Hello, Coaching! 編集部がピックアップした本の概要を、連載形式でご紹介します。
コーチングのプロが教える 相手を認め、行動変容をもたらす技術
鈴木義幸
第5回 相手の影響力を言葉にして伝える
2024年04月18日
コーチ・エィ 代表取締役社長 鈴木義幸による著書『「承認」が人を動かす』(ディスカヴァー・トゥエンティワン刊)が、2024年4月19日に発売されます。本書は、2002年から長きにわたってご愛読いただいた『コーチングのプロが教える「ほめる」技術』(日本実業出版社刊)を一部改訂し、今の時代だからこそお伝えしたいコミュニケーションの変化を新章として加え、新版として出版するものです。
発売に先駆けて、今の時代だからこそお伝えしたいアクノレッジメントの基本や、今回加筆した内容を本書から抜粋してご紹介します(全6回)。
第1回 | はじめに |
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第2回 | なぜアクノレッジメントか |
第3回 | リモートワークには「リサーチ」と「イマジネーション」 |
第4回 | チャットツールでもアクノレッジメントは伝わる |
第5回 | 相手の影響力を言葉にして伝える |
第6回 | 新しい部下をチームに溶け込ませるには |
第5回 相手の影響力を言葉にして伝える
これまでの人生で他人からもらったいわゆるほめ言葉の中で、今でも覚えている最高の言葉は何でしょうか。小学校のときに先生から言われたこと。人生の転機に両親から贈られた言葉。親友が何気ないときにふと発した言葉。ちょっと時間をかけて思いを巡らしてみてください。
私の場合、そう問いかけられると頭の中によみがえってくるひとつのシーンがあります。
24歳のとき、私は広告代理店に勤めていて、ふとしたことからあるテレビ局の常務と一対一でお酒を飲むことになりました。今振り返るとどうしてそうなったのか、なぜ駆け出しの広告マンが放送局の常務のような方とさしで飲むことになったのか、その理由はあまり覚えていません。が、そのときに常務が私にかけてくれた言葉は、今でもとてもはっきり覚えています。
少し低く落とした声で常務はこう言いました。
「君の前だとなんか正直になるな。気楽に話ができるよ」
一瞬頭がぼーっとなってしまい、何と切り返して良いのかわからずにもじもじした記憶があります。30年以上経った今も、そのシーンは克明に内側のスクリーンに刻み込まれています。
相手の行為や存在に対して明確に「言葉」で承認を与える場合、大きく分けて2つのスタンスがあります。それはYouとIです。
Youのスタンスから相手の行為、存在に承認を与えるというのは、例えば「今回のレポートよく書けてるね」「努力家だね」「すごくやさしいわね」などです。つまり、あなたの行為、存在はこのようにすばらしいと相手に伝えることです。
Iで承認するというのは、相手の行為、あるいは存在そのものが、自分に対してどのような影響を与えているのかを言葉にして伝えることを指します。「君のおかげで今回の件はとても助かったよ」「君と机を並べているとこっちまでエネルギーが湧いてくるな」。
どちらが良いということではありませんが、長く人の心に残るのは、どちらかというとYouよりもIであるようです。それは、人はどこか深い部分では、自分がどのように他人に影響を与えているのか、聞いてみたいと思っているからです。
自分の影響が確認できるということは、自分の存在価値が確認できるということであり、この社会の中における自分の居場所を明確に認識するようなものです。だから真剣なトーンの「I」はとても強く人の心に届くのです。
その常務が私に投げかけてくれたのは、まさにIのアクノレッジメントでした。その瞬間私の体の「枠」がくっきりはっきりそこに描き直され、彼の言葉は30年という月日を経た今日まで私の中に残り続けました。
もし、みなさんが部下に対して、30年間相手の心に残るIのアクノレッジメントを伝えようと思ったら、どんな言葉を投げかけますか。
実際に伝えなくてもいいですから、ぜひ考えてみてください。
(続きはこちら)
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