プロフェッショナルに聞く

さまざまな分野においてプロフェッショナルとして活躍する方たちに Hello, Coaching! 編集部がインタビューしました。


選手のために、コーチも成長し続ける
横浜DeNAベイスターズ
1軍バッテリーコーチ 藤田和男氏

第2章 社会性をもつことの大切さ

第2章 社会性をもつことの大切さ
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横浜DeNAベイスターズのバッテリーコーチを務める藤田氏は、社会人野球の経験はあるものの、そのキャリアの中にプロ野球選手としての経験はありません。また、野球とは全く関係のない社会人生活を送った時期もあるなど、プロ野球界において異色のキャリアをもつコーチとして、就任当初に注目を集めました。Hello, Coaching! では、社会人経験ももつ藤田氏だからこそ見えてくる「コーチング」があるのではないかと考え、藤田氏自身のコーチとしての心がけなどについてお話を伺いました。

第1章 人は、振り返りでしか成長できない
第2章 社会性をもつことの大切さ

本記事は2020年3月の取材に基づき作成しています。
内容および所属・役職等は取材当時のものを掲載しています。

コーチの仕事は、まず選手の考えを理解することから

 藤田さんご自身は、選手にとってのコーチをどのような存在だと考えていらっしゃいますか。

藤田 プロ野球界に入ってくる時点で、選手には能力や技術がすでに十分備わっているわけです。ですからコーチとしては、彼らの持っている力をどれだけ抑え込まずに引き出すか。これが使命だと思います。

選手は、一人ひとりが「次はこうしたい」といった答えをもっているものです。僕の仕事は、まずそれを聞いて理解すること。選手の考えを聞いた上で、別の方法について伝えたり、選手の考えに対する僕個人の意見や監督の意見を伝えたりしながら、チームの方向性に向けて選手とともにすり合わせていく。僕一人の力で選手をどうこうするということは無理な話ですので、選手の考えをどう引き出していくかということを常に考えています。

後悔が生まれるような日々を選手に送らせないようにする

 たとえば1軍の選手がファームに落ちるといったようなセンシティブな状況で、藤田さんは選手とどのように向き合っていらっしゃるのでしょうか。

藤田 こればかりは僕も経験したことがない、未知のテーマです。1軍バッテリーコーチになってからは、そのようなときにどのような言葉をかけたら良いかをよく考えるようになりました。コーチである自分にできることは、選手がそういう場面に直面した時に後悔するような日々を送らせないことだろうと、いまは考えています。日々その瞬間を大事にし、良いことがあっても悪いことがあっても未来を見て、一日一日を大事に過ごしていく。そういう思いで過ごした一日を積み重ねていれば、残念ながらファームに行くことになったとしても、そのことを選手自身も受け入れられるのではないか。ですから、常に日々を大事にしながら過ごしてもらえたらと思っています。キャンプに入る前にも、その思いは全員にLINEで伝えています。正しいかどうかはわかりませんが、良いときも悪いときも前を向けるような言葉かけを常に心がけています。

人の気持ちがわかる人間であること

 藤田さんご自身が指導者として一番大切にしていることはどんなことでしょう。

藤田 社会性です。野球を離れたら何も残らないという状態だけにはなってはいけないと常に思っています。これは、もしかすると僕だから思うことかもしれません。日本生命には9年間所属しましたが、現役は8年でピリオドを打つことになり、最後の1年を野球とは全く関係のない世界で過ごしました。実はその時の経験が、コーチとなった僕にとって本当に大事だったなと思っているんです。

社会性のある人間でいること、人の気持ちを察し、理解することができる人間であること。これは選手であってもコーチであっても、必ず備えておかなければならない部分だと思います。コーチとしては、時に厳しいことを言わなければならない場面もある。相手に伝えるためには、タイミングを見計らう必要もある。そういう仕事をする上で、まず人の気持ちがわかる人間であることは、何よりも大事です。加えて野球に関する知識を持っていること。選手に納得してもらうことができ、選手の成長につながるような知識や情報を、きちんと伝えられるようにならないといけないと思います。

 社会性というのは、指導の際にはどのように影響するのですか。

藤田 基本は挨拶です。人は調子が悪くなると、気持ちとしてなかなか良い表情になれない。笑顔で挨拶ができなくなるんです。そんなときは、まずこちらから「おはよう」と言葉をかけて、「悪い雰囲気をまとっているよ」ということを暗に相手に伝えます。困った時やしんどい時に醸し出す雰囲気というものがありますが、世の中ではそういう雰囲気で挨拶して良いとはされません。野球選手だからといって許されることではないのです。自分一人で世の中が成り立っているわけではないんだということをきちんと教え、周りを見て対処できるようにしてかなければいけないよと伝えています。

コーチとして描く未来は今年の優勝

 藤田さんは、どんなビジョンをお持ちなのでしょうか。

藤田 僕はまだ1軍コーチとしての実績があるわけではないので、まずは今年優勝することを第一に考えています。優勝して、選手やチームの皆とその家族が幸せになれるようにすることが一番です。その先のことはあまり考えていません。とにかくコーチとしての自分の役割を果たせるように、今日お話ししたような内容を胸に日々取り組んでいくだけです。

 チーム全体を優勝に向かわせるために、コーチとしての役割以外で、藤田さんが意識していらっしゃることは何かありますか。

藤田 コーチ間の関係がギスギスして、横のつながりが悪くなると、選手もその雰囲気を感じ取ります。ですから、監督やコーチの間に入って、いつでも良い雰囲気でいられるように働きかけています。やはり何事もコミュニケーションなんです。同じことを伝えるのでも、言い方ひとつで受け取り方も違いますし、タイミングや自分の表情など、気を配っていますね。

コーチにコーチは必要か

 コーチ・エィは企業のエグゼクティブや管理職にコーチングを提供しています。管理職の方に対するコーチングは、選手を直接コーチする藤田さんのような立場の方へのコーチングと言えるかもしれません。そこで最後に「コーチ」に対するコーチという存在についてはどのように思われるか、ご意見を聞かせていただいてもいいでしょうか。

藤田 僕にコーチがいるとしたら、コーチとしての不安を取り除いてほしいですね。その日の僕の判断が正しかったかどうかについてコーチと話し合いたいと思うと思います。「声をかけたらこんな表情で終わってしまった、次はどうしよう」といったこととか。今は、こうしたことを毎日の振り返りの中で自分で考えていますが、自分に不安や迷いがあるときに背中を押してくれたり、向き合ってくれたりする存在があれば、ありがたいなと思いますね。

(了)

インタビュー実施日: 2020年3月6日
聞き手・撮影: Hello Coaching!編集部

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