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コーチ・エィからのお知らせです。


【山口周×鈴木義幸×中島宏】対話を増やし、関係性を変え、組織を変えるには

【山口周×鈴木義幸×中島宏】対話を増やし、関係性を変え、組織を変えるには

エグゼクティブ・コーチングと聞くと、経営者のための能力開発という印象がある。しかし、株式会社コーチ・エィが提供してきたエグゼクティブ・コーチングは、「人と人の関係性を再構築することによって、組織内のパフォーマンスを最大化するもの」と位置づけており、次元を異にしている。

今回は、組織開発の観点からエグゼクティブ・コーチングの価値と効果を探るため、コーチ・エィ代表取締役社長の鈴木義幸氏をはじめ、独立研究者の山口周氏、DeNAの中島宏氏を迎え、パネルディスカッションが行われた。その模様をリポートする。

「どうすべきか」と「どうしたいか」という2つの問い

鈴木さんの講演では、エグゼクティブが周囲との関わりを見直すことによって、組織開発につながっていく。無数に存在する二人間の対話こそが組織の未来を変えていくのだというお話でした。

まず、エグゼクティブ・コーチングを受けていらっしゃる中島さんからお話を伺えればと思います。実際のコーチングでは、どんなことを話しているんですか。

中島 私の仕事上、考えなくてはいけないこと、意思決定すべきことなどが日々たくさんあるのですが、どうしても時間が限られる中で、"緊急性は低いけど重要性が高いもの"についての検討になかなかマインドシェアをさけなかったりすることが出てきてしまいます。

そういうときに、コーチから「問い」を立ててもらい、そうした検討項目に対して自分のマインドシェアを割き、しっかり考えるための「壁打ち相手」として月に1回、コーチングしていただいています。

大学卒業後、経営コンサルティング会社を経て2004年12月DeNA入社。外部企業のIT戦略立案を担当後、広告営業部署のグループリーダーを経て、新規事業の統括を担当する社長室室長。以降、2009年4月執行役員兼新規事業推進室室長、2011年9月執行役員兼ヒューマンリソース本部本部長、2015年5月執行役員兼オートモーティブ事業本部長を歴任。2019年4月から現職。

既存の思考パターンを崩すのが、コーチングの一つの効果といわれます。ある「問い」を投げかけられて、中島さんの従来のパターンが崩れたり、新しいものが出てきた経験はありますか。

中島 私はDeNAという会社で4つの事業に携わっています。

各事業の「事業リーダー」としての立場と、4つを統括する「事業本部長」の立場、さらに会社全体の視点に立つ「常務執行役員」の立場を同時に担っていますが、それぞれの視点で思考を切り替えると、たまに同じ検討項目でも結論や考えなければいけないことが変わったりすることが出てくるんです。

単独事業で行うべき打ち手と、事業群でシナジーを意識した際に行うべき打ち手で、優先順位が微妙に変わったり。

そこを「どうしようかと思っているんで、考えたいんですよね」とコーチに話したときに、「そもそも中島さん自身は何をしたいんですか。立場はさておき、自分としてどうしたいの?」と不意に言われたんです。

急に"自分"という全然違う軸で問いかけられると、使う脳みそがガラガラと変わるみたいなことはありましたね。

会社にとってどうしたらいいかとか、メンバーにとってどうなんだろうと普段から真面目に考えています。そのときの問いは立場ではなく、放置されていた自分の意思を呼び起こしてくれたので、いい問いでした。

山口さんは『ニュータイプの時代』などの著書で、優秀な人の定義が変わっていると書かれていますが、コーチングのように相手と対話することが今の社会においてどういった意味を持つとお考えですか。

山口 「どうすべきか」と「どうしたいか」の2つの問いがあると思います。

1970年東京都生まれ。慶應義塾大学文学部哲学科、同大学院文学研究科修士課程修了。電通、ボストン・コンサルティング・グループなどで戦略策定、文化政策、組織開発等に従事。株式会社モバイルファクトリー社外取締役。一橋大学経営管理研究科非常勤講師。著書に『ニュータイプの時代』『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』『武器になる哲学』など。

僕たちは、子どものときから「どうしたいか」とは聞かれない。どちらかというとそれを抑え込まれて、常に「どうすべきか」を問われて、その思考様式をするのが良い子で優秀な人だと刷り込まれている。

社会に出てしばらくは、こういう仕事をやれとか、こうしなきゃダメだとか誰かが言ってくれるわけですけれども、ある程度キャリアが上がって出世したりすると、「どうすべきか」を聞いても誰も答えを出してくれなくなるときが来る。

大きな事業を作って価値を出している人って、やはり「どうすべきか」じゃなくて、「どうしたいか」で動いている気がするんです。こういう時代だからこそ、やはり「どうしたいか」を考える力が大事になってくると思いますね。

やりたいことを考えるきっかけとしてのエグゼクティブ・コーチング

エグゼクティブ・コーチングの現場では、「どうしたいか」というWILLを問うことがよく起こるものなんでしょうか。

鈴木 例えば、ある会社のNo.2の方にやりたいことを聞く機会があり、その方はとうとうと話された。ところが、それはトップが言うことの焼き直しであって、トップの発言とは明らかにサウンドが違うんです。

慶應義塾大学文学部人間関係学科社会学専攻卒業。株式会社マッキャンエリクソン博報堂(現・株式会社マッキャンエリクソン)勤務後に渡米。ミドルテネシー州立大学大学院臨床心理学専攻修士課程を修了し、 帰国後、コーチ・トゥエンティワンの設立に携わる。2001年コーチ・エィ設立に伴い、取締役副社長に就任。2007年1月取締役社長就任を経て、2018年1月から現職。

「やりたいとおっしゃっていますが、そう聞こえない」と言うと、「いや、そんなことない。俺はこれがやりたいんだよ」「いや、そうは聞こえない」とやっているうちに怒り出してしまう。

やり取りを4セッションくらい続けると、最終的に「俺、やりたくないかもしれない」という話になったりする。

でも、その後にスクラップ&ビルドをして、改めて「やっぱりこれがやりたいんだ」というところに至る。

結果的に同じ言葉だったとしても、それはやりとりをする前とはまるで違うもの。自分で選んだものには力があるんです。

中島 コーチとの対話では、自分のやりたいことに目を向け、考えるきっかけをもらうことは確かです。しかし、コーチングでは自分の中に潜むWANTを紡ぎ出すメソッドは教えてくれません。

コーチングという名前なので、メソッドを教えてくれると勘違いする人は多いかもしれませんが、自分も受けてみて、まるでそうじゃないと再認識しました。

山口 コーチ・エィさんではありませんが、私も個人のコーチをつけていた時期があります。

「これをやらなきゃ」と言っているときに、「山口さん、本当にやりたいことやってます? こちら側に全然エネルギーが伝わってこないんですけど」と言われたことが結構あるんです。

でもそのうち、「こういうこと、いつかやってみたい」というような話が自分の中からすーっと出てくる。それは、自分の頭だけで考えることとは明らかにエネルギーレベルが違うようです。

実際に、コーチの方はどういったところを見ているんですか。やはり熱量とか、本人にはわからないメタ認知的なところから醸し出される何かで伝わってくるものなんでしょうか。

鈴木 コーチングでは、自分の感覚に信頼を置いて人の話を聞くトレーニングをします。言葉の内容と、表情や声から伝わってくるものが一致しているかどうかということにアンテナを立てて、何か違う感じがしたときには、そのことを話題にします。

コーチとクライアントの間だけで「本当にやりたいことかどうか」を話すわけではありません。その方がやりたいことを上司や周りの同僚、部下と話す機会を作るにはどうしたらいいかということも話していきます。

ビジョンとは、その方の中にあるものをコーチが引き出すのではなく、二人が話している「間に生まれてくる」ものだと思っているんです。

視点の違う人と話せば話すほど、違うものが生まれてくる。そういう機会がたくさんあるほど、最終的に選択肢が増えていきます。

ここでコーチングの悩みをお持ちの方からの質問です。自分の会社のエグゼクティブにコーチングを受けてもらいたいのですが、エグゼクティブの方自身からは「コーチングは要らない、問題解決方法が欲しいのだ」と言われてしまう。

山口 3日間くらい断食して滝に打たれたりするといいんじゃないですかね。どこかにすごい答えがあって、人生打ち止めになるまでみんな追い求めている。

僕は十数年、正解を作る仕事をやってきて、職人として極めようとしていましたが、正解に価値がないというところに思い至りました。

僕は断食をしませんでしたが、この先いつまで価値のない正解を追い求めるのかということですね。『ニュータイプの時代』を読んでほしいです。

モデレーターはNewsPicksアカデミア編集長の野村高文が務めた

まさに山口さんに「WANT」に関する質問が来ています。そもそも「どうしたいか」を見つける訓練を受けていないと「どうしたいか」を答えるのは難しいともいえます。どのようにして自分の「WANT」を見つけたらいいでしょうか。

山口 「WANT」は僕の内側にあるんだけれど、それが対話によって外に出てきて改めて自分で見て、これすてきだなって気づいている。そんな不思議な感覚なんですよ。

こんまりさんの『人生がときめく片づけの魔法』って、モノに一個一個ときめくかどうかを見ているんですけど、あの感覚に近いものがある。実際に口に出して話してみないと、ワクワクするかどうかわからないんですよ。

こんなこともできる、あんなこともやってみたいと話をしてみると、聞いている側も話している自分も何にテンションが上がるのかがわかるんです。

そういう意味でも、やはり対話できる他者がいたほうが絶対にいいと思います。プロのコーチでなくても構わない。大親友とか両親とかでもいい。

本を書くこともある種の対話なんですね。考えを表に出してみると、自分が書いていることにびっくりすることがあるんです。

だから、自分の「WANT」を見つけるには、まずはコーチングを受けるっていうことなんだと思います。

中島 自分の部署で優秀なエンジニアを採用したいというときに、自分がやろうとしていることを採用ホームページでどう表現したらいいか困ったので、コンテクストライターの人に対話相手になってもらったことがあるんです。

事業に対する思いや考えを何時間もかけて伝え、対話を重ねた末に、初めて読む人にもきちんと伝わりやすい形で、思い描いていたビジョンを文章化することができました。

最後に、その人から「このビジョンを掲げる以上、中島さんの今現在やっていることでは足りない。範囲がしょぼ過ぎるように感じる」と言われてしまいました。

客観的に見てみたら、確かにあと3つか4つくらい事業をやらないと掲げたビジョンに見合わないことに気づいてしまって。それに気づいてから、事業アイデアが湯水のように出てきたんです。

やりたいことを明確にするには、ストーリーを描いていくコンテクストライターと話してみるのもいいかもしれないですね。

「どうしたいか」の「言語化」がお二人の話に共通していたんですけど、言語化することによって何か新しい気づきを得ることは多いのですか。

鈴木 コーチングの用語に「オートクライン」というのがあります。話したことを自分で聞くことによって、自分の考えを認識するということで、もともとは生物学用語だったものをコーチングに応用しています。

随分前にフェニックスで行われたコーチングの国際大会では、2人1組になって、片方の人がもう一方の人に自分の10年後について1時間しゃべるというエクササイズがありました。絶対話を止めちゃ駄目、思い浮かばなくなったら同じことでもいいから話し続けるというルールです。

そうすると、「こんなことやりたかったの?」としゃべった自分に驚くことも起こる。自分の思いを批判も否定もされずに聞いてもらえる環境は非常に大事です。普段、忙しいエグゼクティブの方にも、1カ月に1時間くらいは自由に話せる時間を持ってほしいと思います。

エグゼクティブ・コーチングは組織に何をもたらすか

組織開発の話を聞きたいのですが、エグゼクティブ・コーチングが組織に及ぼす影響にはどういったものがありますか。

中島 会社の中で自分には3つの役割があるんですが、コーチと話しているときに、そのとき実現したかった結果を出すためには、どの役割で考えればいいのかを問われました。

そうすると、1つの事業の視点だけではなく、自分の執行範囲を超えて会社全体に作用していかないといけないことが自分の中で明らかになったんです。

コーチに「では、誰と話すべきですか?」と問われたときに、南場さん(南場智子DeNA代表取締役会長)の顔を思い浮かべていました。

会社の機構の中で、執行範囲を任されその領域で結果を出すことが求められているわけですから、勢い、その執行範囲を超えた全社の方針に関する議論をもちかけにいったりはしにくい。というか、意識の中で棚上げされがちだった。

ただ、その自分の執行範囲で結果を出すためには、全社の考え方が変わらないとうまくいかない部分があることに気づいてしまって。

じゃあ、ということで、それをきっかけに、DeNA全体のポリシーや経営方針、ビジョンを経営会議などの場で、南場さんをはじめとした経営陣と議論して全社の方針に関して意見を戦わせることをやっていくようになったんです。

コーチに対話相手になってもらい、自らに問いを立て、自分自身で重要性に気づいているわけなので、どれだけ大変でもやらざるを得なかったですね。

そうしたら会社全体のビジョンに影響を及ぼし、方針や戦略にも影響するようになって、それが巡り巡って自分の事業の一つひとつにドライブがかかるようになりました。

その後しばらくして南場さんから、DeNAの執行役員にはDeNA全体の経営を考えてほしいと思ってきたけど、なかなか全員がそうならなくて苦労していたのに、なんで中島が急に全体視点で考えるように変わったのか不思議だったと言われました。

トップがコーチングによって開発されていくことの組織に及ぼす影響ということについては、どう考えますか?

山口 やりたいことがはっきりしないリーダーの下では仕事なんてできないですから、そこに尽きると思います。WILLのない人って決められないし、ディレクションもできないので、結果的に組織のパフォーマンスは落ちて成果も出なくなってしまう。

コンセプトレベルが明確な人の下にいると、行動と判断がぶれないし、迷いが少ないので生産性も上がる。結果的には業績も出て、その人も評価され、勝ってるチームにいて気持ちがいいということで、本当にいいことずくめなんじゃないかと思います。

鈴木 何をするにもまずトップがWANTをはっきりさせていることが大事ですね。トップがメッセージを出すときに、いろいろな部署からのメッセージを経営企画などが文章にまとめて話すと、総花的でWANTのないメッセージになるので、なかなか伝わりません。

そもそも、メッセージを伝えるということが「浸透させる」ととらえられることが多いのですが、このダイバーシティの時代に、「浸透させる」というイメージでは、メッセージが組織の中になかなか入っていかないのではないかと考えます。

いかに多くの対話を組織の中で作り出すことができるか。

エグゼクティブだけではなく若手の方の間にも、いかに多くの対話を作り出し、「どうしたいか」「何がやりたいのか」ということを生む環境を育てていくかがキーなんだと思うんです。

トップがそのことを実践し、理解していないと、そこから全体には広まらないだろうと強く思っています。

(構成:柴山幸夫 編集:奈良岡崇子 写真:矢野拓実 デザイン:月森恭助)

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