コーチング研究所によるさまざまな調査の結果や、データの分析結果をご紹介します。
「執行役員や事業部長」と「部長」のリーダーシップの違いとは
2017年01月17日
執行役員や事業部長は、会社全体を視野にいれて行動する
2016年7月に、部長と課長のリーダーシップの違いに関する分析結果を紹介しました。今回は、役職をあげて「執行役員や事業部長」と「部長」について、部下から見たリーダーシップの違いを見ていきます。
今回の分析も、以前と同様にリーダーシップに関する53項目(ビジョンの提示や部下との関わり方など)について、「執行役員や事業部長」と「部長」を比較しました。調査対象は、執行役員や事業部長237人とその部下2,894人、部長319人とその部下2,893人です。
まず、執行役員や事業部長が、部長より部下の評価が高い項目を見ていきます。統計的に有意差(t検定 p < .05)がある上位3項目は図1のとおりです。
「会社全体を考える」「会社のビジョン、方向性を話す」という項目から、執行役員や事業部長は特定の事業部だけでなく、より広い視点で物事を見ていることが分かります。また、決断を求められる役職のためか「意思決定が速い」という特徴が見られました。
一方、部長が執行役員や事業部長より、部下の評価が高い項目も見られました。統計的に有意差(t検定 p < .05)がある上位3項目は図2のとおりです。
すべて「部下との関わり」についての項目でした。以前に調べた課長と部長の比較で、部長は課長より「部下との関わり」のスコアが低かったことより、「課長」「部長」「執行役員」と役職が上がるにつれて「部下との関わり」が弱くなる傾向が見て取れます。
役職が上がることで、部下と関わる時間が少なくなる要因はいくつか考えられます。社外との関わりが増えて社内にいる時間が少なくなる、部下の人数が多くなり一人当たりの会話時間が減る、部下に仕事を任せる場面が増える、などです。
しかし、どんな役職でも「上司と部下の関わり」は、組織の成果を最大化するうえで、重要な役割をはたすのではないでしょうか。実際、執行役員にも「部下との関わり」のスコアが高い人たちがいます。そこで、部下との関わりが強い人とそうでない人では、部下の状態にどのような違いがあるのかを見てみます。
執行役員や事業部長を、図2にある3項目の評価が高い上位20%と下位20%のグループに分けて、管轄する組織の状態17項目(7段階評価)を比較しました。ふたつのグループでスコア差が大きかったのは次の3項目です。
・私の組織には一体感がある (スコア差 0.97)
・私の組織では有用な知識や情報・経験を積極的に共有している (スコア差0.78)
・私の組織では社員同士が率直に自分の意見を伝えている (スコア差0.74)
この結果から、執行役員や事業部長も「部下との関わり」を重視することで、組織の一体感や情報共有が活発なチームを実現できることがうかがえます。
今回、「執行役員や事業部長」と「部長」の間にもリーダーシップに違いがあること、役職が上がるほど「部下との関わり」のスコアが低くなる傾向を確認しました。しかし、執行役員や事業部長でも「部下との関わり」のスコアが高いリーダーの組織は、一体感などのチーム力が高いことも分かりました。
調査概要
調査対象:292社(執行役員や事業部長237人とその部下2,894人、部長319人とその部下2,893人)
調査期間:2012年9月-2016年4月
調査方法:ウェブアンケートへの回答
調査内容:Leadership Assessment
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