コーチングカフェ

コーチが、日々のコーチングの体験や、周囲の人との関わりを通じて学んだことや感じたことについて綴ったコラムです。


部下の能力開発に大きく影響する、ある一つのこと

部下の能力開発に大きく影響する、ある一つのこと
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「人の能力には限界がある。先が見えている」
「人の能力には限界がない。いつまでも成長できる」

あなたは、どちらの意見に賛同しますか?

人の能力には、限界があるのか? ないのか?

1990年代以降、脳の研究者らの研究によって「脳には想定をはるかに超える適応性があり、適切なトリガー(きっかけ)によって、さまざまなかたちで回路を書き換えていく」ことが明らかになってきているようです。(※1)

フロリダ州立大学心理学部教授のアンダース・エリクソン氏は、著書の中で、「通常、『絶対音感』は一万人に一人が備える能力であるが、適切な時期に訓練をしたところ、実験に参加した2歳から6歳までの子ども24名全員が、『絶対音感』を発現した」ことを紹介しています。

これは、幼い子どもだから実現できたのでしょうか。

「世界記憶力選手権」という記憶力を競う大会が毎年、開催されています。

2013年の世界記憶力選手権で、日本人初の「記憶力のグランドマスター」の称号を獲得した池田義博氏は、40代に入ってから記憶競技を始めました。

池田氏が記憶競技において、かなり遅い段階から競技を開始したのは、「年齢に関係なく脳を使うことで神経回路を増やすことができる」、という研究を知ったことが、きっかけのひとつだったといいます。(※2)

また、ロンドン大学の認知神経学者のエレノア・マグワイワ教授はその研究の中で、「ロンドンのタクシードライバーは、(記憶を司る)海馬の容量が大きくなる」と報告しています。脳は大人になっても学習により、その「構造」までも変化するということを裏付ける点で、意義深い研究です。(※3)

成績アップの裏に、何があったのか?

「能力は後天的に身につけることができる」のだとすると、その方法を知りたくなりますが、その参考になる研究がありました。

スタンフォード大学心理学部教授キャロル・ドゥエックが、アメリカの中学生に対してある実験をしました。中学生を2つのグループに分け、1つのグループには「自分の能力を超えることに挑戦するたびに、脳内のニューロンが新しく強い結合をつくる、すなわち、脳の処理能力が上がり、頭が良くなる」ということを伝えます。もう1つのグループには何も伝えず、その後の成績の推移を見るというものです。

結果として、前者のグループは成績が上がり、後者のグループは授業が難しくなるにつれ、次第に成績が落ちました。(※4)

すなわち、「挑戦によって能力を上げることができる」ということを「知っているかどうか」が、能力向上に大きな影響を及ぼしたのです。

この考えを、職場に当てはめて考えるとどうでしょうか。

あなたは、日々を過ごす職場において、部下たち、あるいは自分の成長可能性について、どれくらい信じているでしょうか?

部下に対して、

「なぜ、彼(彼女)はこんなこともできないのだろうか?」
「そもそも彼(彼女)には適性がないのではないだろうか?」

と内心思いながら関わるのか。あるいは、人は誰しも成長できるという前提に立ち、

「彼(彼女)の成長のために、私は彼(彼女)に何をできるだろうか?」

と自らに問いかけながら部下に関わるのか。

あなたの選択によって、部下の成長に大きな違いがあるかもしれません。

「人は挑戦によって能力を上げることができる」という事実を知った今、あなたの頭には誰の顔が浮かんでいるでしょうか?

※1 文藝春秋刊 「超一流になるのは才能か努力か?」アンダース・エリクソン、ロバート・プール著
※2 ダイヤモンド社刊 「世界記憶力グランドマスターが教える 脳にまかせる勉強法」池田義博著
※3 Katherine Woollett, Eleanor A. Maguire. Acquiring "the Knowledge" of London's Layout Drives Structural Brain Changes. Current Biology, 2011
※4 TED 「必ずできる!-未来を信じる「脳の力」-」 キャロル・ドゥエック


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