Hello, Coaching! 編集部がピックアップした本の概要を、連載形式でご紹介します。
コーチングのプロが教える 相手を認め、行動変容をもたらす技術
鈴木義幸
第3回 リモートワークには「リサーチ」と「イマジネーション」
2024年04月16日
コーチ・エィ 代表取締役社長 鈴木義幸による著書『「承認」が人を動かす』(ディスカヴァー・トゥエンティワン刊)が、2024年4月19日に発売されます。本書は、2002年から長きにわたってご愛読いただいた『コーチングのプロが教える「ほめる」技術』(日本実業出版社刊)を一部改訂し、今の時代だからこそお伝えしたいコミュニケーションの変化を新章として加え、新版として出版するものです。
発売に先駆けて、今の時代だからこそお伝えしたいアクノレッジメントの基本や、今回加筆した内容を本書から抜粋してご紹介します(全6回)。
第1回 | はじめに |
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第2回 | なぜアクノレッジメントか |
第3回 | リモートワークには「リサーチ」と「イマジネーション」 |
第4回 | チャットツールでもアクノレッジメントは伝わる |
第5回 | 相手の影響力を言葉にして伝える |
第6回 | 新しい部下をチームに溶け込ませるには |
第3回 リモートワークには「リサーチ」と「イマジネーション」
アクノレッジメントを伝えたいけれど、リモートワークが会社で主流となり、部下と対面で接するのは週に1回程度。部下の働きぶりが日常的にわからず、アクノレッジするのが難しいと感じている上司は多いかもしれません。
しかし、考えてみると、心をつかむのがうまい人が、日常的に相手と接する機会を得ることができていて、そこでの情報をもとにアクノレッジしているかというと、そうでもありません。
例えば、大企業の社長が普段顔を見て仕事をしているのは、秘書と、一部の役員と、せいぜい経営企画や人事の部長ぐらいまででしょう。
それにもかかわらず、普段ほとんど接することのない課長にばったり会ったときに、相手にとってとてもインパクトのあるアクノレッジメントを残すことのできる社長というのがいます。
「君が東南アジア地域の物流網の整備のために、詳細に競合の戦略を調べてくれて、それが新しい我々のロジスティックスの構築につながったと聞いてる。検索すればわかるようなことではないだろうから、情報を取るのは大変だっただろう。社内外のいろんなネットワークを駆使したんじゃないのか」
現場の方から「うちの社長はすごいんですよ。なんでそんなこと知っているんだろうと思うことが度々あります」。そんな声を聞いたのは、一度や二度ではありません。
普段あまり会わない人へのアクノレッジメントのポイントは、「リサーチ」と「イマジネーション」です。
この人にアクノレッジメントを伝えたいと思ったら、まず情報を取る。何をどんなふうにやってくれているのか、何気なく周りの人に聞いて情報を取る。
みなさんが管理職で、リモート中心で仕事をしている部下にアクノレッジしたいのであれば、その部下の仕事ぶりを、他の部下やプロジェクトを一緒にしている人に聞いてみる。
そして、想像を働かせる。
どんな場所で、家のどんな部屋で、どんなふうに机に向かいながらやっているのか? 仕事をしているときは、まっすぐに仕事に集中できているのか? たまには家族を気にかけないといけないのか? どんなふうに気晴らしをしているのか? 想像してみる。
そして、さらに想像してみる。
そもそも、どんなキャリアを歩みたくてこの会社に入社して、今の仕事についてはどう思っているのか? 最近成し遂げたという仕事、その仕事にどんな思いで向かい合っていたのか? その仕事は、何が大変だったのか? その仕事についてどんなことをぜひ周りに聞いてほしいと思っているのか?
目の前の人の「背景」を想像すると、実は、少し目の前の人が違って見えます。実際に、誰か日常的に出会う人を思い描いて、その人の背景を想像してみてください。
その人が生まれたとき、ご両親はどんな顔で赤ちゃんのその人の顔を覗き込んだだろうか? まだ立ちあがれない小さな子どものとき、その人はどんなことに好奇心を向けただろうか? 幼稚園の頃は、どんな遊びが好きだっただろう? どんな友達と遊んでいただろう? 小学校に入って、「将来の夢」という作文には、どんな夢を書き綴っただろう?
こんなことを想像するだけで、目の前の人はちょっと違って見えます。
情報を集めて、想像して、気持ちを推察して、そしてアクノレッジメントの言葉を用意して、会ったときに、あるいはZoomやチームスで話すときに、それを伝える。
部下は思うでしょう、そのことを知っていてくれたんだ、自分がどんな状態にあるかわかってくれているんだ、と。
そういう意味では、リモートだからこそ、普段顔を合わせていないからこそ、時折伝えるアクノレッジメントは、相手を思いやる心として伝わるのかもしれません。
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