米国コーチング研究所レポート

ハーバード大学医学大学院の外郭団体、「コーチング研究所/Institute of Coaching (IOC)」所蔵のコーチングに関する論文やリサーチ・レポート、ブログなどをご紹介します。


Institute of Coaching(米国コーチング研究所): 15th Annual Coaching in Leadership & Healthcare Conference 参加&研究発表レポート

Institute of Coaching(米国コーチング研究所): 15th Annual Coaching in Leadership & Healthcare Conference 参加&研究発表レポート
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Institute of Coaching(米国コーチング研究所、以下IOC)、ハーバードメディカルスクール、マクリーン病院の共同開催による年次カンファレンスが、2024年5月3日~4日の2日間に渡ってアメリカ・ボストンで開催されました。

第15回となる今回のカンファレンスは、5年ぶりに対面で開催され、世界29ヵ国から約640名のコーチ、医療関係者、リサーチャーなど、世界的な専門家たちがボストン・ウォーターフロントに集まりました。

株式会社コーチ・エィは、今回のカンファレンスでポスター発表を行い、コーチ・エィのグループ企業であるCoach Uもブースを出展しました。今回の発表内容の報告とともに、カンファレンスの様子を一部レポートします。

なお、より詳細なレポートは、コーチング研究所のレポートページにてご覧いただけます。

コーチ・エィの研究成果発表

コーチ・エィ コーチング研究所は今回のカンファレンスにおいて、アジアパシフィックエリアからの唯一の発表者として、「コーチングセッションの評価ツール」の開発に関するポスター発表を行いました。

ネットワーキングセッションの時間を中心に、ポスター発表者と来場者とのディスカッションが各所で行われるなか、コーチ・エィの発表についても、「こうしたツールを求めていた」と多くのコーチからコメントをいただきました。

第15回カンファレンスのテーマと基調講演

今年のカンファレンスは、「Journey from Coaching Competence to Wisdom(コーチングの能力からコーチングの叡智への旅)」というテーマで開催されました。

「コーチングという人類の叡智をもって、コーチングに携わる私たちは、世界にいかにポジティブなインパクトをもたらすのか」という問いが、2日間で行われた12の基調講演における軸となっていました。

ここでは、一部の講演の内容のキーメッセージを紹介いたします。より詳細な内容はコーチング研究所のレポートページをご覧ください。

なお、基調講演の動画は、IOCの会員になることで視聴することが可能です。

基調講演①:トラウマに配慮した組織と人材の構築:なぜ「癒し」が求められるのか

初日に行われたアリーシャ・モーランド=カプイア医師による講演は、「安全を感じられること、つながり、マタリング(自分が意味のある存在であると感じられること)、帰属感」に関する内容です。神経科学的研究に基づく知見だけでなく、実践知も豊富に紹介されました。

キーメッセージ

  • トラウマとは、(トラウマのタイプに寄らず)恒常的な恐れやストレスのこと。特定の誰かが抱える問題ではなく、誰にでも起こりうるものであり、また防ぎうるもの。
  • トラウマは、外的脅威に対して、適応するための内的・外的リソースが不足しているときに生じる。つまり、神経生物学的に孤立した状態(孤独)がトラウマを引き起こす。
  • 「思いやり(Compassion)」は、向けられた人にとって有益であるだけでなく、その人自身にとってよりインパクトがある。
  • トラウマに配慮した人となり、社会的な安全を実現するためのシステム変革に取り組むには、「成功」ではなく「熟達」を目指す必要がある。

スピーカー:アリーシャ・モーランド=カプイア医師
マクリーン病院/ハーバード大学の「トラウマに配慮したシステム変革研究所(trauma-informed systems change)」の創設者兼ディレクター。ハーバード大学医学部精神医学助教授、オレゴン健康科学大学医学部精神医学臨床准教授。

基調講演②:AI時代の智慧の力

2日目の最後に行われた基調講演では、これからの時代の智慧とテクノロジーがテーマでした。

キーメッセージ

  • AIは、この先あらゆることを可能にする。ただし、思いやることや愛することはAIでは実現されない。
  • テクノロジーが加速すればするほど、人間は、孤独、欠乏感、恐れに苛まれる。私たちは、自分自身と自然ともっとつながっていく必要がある。
  • 私たちは、智慧、人間性、思いやりをもって、賢く意図してテクノロジーの強大な波をうまく管理し活用していくことが必要である。
  • コーチングは、人々が自分の内面を見、自分自身や自然界とつながることをサポートする仕事だ。今より一層、今後必要とされる仕事になるだろう。

スピーカー:ソーレン・ゴードハマー氏
事業家・作家・思想家。Wisdom 2.0カンファレンスの創設者兼ホストを務め、テクノロジー界のリーダーと、智慧の伝統を持つ人たちを一堂に集めて、私たち自身、社会、そして世界に利益をもたらすように現代の優れたテクノロジーを活用できるかを探求した。

スピーカー:チップ・コンリー氏
ベストセラー作家・事業家・経営者。ホテル業界で二度の起業を経験するとともに、airbnbのグローバルホスピタリティ兼戦略担当として、旅行業界の世界的な革命を牽引した。

これからの時代のコーチング

今回のカンファレンスでは「智慧」をテーマに、コーチとしていかに人間らしく生き、人や世界と関わるか、ということが終始問われました。IOCは、この問いに対してコーチこそが社会・世界をより良いものにしていけるリーダーであり、コーチングを通じてより良い未来を作っていくことに貢献するのだという、高い誇りと信念をもって臨んでいます。

特に今回は、AIやテクノロジーによって劇的な変化を遂げる世界において、私たちは人として人間性を失わずにいることがこれまで以上に大切になっていること、そして、AIやテクノロジーは、手綱をつけて活用していくことによって、そうした人間性をサポートするツールになりうるはずだということが、強く訴えられていたことが印象的です。

コーチングは、こうした時代の中で、人間としてのあり方を問い、考える機会として、より一層の貢献が求められ、コーチ自身がそれを体現することが、期待されていくのでしょう。

こうした世界の動きに、日本のコーチングコミュニティはどう関わっていくのか、日本でコーチングが人に社会にポジティブなインパクトを生み出していくための、コミュニティやムーブメントは、どうしたら実現できるのか、コーチ・エィとして私たちが関わる皆さんとこうした問いについて対話し、また、実現を推進していきたいと感じた2日間でした。

(報告・文責:コーチング研究所 福林直、宗像このみ)


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