講演録

株式会社コーチ・エィにおいて行われた講演会の記録です。


未来をつくる発想法
予防医学研究者 石川善樹 氏

第3回 イノベーションを起こすチームに不可欠な存在

第3回 イノベーションを起こすチームに不可欠な存在
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2019年12月18日、コーチ・エィでは予防医学の研究者である石川善樹氏を勉強会にお招きしました。講演のテーマは『未来をつくる発想法』。当日の講演内容を4回にわたってお届けします。

第1回 どの偉人から学ぶ?
第2回 豊かな発想法を持つ脳にするには?
第3回 イノベーションを起こすチームに不可欠な存在
第4回 芭蕉に学ぶ、未来をつくる発想法

「みんな」って誰!?

発想を豊かにするために、「みんな」と「Being」の時間も必要だと申し上げましたが、この「みんな」とは誰のことでしょう。誰といると発想が豊かになるのでしょうか。松尾芭蕉も「古池や」の俳句を詠んだときには、江戸のとある家に「みんな」で集まって俳句を詠んでいたといいます。この「みんな」が誰なのかは、実は極めて重要です。

一般的な知見としても知られていますが、人の人間関係の構築には「3倍の法則」があります。人数を5人から約3倍ずつ、5人、15人、50人、150人、500人と増やし、最終的に5,000人までにしてその関係性を見る方法です。

5,000人という数が最大値となっていますが、この5,000人という数は、1人がみることのできる限界、直接民主主義の限界とも言われており、Facebookでも「お友だち」の上限人数になっています。その一つ手前の1,500人という数は、顔と名前が一致する限界、そのまた一つ手前の500人は、たまに会う人たち、そのまた一つ手前の150人は、一緒にプロジェクトをできる限界数と言われています。昔は軍隊などでも150人を超えると2つに分けていましたし、会社でも150人を超えるとチーム分けするところが多いようです。

最小値の5人は、非常に仲のよい人たち。これだけコミュニケーションツールが発達した現代でも、頻繁にやりとりをしている人数は、せいぜい5人(3~7人)と言われています。テクノロジーが発達しても脳は変化せず、よってこの「3倍の法則」も変わっていません。

「誰と一緒に仕事をするとクリエイティビティが高まるか?」という議論に戻ると、2018年に非常に興味深い研究結果が出ました。イノベーションはどうやって起きるのかという研究で、そこではイノベーションを「破壊的/革新的イノベーション(disrupt)」と「持続的/改善的イノベーション(develop)」の二つに大別しました。そして、破壊的/革新的イノベーションを起こすには3~4人の少人数が、持続的/改善的イノベーションには大人数が良いという結果が出たのです。思えば、携帯電話もベル研究所の3人によって作られました。今日のテーマは「新しい未来を作る発想法」ですので、破壊的/革新的イノベーションを起こす方向で見ていきます。

破壊的/革新的イノベーションには少人数のチーム

「誰と一緒に仕事をするとクリエイティビティが高まるか?」という議論に戻ると、2018年に非常に興味深い研究結果が出ました。イノベーションはどうやって起きるのかという研究で、そこではイノベーションを「破壊的/革新的イノベーション(disrupt)」と「持続的/改善的イノベーション(develop)」の二つに大別しました。そして、破壊的/革新的イノベーションを起こすには3~4人の少人数が、持続的/改善的イノベーションには大人数が良いという結果が出たのです。思えば、携帯電話もベル研究所の3人によって作られました。今日のテーマは「新しい未来を作る発想法」ですので、破壊的/革新的イノベーションを起こす方向で見ていきます。

少人数のチームとは

次に、この破壊的/革新的イノベーションを起こす少人数のチームは、どのようなチームなのかを考えます。イノベーションやクリエイティビティの研究では、実は音楽業界のデータがよく使われます。音楽業界では、誰と誰がコラボレーションした結果、売り上げがどう変化したかとか、どのような新しいジャンルが作られたかといったデータが揃っているからです。

今から音楽業界のGod的存在である、1971年生まれのスウェーデン人音楽プロデューサー、マックス・マーティン氏について見ていきます。彼は極端に人前に出るのを嫌うため、その名はほとんど知られていませんが、1990年代にバックストリート・ボーイズやブリトニー・スピアーズらをプロデュースして以降、30年以上にわたって活躍し続けている世界ナンバーワンにしてオンリーワンの音楽プロデューサーです。日本で言うところの小室哲哉さんのような存在でしょうか。

マックス・マーティン氏は作る楽曲の曲調を次々に変え、革新的なジャンルをどんどん生み出しています。ビルボードの1位獲得回数は22回と、弱冠40代の現時点で、1位のポール・マッカートニー氏、2位のジョン・レノン氏に次ぐ記録をすでに打ちたてています。このマーティン氏のコラボレーション相手を見るとわかることは、彼のような幅広い知識や経験をもつベテランが、過激で専門性をもつ若手とコラボレーションをするとイノベーションが起きる確率が高いということです。

若手同士の組み合わせ、ベテラン同士の組み合わせでは、実はあまりイノベーションが起きていません。ベテランと若手が一つの少人数チームをつくるのは容易ではありませんが、歴史を振り返ってみても、スティーブ・ジョブズ氏と若手デザイナーのジョナサン・アイブ氏の組み合わせであったり、『スターウォーズ』や宮崎駿氏の名作も、このベテランと若手の組み合わせから出ています。ただ、こうしたチームをつくろうとすると、最先端のことを手がけている若手はわりと探しやすいのですが、大局観をもってうまくチームを回している 「最強のベテラン」を探すことがとても難しいことに気づきます。

じつは私が、この人こそ「最強のベテラン」、「ミスター大局観」だと考える師匠が一人います。もともとパナソニックにいらした濱口秀司氏で、彼は数々のイノベーションを起こしています。誰もが知っているUSBメモリの生みの親であるほか、ヒット商品マイナスイオンドライヤーを考え、価格破壊の起きていた家電市場に「美容家電」という新しいジャンルを生み出した方でもあります。

そのすごさについては、次回お話をしたいと思います。

講演日: 2019年12月18日

本講演の内容を含む本が出版されています。ご興味のある方はぜひご覧ください。

考え続ける力

考え続ける力

発行日: 2020年5月8日
出版元: 筑摩書房


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