」「周囲の変化(8項目)」「コーチングの活用対象」等)


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