コーチングカフェ

コーチが、日々のコーチングの体験や、周囲の人との関わりを通じて学んだことや感じたことについて綴ったコラムです。


未来は今ここでする対話の中にある

未来は今ここでする対話の中にある
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私は今、専任リーダーとして、ある領域の事業拡大に取り組んでいます。

この1年間、リーダーとして取り組んできてつくづく思うのは、自分が今持っている能力や、その能力のベースとなっている前提や信念では、今以上の成果を創り出すことは難しいということです。

これまでよりも高い成果を出すためには、自分が変わる必要があります。

しかし、変わらなければいけないとは思うものの、いったい自分の何をどのように変えればよいのか、それがわからずに悶々とした日々が続いていました。

そんなある日、オフィスで、多数の組織変革プロジェクトを成功させてきたエグゼクティブコーチのIさんと立ち話をする機会がありました。

「『未来は未来にあるのではなく、今、ここでする対話の中にある』というのは本当にそうだなと思うのだけれど、ここでする対話の中に何を持ち込むことで、今と違う未来を創れるんでしょう」

私がそう呟くと、Iさんは言いました。

「究極、話す人を変える、話す内容を変えることだよね」

たった1分足らずのやりとりでしたが、Iさんの言葉を聞いて、私の中に「あっ!」と電球が光りました。

ネットワークを豊かにする対話

Iさんとのやりとりは、私のコーチとしてのクライアントへの関わりの幅を広げてくれました。

素晴らしい実績を出し、周囲から一目置かれているリーダーたちのコーチングをさせていただく機会が数多くあります。

彼らのテーマとしてよくあるのが、リーダーとしてのさらなるステップアップに向けて、自分自身をバージョンアップしていくというものです。

クライアントは、これまでの成功を実現してきた過程で手に入れた信念や強み、リソースをフル活用して、予測不可能な未来を切り開くことに挑んでいます。そんなときに、手に入れたい未来を描き、そこにたどり着くために彼ら自身が何を身に着ける必要があるかを尋ねても、なかなか答えが出てこないことがあります。時に、私がそれを問いかけると、まるでいまの自分を否定されていると感じられることもあるようです。

そんなとき私は、何を身につけたいかではなく、現在クライアントがどのようなネットワークを持ち、その中で何を話しているのかを棚卸しする問いかけに変えるようにしています。なぜならそうすることで、クライアントは自分自身を客観的に捉えることが可能になるからです。

いったん「現在」が見えてくると、今度は、手に入れたい未来に向けての問いかけをしていきます。

未来に向けて、話す内容をどのように変えたいと思っているか、誰ともっと話してみたいのか、もっと話した方がいい人を紹介してくれたり教えてくれたりする人は誰か。

そうやってネットワークを豊かにする対話をしていると、自然とクライアントが「ちょっとあれをやってみよう!」「あの人に聞いてみよう!」と、軽やかに動き出す瞬間が来ます。

以前は、クライアントが慣れ親しんだやり方を手放すことに向けて、「未来に向けて何をすればいいか」を問い続けることが多かったように思います。

いまは「未来に何を実現したいか」「未来ではどんな人たちと話しているか」を問いながら、クライアントが、慣れ親しんだ安心できる環境から、新しい環境を自分で作ることに一歩踏み出すことを信じて待つことができるようになりました。

慣れ親しんだ安心できる環境から一歩出るときは、「怖いな...」とか、「失敗するかも...」といったさまざまな感情が湧き上がってくるものです。しかし、それらの感情を味わうことも、コーチとしてクライアントとともに楽しみたいと思います。


日本コーチ協会発行のメールマガジン『JCAコーチングニュース』より、許可を得て転載)


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