Hello, Coaching! 編集部がピックアップした本の概要を、連載形式でご紹介します。
コーチングのプロが教える 相手を認め、行動変容をもたらす技術
鈴木義幸
第1回 はじめに
2024年04月12日
コーチ・エィ 代表取締役社長 鈴木義幸による著書『「承認」が人を動かす』(ディスカヴァー・トゥエンティワン刊)が、2024年4月19日に発売されます。本書は、2002年から長きにわたってご愛読いただいた『コーチングのプロが教える「ほめる」技術』(日本実業出版社刊)を一部改訂し、今の時代だからこそお伝えしたいコミュニケーションの変化を新章として加え、新版として出版するものです。
発売に先駆けて、今の時代だからこそお伝えしたいアクノレッジメントの基本や、今回加筆した内容を本書から抜粋してご紹介します(全6回)。
第1回 | はじめに |
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第2回 | なぜアクノレッジメントか |
第3回 | リモートワークには「リサーチ」と「イマジネーション」 |
第4回 | チャットツールでもアクノレッジメントは伝わる |
第5回 | 相手の影響力を言葉にして伝える |
第6回 | 新しい部下をチームに溶け込ませるには |
はじめに
今から四半世紀以上前の1997年10月に、プロフェッショナル・コーチ養成会社コーチ・トゥエンティワンが設立されました。2001年にはコーチ・トゥエンティワンの法人事業部を分社化し、企業のマネジメントをコーチングによってサポートするコーチ・エィという会社も生まれました(現在この両社は合併し、コーチ・エィとなっています)。
この間、数多くの企業のマネジャーやエグゼクティブの方々にコーチングをお伝えし、また一対一でコーチングをさせていただく中で、自分の興味、関心の中心には、ずっとひとつのセンテンスが横たわっていました。
それは、「どうすれば人は動くのか?」という問いかけです。
私たちは、まだコーチングが日本に明確な姿で存在していなかった28年前に、アメリカの最大手コーチ養成機関のひとつであるコーチ・ユニバーシティ(現コーチ・ユー)からたびたびトレーナーを招聘し、コーチングのイロハについて学びました。
そこには確かに「人はどうすれば動くのか」のヒントがたくさんたくさん盛り込まれていました。
しかし28年前の段階では、それらはあくまでも「情報」として私たちの頭の中に蓄えられただけであって、それが本当に人を動かすものであるかどうかは、まだわかりませんでした。コーチングの真の力を知ったのは、それからの十数年の活動を通してでした。
コーチとして、他企業のマネジャーやエグゼクティブと接する中で実践したり、自分の会社のマネジメントをする中で活用したり、逆に自分がコーチングを受ける際に体験していくことで、無機質な情報は現場からのフィードバックを取り込んで、生きた「知識」となり、そしてさらには信念へと昇華していきました。
コーチングでは、問いを投げかけ、その問いについて考えるプロセスの中で、相手が自然に目指す方向へ前進していくことをサポートします。これは行動に対する「意味づけ」を引き起こします。
自身で「意味づけ」した行動は、「他己説得」された行動、つまり「ああしなさい、こうしなさい」と、他人から言われて説得された行動よりも現実化する可能性が高いと言われています。
目的地に向かって選択できる道はいくつもあるものですが、それを一方の経験者が「これだ」と決めてしまうよりも、相手に選択肢を発見させ、決めさせたほうが、結果的には目的地に早く到達するだろうという考え方です。
ただ、目的地が決まり、取るべき道が決定され、その人が動き出したとしても、最終的に目的地にたどりつくためには「エネルギー」が供給され続ける必要があります。
では、自分がコーチや上司、親などの立場だったとして、そのエネルギーを相手にどう供給し続けることができるのでしょうか。それがこの本のテーマであり、みなさんに送り届けたい知識、技術です。
コーチングでは、そのエネルギー供給のことを「アクノレッジメント(acknowledgement)」と言います。
このアクノレッジメント、つまりエネルギーの供給回数が多ければ多いほど、供給方法にバリエーションがあればあるほど(レギュラーガソリンで動く人もいれば、軽油で動く人もいるわけですから)、相手をより遠くまで、ひいては目的地まで動かすことが可能になります。
本書は、アクノレッジメントのさまざまな手法を1項目でひとつ解説することを基本としています。
ただ、より鮮明に企業の現場におけるシーンを想起していただくために、プロローグでは、自分が供給するエネルギーと、部下が求めるエネルギーのマッチングが起こらず、途方に暮れる管理職の様子を小説風に描きました。エピローグでは、プロローグで登場した田中課長なる人物がアクノレッジメントの技術を身に付けたことにより、どのようにエネルギーの供給方法を変えたのかが記されています。
なお、本書は2002年から長きにわたってご愛読いただいた『コーチングのプロが教える「ほめる」技術』(日本実業出版社刊)を改訂し、今の時代だからこそお伝えしたい項目を第6章として加え、出版したものです。
みなさんがこの本を読むことによって、みなさんの部下や仕事上で関わりを持つ人に、さらにはご家族を始めとしてより多くの方に、エネルギーを供給することができるようになることを、それが翻っては自分自身のエネルギーとして還元され、自分の中に良質なエネルギーが蓄えられることを願ってやみません。
(続きはこちら)
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