プロフェッショナルに聞く

さまざまな分野においてプロフェッショナルとして活躍する方たちに Hello, Coaching! 編集部がインタビューしました。


「コーチ」とは何者か
リーフラス株式会社
「アルティスタ浅間」クラブアドバイザー 梅山修氏

第1章 コーチは選手にとっての「居場所」である

第1章 コーチは選手にとっての「居場所」である
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プロゴルファー中山綾香さんのコーチを務める梅山修さんに、コーチ側はどのようなスタンスで選手と関わっているかについてお話を伺いました。梅山さんは、もともとプロのサッカー選手であり、現在はサッカーの指導者として活躍していらっしゃいます。コーチングを学んだあと、サッカー以外のさまざまな分野の方を対象にコーチングを提供されています。

参考:中山綾香さんに「メンタルコーチ」と「技術コーチ」の二人のコーチとの関わりについてお聞きしたインタビュー『技術だけでは強くなれない』プロゴルファー 中山綾香氏(2020年8月掲載)

第1章 コーチは選手にとっての「居場所」である
第2章 「コーチング」は、技術を教えるためのものではない

本記事は2020年8月の取材に基づき作成しています。
内容および所属・役職等は取材当時のものを掲載しています。

第1章 コーチは選手にとっての「居場所」である

 中山さんにお話をお聞きした時に、梅山さんとのコーチングをスタートしてすぐの試合で、自信をもってショットが打てて予選を通過できたとおっしゃっていました。(※1)。中山さんとはどのようにセッションをスタートされたのでしょうか。

梅山 中山さんと出会ったのはちょうど彼女が試合で思うような結果が出せなかった時期でした。彼女のマネジメントをしている会社の社長さんから「コーチしてあげてくれないか」と紹介されたのが始まりです。その時の彼女は、試合結果はもちろんですが、頑張ってるけどそれを認めてもらえない、自分がやりたいようにやれていないことなどにストレスを抱えていたようです。

最初のセッションで彼女がテーマにしたのは「自信について」でした。

「自信がない」
「自信って、何なの? それってないといけないの?」と。

話を聞いていて、率直に「彼女は誰の何のためにゴルフをしているのだろう?」という問いが頭に浮かびました。

そこで視点を変えて、外側のことではなく、彼女自身にフォーカスして問いを投げかけていきました。

「中山綾香さんてどういう人?」
「どんなゴルファーなの?」

ゴルフを始めた理由とか楽しさ、それからプロとして、観ている人に何を伝えられたらいいか、などまずは彼女自身の価値観について聞きましたね。コーチング的に言うと「ファウンデーションを整える」といったところでしょうか。

梅山修 氏 / リーフラス株式会社「アルティスタ浅間」クラブアドバイザー
1992年に浦和学院高校を卒業後、ジャパンフットボールリーグ(JFL)に所属するNKKに入部。1994年より、同じくJFLの中央防犯(現:アビスパ福岡)に移籍し、プロ契約を結ぶ。1995年にはベストイレブンに入る活躍でリーグ優勝を達成し、Jリーグへの昇格を果たした。1998年、Jリーグ参入を目指すJFL・東京ガスフットボールクラブ(後のFC東京)に移籍。右サイドバックのレギュラーとしてJ1昇格に貢献。2002年、J2湘南ベルマーレへ移籍。湘南ではキャプテンも任され、2004年からアルビレックス新潟へ移籍。2006年シーズンを最後に現役を引退。2007年、新潟市議会議員選挙(西区)に無所属で出馬し、当選。最大会派の幹事長として議会改革をはじめ、教育、子育て、スポーツの分野で力を発揮した。その間もアルビレックス新潟サッカースクールや社会人サッカーチームで指導。2015年市議を引退し、本格的にサッカー指導者としての活動を開始。2018年から北海道十勝スカイアースの監督に就任。2019年、アルティスタ浅間のヘッドコーチに就任し、2020年、同クラブアドバイザーに就任。
リーフラス株式会社 / アルティスタ浅間

 なるほど。梅山さんにとっては中山さんを知っていくというタイミングでもあり、ご本人にとっては自分を取り戻してくようなプロセスだったのかもしれませんね。

梅山 そうですね。中山さんは実際、高校生の時に自分でアメリカに行くと決め、本人曰く「当時、英語は話せなかった」のに、学業もゴルフもハイレベルで両立してきました。それだけでも彼女のポテンシャルは充分に高いことがわかります。

僕自身、「自信」というのは「感情の状態」であり、物理的に何かができるようになったから自信がつくわけではないと思っています。ただ、その時期の彼女は、「自信」という一つの言葉にとらわれて視野が狭くなり、必要以上に自分を過小評価しているように感じたのです。ですから、それまでの素晴らしい行動力や実績を振り返りつつ、彼女が理想とする状態を一緒にイメージしていくことを意識して、コーチングに入っていきました。

格好よく言うと、過去と未来を質問によって行ったり来たりして、本来の自分にアジャストしていく作業です(笑)。すぐに成果につながったのは、彼女にもともと実力があったからです。

「相手の成長につながれば、それはコーチングである」

 中山さんのインタビュー記事では技術コーチと区別する目的もあり、あえて「メンタルコーチ」という表現を使ったのですが、梅山さんご自身はその違いをどのように位置づけていらっしゃいますか。

梅山 僕の中では「相手の成長につながるかかわり方は、すなわちコーチングである」という認識なので、基本的には「メンタルコーチ」や「技術コーチ」といった分け方はしていません。どちらも相手の成長を支援する「コーチ」です。方法とか手段ではなく目的地にガイドするのがコーチだと。

そのためには、質問するのがいいかもしれない、アドバイスするのがいいかもしれない、話を聞くことに徹するのがいいかもしれない、見本を見せるのがいいかもしれない、もしかしたら黙っているのがいいかもしれない、、、。

これはスポーツに限らないアプローチだと思うんですよね。話していて「コーチというのは、『役割』というよりも『存在そのもの』なんじゃないかな」と感じています。話しながら気づくこの感じは、このインタビューがすでにコーチングになっているということでしょうか(笑)。

それでもあえて言うならば、選手にとっての「居場所」というイメージです。本当に心を開いて安心できる場所。クライアントや選手にとって、いくつも「心の居場所」があるというのはいいことだと思うんです。

一時、サッカー界では複数のポジションをこなせる選手という意味で「ポリバレント」という言葉が注目されました。スポーツのコーチも、企業の管理職的なポジションの方も、相手の成長という目的のために、複数の役割というか関わり方ができる人材は貴重な存在だと思います。そういう意味で、スクールで新たに学んだことも含めて、コーチングスキルは実体験からも万能薬だと言えます。

(次章に続く)

インタビュー実施日: 2020年8月31日
聞き手・撮影: Hello Coaching!編集部

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