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自己変革をはばむ最大の障害とは

【原文】The Greatest Block to Transformation
自己変革をはばむ最大の障害とは
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個人の成長における最も重要で持続可能な飛躍は、自己、つまり自身のアイデンティティを広げることから生じる。しかし、自己の一つのバージョンを手放し、別のバージョンに進化する際に伴う不快感に、私たちは抵抗を感じる。

あなたはなぜリスクを取らないのか

日常生活の中で、私たちの脳は今の状況の意味や方向を見つけ出すために過去の経験に頼っている。そして、私たちは過去の経験に基づいて自分自身を定義し、考えることなく行動することがある。たとえばあなたは、失敗や誰かから拒絶されたことといった、自分のアイデンティティを脅かすような否定的な要素を避けるだろう。同様に、自分の力や成功を主張するような肯定的な要素も避けることがあるかもしれない。

ベストセラー作家マーク・マンソンが提唱する「回避の法則」によると、「自身のアイデンティティが脅かされるたびに、私たちは脅かすものを避ける傾向が強まる」とされている。

ノースウェスタン大学の心理学者、ダン・マクアダムスは、古い目標や時代遅れの価値観、そして陳腐化した自己認識が、「人生の物語の中核的要素」であり、それは偽りの安心感を与えていると述べている。あなたの人生のストーリーが利益や望むものをもたらさないときでさえも、それらの古い物語は一貫して変わらないのである。

「多くの人々は、古い信念に従って日常を過ごし、疑問を抱かずに行動を繰り返す。これらのパターンは定着し、私たちは声にならない欲求や、変革を強力に推し進める可能性から遠ざかってしまう」

脳は、正当化という便利なツールを使って、変化や個人変容につきもののリスクを避けようとする。これらの正当化にはしばしば「~すべき」という言葉が含まれている。「~すべき」とあなたが思うのは、家族や友人、上司、そして社会があなたに何かを求めていると考えているからだ。「~すべき」 は時には道徳的な指針を提供する。しかし時には、盲目的に 「~すべき」に従うことによって、あなたは満たされない、イライラした、空虚な気持ちになることがある。

あなたの自己概念を変える方法とは

変化し、リスクを冒し、前進するためには、今の自分がどのような人物であり、将来どのような人になれるかを探求する安心感が必要だ。脳は自己実現よりも自己保存を優先する傾向があるため、様々な可能性を想像することについて脳を頼ることはできない。自己内省によって、あなたが現実とアイデンティティを保持している物語を超えて思考することはおそらくない。あなたの潜在能力を開花させるために脳の本来の働きを無視することを選択する場合、アイデンティティを扱う経験のある資格を持ったコーチを探すことをお勧めする。自分の脳が良い挑戦を求めているときに、あなたに対して率直に接してくれる人や他のプロフェッショナルを知っているかもしれない。

「効果的なコーチングはアイデンティティを扱うことをベースにしていて、状況の認識とその状況における自己認識の両方を変え、望む結果を達成することに焦点を当てている」

戦士が剣に代わって手にしたものは?

私はキャリアの初期の頃、自分自身を「すべてを解決できる戦士」と見なしていた。私は組織文化の変革に関する経験と知識を買われて採用された。しかし、小柄な女性が大柄な男性たちの中で声を届け尊重されるためには力強い声が必要だった。最初のうち、それはうまくいっていたが、やがて機能しなくなるようになった。昇進するにつれて、ますます多くの対立に直面するようになったのである。

私が最後に働いていた会社では上司から、「君はリーダーシップというテーブルでの座席は手に入れたが、周囲の人を強く追い詰めるのをやめないとその座席を失うだろう」と言われた。彼はまた、「君が望むことを相手に無理にやらせる代わりに、相手にあなたのビジョンを共有できるだろうか?」と私に聞いた。その時に感じた自分の中で起きた抵抗が私の望むものを妨げる可能性があることに気づき、私は変わらなければならないと悟った。私は将来の可能性を人と共有することが好きだった。これを実現する方法についてみんなを巻き込んで話し合うのが楽しかったのだが、それを忘れていた。私はまだ戦士かもしれないが、今では剣ではなく周りの人を鼓舞するようなビジョンを扱うことが多くなった。

なりたい自分を定義するための8つの問い

あなたが今の自分自身をどのように定義し、なりたい自分がどのような人かについて対話する相手を見つけて欲しい。その際に、以下の質問を扱うことがより多くの可能性を創造する手助けになるかもしれない。

  1. 現在の課題を考えるとき、この状況における自分自身をどのように見ていますか?まず、あなたが持っている役割に名前(リーダー、チームメンバー、親など)をつけるところから始めてください。
  2. 役割に形容詞(なったばかりの、最年少の、最も経験豊富な、最も知識が豊富な、など)を追加してください。
  3. あなたが何を感じているかを表す形容詞(何も分からない、怒っている、諦めている、わくわくしている、怖いなど)を追加してください。
  4. あなたがどのような存在であるべきだと考えているか(賢明な人、チームの代弁者、責任感のある案内役、平等な貢献者など)を定義してください。
  5. あなたの望むことが実現できる場合、直面している状況がどのように見えて欲しいかを述べてください。ただし、説明に「しかし」という言葉を追加しないでください。あなたにとって最も良い状況を描写してください。
  6. このビジョンを見るとき、最高の状態のあなたはどんな感じですか?どのように感じ、考え、行動し、どのような価値観を尊重しますか?あなたのビジョンが「なるべき」人と一致するかもしれないし、あるいはより充実感や成功を感じるために違うものを望んでいるかもしれない。
  7. 今日の自己をどのように定義するということに戻ろう。将来の自分がどのようになるかを想像し、すでに変化していますか?そこには、想像上の「~すべき」があるのだろうか、それとも今のアイデンティティを維持していると思われると実際の状況があるだろうか?これらのルールを破ることはできますか?新しいアイデンティティを試してみるために、小さなリスクや大きなリスクを取ることができますか?
  8. どのような恐れが変革を妨げていますか?他人の判断や拒絶を恐れていますか?あなたとあなたの将来にとって何が最も重要ですか?それはあなたが自己概念を広げることを恐れていても、前進する価値を感じさせるものですか?もし今日から変化を始めることができない場合、いつこの変化を開始することができるかを決定できますか?

これらの質問に答えることで、今どのような自分でいたいかを選択することができる。古いパターンがどれほどうまく機能していたとしても、今が新しい自分になる絶好の機会かもしれない。

「リスク自体は絶え間なく現れる。そしてリスクを取ることは、望む自分になるために自分自身の層を1枚1枚剥がしていくプロセスである。」

- フィービー・エング
『Warrior Lessons: An Asian American Woman’s Journey into Power』の著者

あなたには、物語と結果の両方を変える力がある。


【筆者について】
マーシャ・レイノルズ博士(Dr. Marcia Reynolds)は、コーチングを通して世界各地の企業の幹部育成をサポートし、実績を上げている。クライアントは、多国籍企業、非営利団体、政府機関のエグゼクティブや将来の幹部候補生である。また、世界各地で開催されているコーチングやリーダーシップに関するカンファレンスで講演し、43カ国でリーダー向けの講座を担当し、コーチングを行っている。調査機関グローバル・グルス(Global Gurus)で世界5位のコーチに選ばれ、さらに国際コーチング連盟が選出している10名のThe Circle of Distinctionの一人でもある。
医療分野でのコーチング経験も豊富で、ヘルスケア・コーチング・インスティテュートのトレーニングディレクターを務め、総合病院、クリニック、大手製薬会社などで25年にわたり数多くのリーダーにコーチングを提供している。
また、彼女は国際コーチング連盟(ICF)の 歴代5番目のグローバル・チェアマンであり、世界で最初のICFマスター認定コーチ (MCC) になった25人のうちの1人である。組織心理学の博士号、および、教育とコミュニケーション分野における修士号を取得している。
著書に、"Coach The Person, Not the Problem"(邦訳:『変革的コーチング』), "Outsmart Your Brain", "The Discomfort Zone: How Leaders Turn Difficult Conversations into Breakthroughs"などがある。

【翻訳】Hello, Coaching! 編集部

【原文】The Greatest Block to Transformation(レイノルズ博士のウェブサイトCONVISIONINGに掲載された、2023年7月7日の記事を許可を得て翻訳。)


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