コーチ・エィからのお知らせです。
グーグル元会長が「伝説の師」に教わった成功の秘訣
2019年12月に ダイヤモンド・オンラインに掲載された代表取締役社長 鈴木義幸の書評記事を、許可を得て転載しています。
2019年12月17日
スティーブ・ジョブズ、グーグル共同創業者のラリー&セルゲイ、グーグル元会長兼CEOのエリック・シュミット、フェイスブックCOOのシェリル・サンドバーグ、さらにはツイッターCEO、ヤフーCEO、ユーチューブCEOまで、シリコンバレーの巨人たちには「共通の師」がいたというと、ウソのような話だと思われるのではないだろうか。
だが、それがまぎれもなく本当のことなのだ。その師の名は、ビル・キャンベル。アメフトのコーチ出身でありながら有能なプロ経営者であり、「ザ・コーチ」としてシリコンバレーで知らぬ者のない存在となった伝説的人物だ。
そのビルが亡くなったことをきっかけに、このままではその教えが永久に失われてしまうと危機意識を抱いたのが、15年以上にわたってビルに教えを受けてきたエリック・シュミットら、世界的ベストセラー『How Google Works』の著者トリオだ。
シュミットらは、自分たちの体験に加え、ビルの薫陶を受けた100人近くもの人物に、ビルの「成功の教え」について取材を敢行、ついに完成したのが『1兆ドルコーチ──シリコンバレーのレジェンド ビル・キャンベルの成功の教え』(エリック・シュミット、ジョナサン・ローゼンバーグ、アラン・イーグル著、櫻井祐子訳)だ。
同書は、現役のグーグルCEO(スンダー・ピチャイ)とアップルCEO(ティム・クック)が並んで賛辞を寄せる異例の1冊となり、世界21か国での発売が決まっている。このたび日本版が刊行されたことを記念して、世界最大規模のグローバル・コーチングファーム、株式会社コーチ・エィの代表、鈴木義幸氏に寄稿していただいた。
謎に包まれた「伝説のコーチ」
ビル・キャンベル Photograph courtesy of the Campbell Family
コーチングに20年超にわたり携わっている中で、ビル・キャンベルの名前は何度か耳にしたことがあった。
スティーブ・ジョブズやエリック・シュミットをコーチしている人がいるらしいと。
そんな人がいるならばぜひ会ってみたい。
どんな人で、どんなコーチで、そして、どんなオーラを発しているのか。
それをぜひ直接体感してみたいと思っていた。
しかし、ビル・キャンベルの話は、どこか謎のベールに包まれていた。
そもそも、彼は実在しているのか? 実在しているとしてそれは本当の話なのか? ただの風の噂ではないのか?
というのも、たいてい米国で有名なコーチは、コーチングのカンファレンスで講演をし、自らの手法を共有するなどして、大きな注目を浴びている。
しかし、ビル・キャンベルには、どのカンファレンスに参加しても決して出会うことはなかった。
それどころか、彼を詳しく知るコーチさえいなかった。
そうしてビル・キャンベルの名前は、いつしか私の中で、忘れ去られたものになっていった。
なので、この本を目にしたとき、「やはりその人はいたのか!」と胸が躍った。
伝説の人物、ビル・キャンベルは実在していたのだ。
本書を読み始めて、ビル・キャンベルが3年前にガンで亡くなったことを知った。
なぜもっと彼を「探さなかった」のか。
自分を悔いた。
そして、その悔いは、本を読み進めるにつれ、より強くなっていった。
彼の偉業が、著者であるエリック・シュミットらの言葉によって明らかにされ、グーグル、アップル、アマゾンといったシリコンバレーの巨大企業の発展にいかに大きく彼が貢献したのかを知るにつれ、彼を真剣に「ググらなかった」自分の怠慢を嘆いた。
また、なぜ彼が表に出てこなかったのかも本書によって知ることとなった。
彼は黒子に徹したのだ。
自分が有名になることなどにはまったく重きをおかず、とにかく自分がコーチングしている会社の人の成長と発展にひたすら全力を尽くしたのだ。
「なぜコーチをつけているのか?」
――シュミットの答えは?
ビル・キャンベルはアメリカンフットボールのコーチから、ビジネス界に転身した人物である。
彼の言動を読み込むと、まさに彼はフットボールのチームをコーチするようにグーグルをコーチしたことがわかる。
彼は、どんな会社も、結局人で成り立っていると喝破する。
そして、人と人がどう関わり合うかが、企業の成長にとって最も大事なことであるとの信念を持ち続けた。
どんなにビジネスモデルが良くても、世紀のアイディアがあっても、チームが良くなければ何も成し得ないことを、彼はひたすらグーグルの経営陣に説いたのだ。
以前、著者のひとりであるエリック・シュミットが来日したとき、講演会が催された。弊社、コーチ・エィのスタッフのひとりが、その講演のチケットを見事に引き当て、最前列でエリック・シュミットの話を聞く幸運に恵まれた。
彼女はトークの後の質疑応答の時間、真っ先に手を挙げて質問をした。
「なぜこれだけ長い間コーチをつけているのですか?」
彼の答えは次のようなものだったらしい。
「グーグルは世界中から素晴らしい才能の持ち主を集めている。しかし必ずしもそういった人々と自分が努力なしにうまくやれるわけではない。どうすれば優秀な人々と一緒に仕事ができるのか。そのことについて常に考え、ブラッシュアップするパートナーとして、自分はコーチを持ち続けている」
そこに多様な人材がいるからといって、必ずしもイノベーションが起きるわけではない。
多様な人材とうまくやるコミュニケーションが必要なのである。
ビル・キャンベルは誰よりもそのことがよくわかっていた。
そして本書にあるように、「多才な才能が組み合わせたチームをつくれ」と強調し続けたのである。
ぜひ本書を、ビル・キャンベルがあなたの傍らでコーチしているところを想像しながら読んでほしい。
そして、世界最高のコーチのさまざまな問いかけに向けて考え、行動し、多様性を活かした世界最高のチームを作り上げてほしい。
シリコンバレーの「謎の大物」――訳者より
ビル・キャンベルの姿を初めて見たのが2011年のスティーブ・ジョブズの追悼式だったという人も多いだろう。
アップルCEOのティム・クックに「ザ・コーチ」としてうやうやしく紹介され、誰よりも先に登壇した初老の男性。あの規格外の天才として知られるジョブズが無二の親友、メンター、コーチとして慕い、アドバイスを求めて毎週会っていたという人物だ。
涙ながらに、彼の遺志を継ぐ人たちを鼓舞する熱いメッセージを語るその姿は、世界に強い印象を残した。
実際、ビル・キャンベルの名前は、ビジネス書をよく読まれる方にはもうおなじみだろう。決定的に重要な場面で助言をしてくれた、精神的支えになってくれたという最大級の賛辞とともにたびたび登場する、謎の存在だ。
彼はシリコンバレーの長老のような権力者なのだろうか? ありがたいご託宣を授ける禅の導師? それとも人柄のよい好好爺?
結局、彼は最後まで表舞台に立つことなく、2016年に亡くなってしまった。
ビル・キャンベル自身の追悼式は、テック業界中の著名人をはじめ、彼を慕う老若男女が1000人以上集結するという、歴史に残るものだった。
エリック・シュミット、セルゲイ・ブリン、ラリー・ペイジ、スンダー・ピチャイ、ティム・クック、ビル・ゲイツ、ジェフ・ベゾス、マーク・ザッカーバーグ、シェリル・サンドバーグ、ジョン・ドーア、マーク・アンドリーセン......。
これらの人々を育て、そして何より彼らに愛された人物がビル・キャンベルなのだ。
本書はその追悼式の席で、「コーチの教えをシェアしなければすべてが失われてしまう」という危機感を持った人々によって執筆された。スティーブ・ジョブズと並び、コーチと最も親しく仕事をしてきたエリック・シュミットらグーグルの三人である。
彼らは『How Google Works 私たちの働き方とマネジメント』を書いたチームでもあり、その意味で本書はその続編として読むこともできる。実際、三人は本書を執筆するうちに、前作からはビジネス上の成功に欠かせない、ある重要な要素が抜け落ちていることに気づいたという。その要素こそ、ビル・キャンベルのコーチングのエッセンスである。
歴史上、空前のスケールの偉業を成した
『1兆ドルコーチ』というタイトルは、ビル・キャンベルがシリコンバレーで生み出した価値に敬意を表してつけられた。業界の多くのリーダーがどれだけコーチを頼りにしていたかを考えれば、このタイトルは誇張ではない。
彼がコーチングを始めた当時つぶれかかっていたアップルと、まだ小規模なスタートアップでしかなかったグーグルの時価総額の合計だけでも、いまでは1兆ドルを優に超える。シュミットは「ビルの貢献をすべて合わせると、コーチした企業の株主価値は2兆ドルにもなる。こんなことは歴史上、誰もしたことがない」と語る(「シリコンバレー・ビジネス・ジャーナル」2019年4月16日付)。
コーチがとくにグーグルとアップルに力を入れていた理由について、シュミットは、シリコンバレー全体への波及効果を考えてのことだったと語っている。また彼がこうしたコーチングを完全に無報酬で行っていたのは、報酬によって目が曇るのを避けたかったからだともいう。
シリコンバレーがこれだけ成長し、しかも政治とは無縁の健全な組織運営がおおむねできているのは、ビル・キャンベルの功績によるところが大きい。彼の死は、シリコンバレーの一時代に幕を下ろす意味を持っていたように思えてならない。
故人の教えを体系立ったビジネス理論のかたちにまとめるのは難しい。何より本人からのインプットはもう得られないし、教えが美化されることもあるし、遺族への配慮もあるだろう。だがコーチを受けた側の視点から学べることも多くある。本書では、彼のコーチングのエッセンスをシャワーのように浴びることで、誰もがビル・キャンベル的視点を身につけることができる。
シリコンバレーのリーダーたちは口をそろえて言っている。困難なとき、「ビルならどうするだろう?」と一歩下がって考えることにより、チーム全体の利益になる決断を下せるのだと。
この本はシリコンバレーからビル・キャンベルへのラブレターでもある。とくに3章からの数々の胸打たれるエピソードを読むと、彼にコーチを受けた人々の豊かな感受性に驚かされ、彼が大切にした「コーチャブルな資質」とは何だろうと考えさせられる。一人ひとりが悩みながら成長し、そこには必ずビル・キャンベルがいた。
■新刊書籍のご案内
『1兆ドルコーチーーシリコンバレーのレジェンド ビル・キャンベルの成功の教え』
エリック・シュミット、ジョナサン・ローゼンバーグ、アラン・イーグル著、櫻井祐子訳 定価(本体1700円+税)ダイヤモンド社刊
★グーグル元会長兼CEO他、世界的ベストセラー
『How Google Works』の著者トリオ、待望の書下ろし!
★話題沸騰!世界21か国で続々刊行!
★グーグルCEO、アップルCEO、ユーチューブCEO、
異例の絶賛!
★ペンシルベニア大学アダム・グラント教授、序文!
★WSJベストセラー1位!NYタイムズベストセラー!
スティーブ・ジョブズ(アップル共同創業者)、
エリック・シュミット(グーグル元会長兼CEO)、
ラリー・ペイジ、セルゲイ・ブリン(共にグーグル共同創業者)、
ベン・ホロウィッツ(『HARD THINGS』著者)、
マリッサ・メイヤー(ヤフー!元CEO)、
チャド・ハーリー(ユーチューブ共同創業者)......
シリコンバレーの巨人たちの裏には、
成功の全てを知り尽くした「共通の師」がいた!
アメフトのコーチ出身でありながら、優秀なプロ経営者。ジョブズの師であると同時に、グーグル創業者たちを育て上げ、アマゾンのベゾスを苦境から救った伝説の存在。シュミットが「こんなことは歴史上、誰もしたことがない」と驚嘆するほどの偉業を次々と積み重ねてきたシリコンバレーの「謎の大物」、ビル・キャンベルの教えのすべてが、いま初めて明らかに――。
■目次より
序文――シリコンバレー最大の伝説(アダム・グラント)
CHAPTER 1 ビルならどうするか?
――シリコンバレーを築いた「コーチ」の教え
- スティーブ・ジョブズとの信頼関係
- グーグルCEOたちへのコーチング
- ビル・ゲイツへのハグ
CHAPTER 2 マネジャーは肩書きがつくる。リーダーは人がつくる
――「人がすべて」という原則
- 「第一原理」で人を導く
- プロダクトがすべてに優先する
- 異端を受け入れよ
CHAPTER 3 「信頼」の非凡な影響力
――「心理的安全性」が潜在能力を引き出す
- 信頼は「きれいごと」ではない
- 「完全な率直さ」を身につける
- 「勇気」の伝道師になる
CHAPTER 4 チーム・ファースト
――チームを最適化すれば問題は解決する
- 「正しいプレーヤー」を見つけよ
- 「最大の問題」に切り込む
- 正しく勝利する
CHAPTER 5 パワー・オブ・ラブ
――ビジネスに愛を持ち込め
- 「やさしい組織」になる
- つねにコミュニティに取り組む
- 創業者を愛せ
CHAPTER 6 ものさし
――成功を測る尺度は何か?
- ビジネスを成功させるカギ
- リーダーは「行動」でその座を勝ち取る
- 「人間的な価値」が成功につながる
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