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人材が定着し活躍する組織文化を浸透させるには

【原文】Develop a staying, growing and thriving culture
人材が定着し活躍する組織文化を浸透させるには
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急速に変化する労働環境のなか、労働力の疲弊、予算の縮小、先行き不透明な経済に直面しつつ有能な人材を確保することが組織の課題となっている。しかし従業員のほうは、同じところにずっといたいと思っているわけではない。

Gartnerによると、2022年の従業員離職数はパンデミック前の平均に比べて約20%増加した。リモートワークの急増、労働力の高齢化による重要な知識の喪失、仕事に意義を求める傾向などの雇用環境の変化をみれば、新たなアプローチが必要であることは明らかである。

実際、パーパス(仕事の意義・目的)は個人を会社に結びつけるものとして、従業員にとって重要な要素となっている。

従来の能力開発システムはもはや十分ではない。企業は、学習の機会を組織全体に平等に提供し、かつその内容を一人ひとりパーソナライズして、個人と組織の両方のパーパスに呼応する文化を育まなければならない。ビジネスリーダーの83%が、組織のあらゆるレベルで能力開発が重要と考えている一方、すべてのレベルで能力開発に取り組んでいる企業はわずか5%にとどまる。

仕事とキャリアが変化し、グローバルとローカルの境界線があいまいになるなか、企業の適応が求められている。明確な目的を持った学習文化、そしてそれが従業員の定着率に与える影響を理解し、現実的な戦略で実行することが最重要課題となっている。

従業員にスキルを身につけさせることだけではない。組織にとどまり、成長し、活躍する理由を与えることが重要となる。

組織全体に学習文化を浸透させるためには、次の3つのステップがある。

ステップ1:学習のパーソナライゼーションを目指す

仕事の世界は猛烈なスピードで進歩している。変化についていくためには、従業員やチームは日常的にリスキリングに取り組まなければならない。学習やリーダーシップ開発への投資は過去最高水準にあるものの、Workplace Intelligenceの調査によると、従業員の70%が将来の仕事に対応できないと感じている。

学習となると、誰にでも同じ方法が通用するわけではない。学習をパーソナライズすれば、一人ひとりが最も改善を必要とする部分に重点的に取り組み、的を絞ってスキルを構築し、時間とリソースを効率的に活用できる。そのためには、誰でも自分に合ったタイミングでトレーニングや教材にアクセスして潜在的な力を発揮できるように、モジュール式のブレンド型アプローチが必要になる。

残念ながら、多くの学習プログラムは導入のしやすさとコンプライアンスを優先し、従来型の人材教育や汎用的な内容の融通のきかないプログラムを採用している。現代の学習者が求めているのは柔軟性であり、質の高い教材に好きなだけアクセスでき、知識を深め、他者から学ぶことができる機会を得られることだ。

組織全体で誰もがアクセスできる教材を用意し、しかも学習内容はパーソナライズするというのは簡単なことではなさそうだ。しかし将来の学習のためには、自主性を重視し、人を中心とするアプローチが不可欠である。テクノロジーをうまく活用することで学習ツールや体験する機会を提供し、誰にとっても意義のある学習を実現できれば、労働者のスキルを磨き、会社とのきずなを強め、離職率の低下につながる。

ステップ2:学習を自分事とし、好奇心に報いる

学習を奨励する企業文化では、組織の全員が模範を示さなければならない。学習戦略を一方的に受け入れさせるだけでは足りない。経営幹部も含めて誰もが学習の背後にある「なぜ?」を知る必要がある。

知識を向上することの結果や影響を誰もが自分事として意識しなければならない。学習に費やす時間と労力は報われるものと認識し、実際にそれを体験しなければならない。

たとえば、誰もがビジネスやテクノロジーに関して適切に判断できるようになれば、デジタルトランスフォーメーションは容易になる。それに伴う生産性の向上は、従業員にも会社にも利益をもたらす。

学習が業績に及ぼす影響の因果関係に注目し、学習がもたらす結果に報いなければならない。

好奇心に報いることは、学習に熱心な人を褒めたり、昇進させたりすることだけではない。批判的思考を育て、たとえ対立を招くとしても議論し、自分の意見を言うことを奨励する環境をつくることも重要である。さらにこうした環境には、学習と能力開発に透明性があることで、心理的安全性が生まれる利点もある。従業員は自分にスキルアップが求められており、新しく習得した知識を積極的に使い、その結果期待外れであったり望ましい結果でなかったりしても非難されることはないことを理解する。

従業員は、過度なイノベーションに怖気づくことなく、斬新な戦略を提示しようと意欲的になる。こうすることで、最終的には自分の仕事と組織の文化とのつながりを強めていく。

学ぶこと、試すこと、学び直すことをバランスよくとらえる視点が不要というわけではない。組織の戦略と文化は、さまざまなやり方によって相互に強め合う必要がある。そのために、たとえば進捗の説明責任を求めると同時に、前向きで本格的なコーチングとフィードバックを十分に体験させることをバランスよく行うアプローチが必要になる。

ステップ3:コミュニティ、経験、コンテンツの充実した学習ポートフォリオを設計する

リモートワークで一定時間勤務する従業員の50%以上が、孤立を感じると答えている。この感覚をさらに強めているのは、多くの学習戦略がテクノロジーによってむしろ人とのつながりを狭めていることだ。バランスのとれた学習および能力開発戦略によって学習文化を促進するには、コミュニティ、経験、コンテンツという3つの重要な要素の最適な組み合わせが必要だ。

  • コミュニティは、説明責任を持つために必要なつながりを生むものとして、その人にとって永続的な変化を実現するために一番良いものとなる。
  • 経験は、マインドセットを一新し、変化する力を生み出す最も効果的な方法のひとつである。
  • コンテンツは、ものの見方や働き方を導き、強化する土台となる。

この3つのバランスをとることが非常に重要であり、学習するすべての組織はこれを最優先事項とするべきだろう。

参加者が学習ポートフォリオに意義があると感じているかどうかを判断するには、従業員エンゲージメント調査などの方法で影響を測定するとよい。こうした測定ツールを合わせて、頭、心、手の3つのカテゴリーを調べるべきだろう。頭については、学習によって知性が活発になり、競合他社にまさる業績をあげるという会社の使命に貢献できるかどうかを測定する。

心の測定では、参加者が幸福かどうかを判断する。手については、学習が生産性とパフォーマンスの向上につながっているかどうかを測定によって確認する。

ほとんどの企業は、人材育成が不可欠であると考えている。ところが、学習と能力開発に関する考え方が旧態依然のリーダーがあまりにも多い。優秀な人材がすぐに転職する現代の労働市場において、これは問題だ。

従業員の定着率を高め、エンゲージメントを高めるには、すべての関係者にプラスとなり、ダイナミックな学習文化を創造する目的意識の高いトレーニングに投資すべきだろう。

「学習文化は人材を維持するために『あればよいもの』だけではない」
HR Daily Advisor 掲載


【筆者について】
ステファニー・ペスケット(Stephanie Peskett)氏は、BTSの上級副社長兼パートナー。ビジネスと人の変革におけるソートリーダーシップ、イノベーション、次世代の思考に深くコミットしている。Australian HR Instituteのフェロー、国際コーチング連盟認定PCC資格を持ったコーチ、シドニー大学のワーク&組織研究の元理事、タレント&リーダーシップクラブの会長、講演者、および社会変革にコミットしているリーダー。

専門分野は、コンサルティング、カルチャー、リーダーシップ開発、コーチング、学習、タレントマネジメント、多様性、組織文化、エグゼクティブおよび高い潜在能力を持つタレント、人材戦略、チェンジマネジメント、組織開発、組織の有効性。

アンドリュー・バーンズ(Andrew Burns)氏は、BTSの副社長。戦略の整合性を高め、文化変革のイニシアティブを加速させるためにクライアントと連携する役割を担っている。

フォーチュン50企業向けに現代的なL&D(学習&開発)プログラムを12年以上にわたり創り上げてきた経験豊富なL&Dリーダー。Salesforce、Intuit、eBay、Chevron、ServiceNow、EA、Shell、NASA JPL、LGとの受賞歴のあるプロジェクトをリードしている。

【翻訳】Hello, Coaching! 編集部
【原文】Develop a staying, growing and thriving culture(2024年2月にBatesのResearch and Resourcesに掲載された記事の翻訳。Bates Communications Inc.の許可を得て翻訳・掲載しています。)
Article translated with permission of © Bates Communications


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