講演録

株式会社コーチ・エィにおいて行われた講演会の記録です。


リクルートからJリーグチェアマンへ!一流ビジネスマンが挑むJリーグ改革
Jリーグ チェアマン 村井満 氏

第5回 サッカーの本質はミス?

第5回 サッカーの本質はミス?
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2017年10月23日開催の株式会社コーチ・エィ主催のセミナーで、第5代日本プロサッカーリーグチェアマン(Jリーグ)村井満氏に、ご自身がチェアマン就任以来実践されてきたJリーグの改革について語っていただきました。本シリーズでは、村井氏の講演内容を6回にわたってお届けします。

第1回 Jリーグの試合を面白くする
第2回 トッププロだけがやっていること
第3回 世界のトップリーグとJリーグとの違い
第4回 新たな投資先
第5回 サッカーの本質はミス?
第6回 サッカーをもっと身近に

「なりわい文化論」とは

ここまで、Jリーグの改革についてお話ししてきましたが、Jリーグ全体を運営する、事務局としての機能をもった中央組織の改革についてもお話ししたいと思います。私のもとで働くJリーグの従業員は150人ほどいます。多くの中小企業と同じくらいの規模です。運営や企画立案に携わるJリーグ組織の内側の意識改革も、当時の課題の一つでした。

最初の半年で全てのクラブを視察して挨拶をした後、Jリーグ組織の改革に取り組み始めました。まずは、従業員といろいろ話を始めます。でも、やはり一つの目標に意識がそろうことは難しいんですね。それぞれの仕事を、その道のプロフェッショナルがやっているので、横のコミュニケーションはなかなかとれない。そして、残念なことに、要となる人がいなくなると全体が麻痺してしまうような構造になっていました。こういった組織の改革について模索した結果、リクルートの中で私が使っていた考え方を応用することにしました。

「なりわい文化論」といって、それぞれの会社、組織が持っている「なりわい」の本質について考えていくという考え方です。

たとえば銀行の場合、その本質は「秩序」だと思います。銀行が無秩序になってしまっては決済もできなければ、取引もできなくて困ってしまいます。本質的なところで、一定の秩序に賛同している人にとっては、すごく良い職場ということになりますよね。逆に秩序に対して本質的な違和感を持っていると、結構辛いものになってしまうと思います。

また、例えば自動車メーカーなどのように生産に関わる会社の「なりわい」が持つ本質は、「協働」だと思います。組み立ての時にネジ山とネジ谷がずれたら、不良品になってしまいます。コンピューターを作るときも、各部品を担当するエンジニアが喧嘩をしたら、一つの商品としては完成しない。だからお互いにすり合わせるという文化があって、「チームで働く」、つまり「協働」という価値観が本質にあると思います。メーカーが、ラグビーやサッカーチームのスポンサーになる理由には、その「なりわい」が持つ本能的なところにあるのだと考えています。

一方、私のいたリクルートの本質は、「変化」でした。紙媒体からネットへの変化が起こり、毎日毎日コンテンツが変わっていく。毎日毎日、目の前に出てくるものが変化するので、どこかで「変化」が好きな人間、「変化」を楽しむ人間が集まっていれば大丈夫だろうという仮説をもっていました。「変化」が本質の組織だからこそ、入社した社員が3年で退職するようなシステムもうまくマッチしました。

ミスを是とするJリーグ組織

では、Jリーグの本質は何か。私は、それを「ミス」と考えました。サッカーは、人間がうまく使える手を使わず、脚を使うスポーツです。だから、プレー中は四六時中ミスばかり起こっているともいえます。それが、実はサッカーの本質ではないかと考えたのです。そこで、スタッフに対して、Jリーグで働く人間がミスを恐れていたらダメなんだと話しました。そして、それに合わせて人事評価の考え方を変えることも同時に宣言しました。

「PDCA(Plan, Do, Check, Act)サイクル」という考え方がありますが、私はJリーグ組織の「なりわい」であるM(ミス)を間に入れ、「PDMCAサイクル」を回すことを推奨しました。つまり、今までと同じやり方で成功したら、+0点、今までのやり方を変えてCを回したら+50点、今までのやり方を変えて成功して、PDMCAが完成したら+100点としました。今までのやり方でいくら成功したとしても、それは先輩が作ってきたものですから、そこに新しいものはありません。失敗(ミス)してもいいから、変えていく。サッカーだからこそ、間に「ミス」を入れて「PDMCA」でやっていこうという号令でした。

(次回へ続く)


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