コーチング研究所によるさまざまな調査の結果や、データの分析結果をご紹介します。
アンケートレポート「劇的な環境変化の中で、わたしたちができることは何か」
2020年05月19日
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で私たちの働く環境が大きく変化する中、株式会社コーチ・エィでは、メールマガジン WEEKLY GLOBAL COACH および Hello, Coaching! の読者の方やクライアントのみなさまを対象に、緊急アンケート「劇的な環境変化の中で、わたしたちができることは何か」を実施いたしました。
1,500名を超える方から回答が寄せられ、この難局を乗り越えるための多くの知恵や工夫が集まりました。アンケートにご協力くださったみなさまに厚く御礼申し上げます。
読者のみなさまに、今回寄せられた内容を一部共有させていただきます。読者のみなさまにとって、未来を照らすヒントになれば嬉しく存じます。
アンケート調査回答期間:2020年4月8日(水)~2020年4月19日(日)
アンケート対象:企業、団体等にお勤めの管理職、リーダーの方
アンケート回答者数:1,532名
アンケート結果の概要
- 95%以上が、働く環境やルールが変わったと回答。
- 職場での「対面」でのコミュニケーションが減ったという人は約90%。一方で「対面」以外のコミュニケーションは増えている。
- 「対面以外のコミュニケーション」では、とくにWeb会議・ビデオ会議ツールによるコミュニケーションが増加している。
- 職場におけるコミュニケーションの総量は減少傾向だが、執行役員以上は、これまでよりもコミュニケーションが増えたと回答している。
- 多くのリーダーが、部下とのコミュニケーションにおいて、内容や伝え方などをこれまでよりも工夫している。
- リーダーが難しさを感じているのは、部下のモチベーションの維持や部下の状況の把握。
- 既存ビジネスや業務の進め方や働き方の見直しなど、成長機会と捉えているリーダーも多い。
目次
1 働く環境やルールの変化に伴うコミュニケーション手段の変化
3 この環境変化に対して、リーダーたちが心がけている行動・工夫
3-1 ツールを活用したオンラインコミュニケーション
3-2 部下の話を聞く
3-3 メッセージ発信、組織内での情報共有
3-3-1 メッセージ発信における工夫
3-3-2 リーダーとしてのあり方
3-3-3 未来に向けたチームでの対話、新しいやり方への適応
5 この環境変化の中で、リーダーたちが前向きにとらえていること
5-1 自分達が世の中・顧客に対して提供する価値を考える機会
5-1-1 既存ビジネス
5-1-2 新規ビジネス
5-2 業務の見直し、新しい働き方、働き方改革の推進
5-2-1 既存業務の振り返り、見直し
5-2-2 社員の意識改革
5-3 部下やチーム、自分の成長機会
5-3-1 部下やチームの成長
5-3-2 リーダーとしての自己成長
5-4 その他
1 働く環境やルールの変化にともなう、コミュニケーション手段の変化
2 職場のメンバーとのコミュニケーション量の変化
3 この環境変化に対して、リーダーたちが心がけている行動・工夫
3-1 ツールを活用したオンラインコミュニケーション
- オンラインでのコミュニケーションになったことで、日本人的な「空気を読む」、「空気を読んだ」行動が少なくなり、コミュニケーションにおける曖昧さが排除されてきていると感じる。できるだけ単純・ストレートに話をする、フレーズごとに理解しているかを確認する。
- 朝、必ず「おはよう」メールを送る。「おはよう」メールには業務進捗のフォローなどは書かないと決めている。
- メンバーを不安にさせないこと。不安なこと、障害になっていることに関して声を挙げられる環境をつくること。
3-2 部下の話を聞く
- 現場第一線のメンバーへの電話対話を増やしている。これまでは支社長や支店長との業務対話が主だったが、メンバーに直接電話して現状や成果のプロセスを聞くことで、電話の向こうの声も明るくなっていく実感があった。「見てくれている。聞いてもらえる。認めてもらえる。」実感の大切さを感じる。
- 今まで部下のプライベートな部分をあまり聞く機会がなかった。逆に、あまり入り込んでは行けないのではとも思っていたが、日々の健康管理の確認や、保育園、学校問題等、社員からプライベートを聞く機会も自然と増え、コミュニケーションが更に深まった。 部下に対しても視野が広がった。
- 以前に比べて報告、相談が増えた。これまで1on1の機会を打合せ・会議に使っていたかもしれないという気づきがあった。
- 普段会話できていなかったメンバーと、じっくり話ができる良い機会が増えた。大勢でのWEB会議を減らしている。
3-3 メッセージ発信、組織内での情報共有
3-3-1 メッセージ発信における工夫
- 在宅勤務で不安を抱いている部下も多いので、電話での業務上のやり取りの際、心理状況まで気にかけ声掛けをする。不安なことが何か具体的に聞く。また、経営層の情報はなるべく噛み砕いた上で、部下に共有する。
- 異常事態であることを認識して各種の判断をする。 「待ち」よりも「行動」という基準で考える。
- 冷静さを保ちながら早く動く。明確な方向を示す。本来の目的を見失わない(改めて客観的にとらえてみる)。
- 危機感の共有や注意喚起により、対応の重要性や緊急性を伝えつつ、「この機会に○○しよう」、「○○を試してみよう」、「事態が収束したらこんな効果が得られる」等の言葉を添えて、 メンバーの意識がCOVID-19終息後の飛躍への期待、意気込みに向くようにしている。
- むしろ良い変化でありもっと良いことが起きるという態度を取り続けること。変化は不可逆なものと周囲にメッセージすること。
- 何事も批判を避け、感謝を重視すること。政府を含め、みんな一生懸命やっている。 他者への批判は避け、今まで以上に周囲への感謝を表現することが重要なのではないかと感じる。
- 20代、30代の若手社員にとっては初めての厳しい環境への直面という事態。この危機を自分自身あるいは組織がどのように乗り切ったかをしっかり記録し、将来同じような危機に直面した時の対処を考えられるように備えることを指導している。
3-2 リーダーとしての在り方
- 「今この瞬間」に集中するようにする。将来の心配ばかりをしていると、心ここにあらずとなり、相手の表情、しぐさや現場で起きていることを見逃してしまう。
- リーダーがまず自己開示すること。リーダーが心身ともにクリアな状態にいられるように心がけること。
- いつもと変わらぬ表情をすること、おだやかに話すこと、新しいことを試している様子を見せること。
3-3-3 未来に向けたチームでの対話、新しいやり方への適応
- COVID-19の影響で仕事量は増えたが、我々の社会への貢献について皆で会話している。そのおかげで、使命感を持ってパフォーマンスを落とさずテレワークでも働けている。
- 細かなルールをひとつひとつ皆で再構築していくこと。今までの固定観念に縛られず、トライ&エラーでまずはやってみて、失敗よりも学びにフォーカスすること。
- 営業現場の人数を削減しているため、仕事の仕方に工夫が生まれ、皆がチームを越えた協力体制を作ろうとしている。
- 「賢明に仕事しているように見せる」という不要な意識が働かないように、堂々と休めるように促している。
- 全員でコーヒーをそれぞれ入れてきて、30分ほどの雑談の時間を設けている。今どう過ごしているとか。
- テレワークの工夫や悩み、良いダイエットやストレッチ方法の紹介等々を話す。家族も参加OKとしている。
- 子育て中の部下の場合、電話やWeb会議中に子どもが泣いて会議にならないといったハプニングもあるが それもOKとしている。
- COVID-19の終息、出口が見えないので、COVID-19疲れが出ないように心掛けている。
①規則正しい生活リズムとなるよう午前中にWeb会議を毎朝開催
②取り組みテーマをチーム、個人ごとに立案し、スケジュール化
③仕事以外の旬の話題、プライベートな話題(ペット、趣味、家族等々)を持ちより共有することで笑いを絶やさない
4 この環境変化の中で、リーダーたちが悩んでいること
5 この環境変化の中で、リーダーたちが前向きにとらえていること
5-1 自分達が世の中・顧客に対して提供する価値を考える機会
5-1-1 既存ビジネス
- 余計なことがそぎ落とされ、案件のタームが短くなり、以前以上に取引数が増えると考えている。移動時間など考える必要がないため時間が合えばすぐにMTGが決まる流れになっている。実際にセールス面において問い合わせから初回MTGの日程調整が短くなっている。
- 生産は減少しているが、開発を進めるチャンスを得たと感じている。
- 顧客に一斉発信している定型メールを改めて自宅という環境で読んだら、メールの問題点が見て取れた。
- 全てがオンラインとなり、時間と距離の制限がなくなった。お客様や人との交流が今以上にしやすくなると捉えている。
5-1-2 新規ビジネス
- 消費経済の大きな変化が起こることは確実だと思う。その変化を敏感に察知し、タイミングよく商品を提案できるようにすることで事業を拡大できないか検討している。
- 本当に大事なことが明確になるのではないか。本質的な価値、それを提供するためのビジネスモデルを考えるきっかけ。
- 変革によるビジネスチャンス、 仕事と私生活の融合による新たなアイデア創出。
5-2 業務の見直し・新しい働き方、働き方改革の推進
5-2-1 既存業務の振り返り、見直し
- 「本当に必要な事業は何か」を問う良い機会になったと思う。必要な仕事に必要な要員の配置を検討する。
- 自分たちの業務の優先順位を考えたり、自分たちのアウトプットが誰に、どのような影響を与えるのかを再度確認したりする良い機会と考える。
- メンバーとのコミュニケーションの総量は減ったものの、成果はそれなりに出せることを多くのメンバーが気づいたと思う。これを機に会議やミーティングの時間を削減して行きたい。
5-2-2 社員の意識改革
- 今までの常識を変える提案に対しての抵抗が下がっているのを感じている。大胆な変革を進めるチャンスになると感じている。
- 全員参画の改善課題が多くなっていることから社員の意識改革のチャンスと考えている。
- 縦割りを脱して臨機応変に連携対処できる組織風土の醸成。
- 社員のコスト抑制の意識醸成。難局を乗り切るためのアイディアが社員から積極的に創出されている。
- 「出社することが仕事」という意識からの決別。 テレワークの成功体験と定着。そして仕事とは何か、成果は何かを常に考える思考定着。結果的に既存のワークの劇的効率化。 新たな価値創造へのワークシフト。
- グローバル化。リモートワークができれば地域を問わない。
5-3 部下やチーム、自分の成長機会
5-3-1 部下やチームの成長
- 私にタイムリーに相談できなかったことで、自分自身でよく考えるようになった人もいる。上司に頼る時間が減ることで各人は成長せざるを得ないことを感じていると思う。
- 各人の人間性や働き方、何を優先しているかの価値観も垣間見える。誰が有事に対して強いか、冷静に判断ができるか、利他の精神があるかについて見極めることができる。次期リーダー候補が見えて来る。
- 途中で口出しせず、成果が仕上がるまで待つことができるようになった。
5-3-2 リーダーとしての自己成長
- 対面での打合せができない分、メールや電話での説明力が求められており、考えや発する言葉を研ぎ澄ます機会となる。
- 移動時間とともに業務の全体量が減っているので、いままで重要でも緊急性がなく後回しにしていた仕事や関連分野での勉強の時間に充てている。定時で仕事し、残りの時間はリラックスしてプライベートを過ごす良い習慣を、この機会に身に付けたいと考えている。
5-4 その他
- 他人のためにお金を使うようになった。 最近会えていない家族に花を贈る、海外の友人に本を贈る、友人同士でデリバリーランチを購入し合う、など。コミュニケーションの濃度や密度は上がったかもしれない。
- 十勝沖地震 (帯広),阪神淡路大震災 (神戸),東日本大震災 (女川) をいずれも現地でリアルタイムに経験した。震災はつらい経験だが、自分、家族、友人、社会と深くつながり,その存在を問い返す好機である。COVID-19も同様の問い、そしてさまざまな変化を求めてくるだろう。欲望を満たす大衆消費社会から自然との調和や真の豊かさなど、社会の価値観が大きく変わる潮時かもしれない。リーダーというよりは一緒に考えて支え合う仲間が大切になると思う。
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