コーチの薦めるこの1冊

本は、わたしたちに新たな視点を与えてくれます。『 コーチが薦めるこの一冊 』では、コーチが自分の考え方や生き方に影響を与えた本についてご紹介します。個性豊かなコーチたちが、どんな本を読み、どんな視点を手に入れたのか、楽しみながら読んでいただけるとうれしいです。


悔いのない人生のために、今、大切にしたいこと(『ビジネスマンに贈る最後の言葉』)

悔いのない人生のために、今、大切にしたいこと(『ビジネスマンに贈る最後の言葉』)

著者:ユージーン・オケリー
出版社:アスペクト
発売日:2006/9/28
※ 絶版

「悔いのない人生を歩んだ」とためらいなく言えるようになるために、我々は、今、何を大切にしたらよいのでしょうか。

「私は恵まれている。余命3カ月と告げられたのだから」

『ビジネスマンに贈る最後の言葉』は、この言葉で始まります。

著者は、KPMGアメリカの会長兼CEOを務めていた故ユージーン・オケリー氏。同社はアメリカ4大会計事務所の一角を占め、売上高40億ドル・従業員20,000人を誇る大企業。ユージーン氏は、組織のトップとして世界を精力的に飛び回るさなか、末期ガンで余命宣告を受け、その4ヶ月後に亡くなりました。当時53歳だったそうです。

ユージーン氏は、健康が続く前提で、多くのやりたいことを思い描いていました。

「三十年以上も在籍してきた会社が、かつてない品質と業績を実現し、他社の模範となるのを見届ける」
「アリゾナで気ままな引退生活を送る」
「二十七年連れ添ってきた妻、そして理想の女性であるコリーンとは、ともに旅をし、ゴルフに興じる」
「次女のジーナが高校、大学を巣立ち、花嫁になり、子どもを産み、新しい未来を紡いでいく姿を見たい」

そして、他にもさまざまなことを。

そのため、ガンの告知を受けたときには、「私の心のどこかには、明日の『ニューヨーク・タイムズ』の一面に、医学の分野で奇跡に近い発見があったとの見出しが躍らないか、期待する気持ちもある」と、もっと生きていたいと当然のように願い、自分の境遇に怒りがこみ上げたり、涙にくれたりしたのも一度や二度ではないそうです。

一方で、「運命の導きにより、53歳にして初めて、これまでにない気づきを得た」とも述べています。

具体的には、

「この一瞬一瞬を、まるで時が止まったように感じるほど味わい尽くすには、どうすればいいのか」
「愛情以外の、時間よりも大切なものとは何か」
「私たちが忘れかけている、自分らしい自然なふるまいを呼びさます必要はないだろうか。」

等を自身へ問いかけ、残された人生を再構築しました。その結果、ユージーン氏は、「いつもそばにありながら見えていなかったものと出会えた」そうです。

そして、ユージーン氏は、それは「健康な人でも学べるのではないか」と読者に訴えます。


2017年の夏季休暇中に、私はこの本を手にしました。きっかけは、上司から推薦されて読んでいた本の中に『ビジネスマンに贈る最後の言葉』の一節が引用されていたことです。その一節が特別印象的だったわけではなく、それを読んで何かを思い立ったわけではありません。ただ、「今もがんばっているし、これまでもがんばってきたけれど、このがんばりは、人生のゴール地点に向けて、正しい方向へ向かっているのだろうか」という思いがあり、本書を手に取りました。日々の仕事に追われながら走り続ける中で、人生に対する漠然とした焦燥感があったからかもしれません

私の頭の中には、学生時代から繰り返し頭に浮かぶ問いがあります。

「何のために生きているのか?」
「思い出が残るほどに色濃く生きているのか?」

この2つの問いは、ふと頭に浮かぶこともあれば、同年代で社会で活躍する人たちを目にしたとき、評価面談のときなどに頭に浮かびます。いつでもベストの選択をしてきたと誇れるような充実した人生を送りたい考えている私は、これらの問いに駆り立てられ、人生の選択をしてきました。

本書を読んでいるときも、これらの問いが頭の中で渦巻くのを感じました。本書は、自分の人生を振り返り、棚卸しする機会を与えてくれました。

最近、両親・兄弟をとりまく状況の変化があったこと。
自身の結婚、転職、友人の状況変化等によって、価値観が変化してきたこと。
今の自分は、1年前の自分とも違うこと。

社会人になり、就職先の環境も相まって、これまでは仕事中心の生活を選んできました。平日が「work」三昧であることは言うまでもなく、週末も積極的には予定を入れず「work」のための時間を確保。「work」に取り組む以外の時間でも、たとえば読書をとっても「workに活かせそうな本はどれか」という観点で選ぶ等、全てが「work」中心に回っていました。

しかし、本を読み進め「work」に「family」を加えて、この二つの輪を大事にしていきたいと強く思いました。その気持ちは以前からおぼろげにもっていたものの、この本を読むことで、霧が晴れてよりくっきりと見えてきました。そして、これまでの問いに次の問いが加わりました。

「大切な人とより時間を過ごすにはどうしたらいいのか?」

そうはいっても、「大切な人とどのような時間を過ごしたいか?」や「大切な人の時間を得るために何を捨てるか?」の問いへの答えはまだ見つけられていません。ワークスタイルを急激に変えることは、一緒に仕事をするメンバーに影響しかねないこともあり、これらの問いに対する答えはゆっくり探していこうと考えています。

しかし、「family」という輪が大きくなったことで生じた小さな変化もあります。以前に比べ、自宅に帰る時間が早くなりました。自宅で穏やかに過ごす時間も悪くないなと感じています。その分、「work」へ投資する時間は少し減ったかもしれませんが、現状、私のパフォーマンスレベルに違いはみられません。「work」に投資する時間の減少という制約の中で、無自覚のうちに、やらなくてもいい仕事をしなくなったり、一つひとつの仕事の処理効率が上がったりしているのではないかと思います。

本を読み終わった当初は、「『work』に偏った人生は終わりにしよう。その分『work』のパフォーマンスが下がっても仕方がない」と覚悟していたので、パフォーマンスレベルが変わらない点は、思わぬ副産物を得た感覚です。

最後に、みなさんとも問いを共有して本執筆を〆たいと思います。

「悔いのない人生を歩むには、我々は、今、何を大切にしたらよいのでしょうか?」

「日々スピード速く流れゆく毎日の中で自分を棚卸するには、どのような手段が考えられるでしょうか」

これらの問いについて考えることで、「いつもそばにありながら見えていなかったもの」が見えてくるかもしれません。


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