コーチが、日々のコーチングの体験や、周囲の人との関わりを通じて学んだことや感じたことについて綴ったコラムです。
コロナ禍の幸福感の戦略
コピーしました コピーに失敗しましたPwCが実施した「第24回世界CEO意識調査」2021年版結果報告があります。レポートによれば、経営に対する脅威の一つとして「従業員の健康の悪化や幸福度の低下」が挙げられています。長期化するコロナ禍が、移動の自由や対面でのコミュニケーションの阻害を招き、従業員のストレスや孤独を高めていることもあるのではないでしょうか?
それでは、なぜCEOは「従業員の幸福度の低下」を経営に対する1つの大きな脅威と捉えているのでしょうか?
一つの要因としては、安定的に好業績をあげている組織においては、幸福感を抱く社員が高いパフォーマンスを発揮している事実があるからだと思います。
心理学者のソーニァ・リュボミルスキーらの研究によれば、幸福感の高い社員の生産性は平均で31%、売上で37%、創造性で3倍高いと報告しています。したがって、今日CEOに対してなにかしらの「幸福感の戦略」が求められているといってもいいのではないでしょうか?
さて、幸福感の創出について、日立製作所の矢野和夫氏の研究がその参考になります。矢野氏は、ウェアラブルセンサーで取得した人間のコミュニケーションデータ等から、コミュニケーションと幸福には、以下のような関係性があると説きます。
【一人ひとりの幸福度が高く、生産性の高い組織に定量的に計測できるコミュニケーションの特徴】
- 人と人とのつながりを線で示すソーシャルグラフの三角形が多い。自分とつながりのある人同士もつながっていること。
- 5~15分程度の短いコミュニケーションの頻度が高い。つまり、気軽にコミュニケーションできる関係にあり、しかも、そのコミュニケーションは双方向であること。
- コミュニケーションする相手との体の動きが同期している。声の調子や姿勢などが同期していること。
筆者の体験をここにシェアしたいと思います。
私自身は、リモートワークになってから、毎日、朝・夕の15分、チームの数人と、リモートで対話する機会を設けています。15分の中では、チーム5人で話したり、2人組で話したりもしますが、内容は朝なら、「本日の仕事で一番注力したいものは何か?」夕方なら、「本日した仕事で学んだことは?」など、シンプルな「問い」を間において、自由に対話する。時には、雑談もその場で行う。
先の矢野氏が述べるように、頻度の高いコミュニケーションの機会が担保され、また、いろんな組み合わせで話すことで、自分とつながりのある人同士もつながっていることが実感できます。
主観的には、この時間があるだけで、朝は仕事に向かうエネルギーを促進し、夕方は、日中いろんなことがあったとしても、一日を完了させる場になっています。
また、定期的に気軽にコミュニケーションをとれる場があることは、自分に居場所を与え、精神的な安定や、幸福感になにかしらのインパクトをもたらしていると実感しています。
リモート下でも、短い時間でもよいので、定期的に安心して気軽に話せる場が設定されていれば、社員の幸福度はあるレベルで担保され、向上していくと思えます。
あなたの職場ではどうでしょうか?
(日本コーチ協会発行のメールマガジン『JCAコーチングニュース』より、許可を得て転載)
【参考資料】
山口周著『自由になるための技術 リベラルアーツ』講談社、2021年
クレイトン・クリステンセン/ジェフリー・ダイアー/ハル・グレガーセン著
『イノベーションのDNA』翔泳社、2012年
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