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「誇り」が生まれるメカニズム

「誇り」が生まれるメカニズム

社員の誇りはどこから生まれるのか

「会社や自分の仕事に、もっと誇りをもってほしい」
「やらされ仕事ではなく誇りをもって仕事に取り組んでもらいたい」

コーチとして、企業のエグゼクティブと対話していると、「誇りをもつ」という言葉が、頻繁に登場します。

「誇りをもてば、仕事も楽しくなるし、組織への貢献意欲も出てくる。離職も減るだろう」

確かに、誇りをもった社員が増えることは、企業の発展に寄与する可能性が高いように感じます。

では、どのように人の誇りは生み出されるのでしょうか。

単に「誇りをもちなさい」と言って、もてるものでもなさそうです。

社員はどのようにして誇りを感じるのか。社員が誇りを抱く環境とはどのようなものか。誇りが生まれるメカニズムがわかれば、組織の業績向上という観点で、私たちコーチが大きく貢献できる可能性があると感じました。

「認められている」という実感が誇りにつながる

まずはどういう事例があるのかを探ってみようと、「誇り」をキーワードに本を探し、『奇跡の職場』という一冊の本に出会いました。元JR東日本テクノハートTESSEIの「おもてなし創造部長」であった矢部輝夫さんが書かれた本です。

この本の主役は、新幹線が終着駅に着き、次に発車する折り返しの7分間を使って清掃を完了させる社員たち。彼らは自分たちの清掃風景を「新幹線劇場」と名づけ、見ている乗客たちを意識し、気もちよく乗車してもらう工夫をしています。「掃除をしておけばいい」という意識ではなく、自分たちの一挙手一投足がお客様に注目されていることを認識し、困ったお客様がいたら積極的に声をかけサポートする。清掃員の枠を超えて、自分たちも旅の思い出を作る一員なのだという姿勢が全社員に浸透している会社です。

TESSEIでは、経営が現場スタッフを認めること、そして、スタッフがスタッフ同士を互いに認め合うことのできる環境、風土を作ることを意識しました。たとえば、地道にコツコツ頑張っている人を称えるエンジェルリポートを全社に公開し、よくリポートされる人を表彰する制度を作ったり、ほめられた人だけでなく数多くほめた人を表彰するようにもしました。また、新幹線や駅をよく見ているからこそわかる、授乳室の設置やトイレの改善などの設備的な提案も、会社を超えて経営陣がJR東日本にかけあうなど、現場からの声を大切にし、意見、提案がたくさんあがるような仕組みを整えたといいます。

認められることによって、自分が誰かの役に立っている、社会に影響を与えているということが実感できると、その仕事の価値を感じ、一人ひとりの誇りにつながるといいます。その誇りは「もっと会社に貢献したい」、「さらに良いサービスを生み出したい」という想いにつながり、社員発信でのたくさんのアイディアの創出やサービス改善につながりました。周囲が功績を認めることによって、社員の誇りを生み出したのです。

この本を読み、自分が担当したコーチングプロジェクトでも同じような事例があったことを思い出しました。そのプロジェクトは、「業績向上のためには、社員が誇りをもつことが欠かせない」という、あるメーカーの部門長の熱い想いから始まったプロジェクトです。「自分は、会社や上司から大切にされていると感じることが、誇りをもつことにつながる」という信念のもと、「部下に対して、厳しくあっても大切にすることが、上司として何よりも大切である」と、その部門長は熱をこめて話してくださいました。

上意下達で、上司からの指示、命令によって部下が行動するという組織風土の中、そのプロジェクトでは、まずは「上司が部下の想いを知る」という目標を掲げました。そして、上司がコーチングを学びながら、上司と部下の対話の頻度を、劇的に増加させました。それまでは、指示に対してできて当たり前、できなかったことに対しては激しく叱責されるという雰囲気があり、誇りという感情をもちづらかったといいます。コーチングを取り入れてからは上司が部下のやりたいことや想いに耳を傾けるようになり、「部下はこんなことを考えていたのか」、「上司は話せばわかってくれる」というお互いの意識の変化が生まれました。この組織は、徐々に部下からの提案が増え、1年ほどをかけて、自発的な行動が生まれる職場に変身を遂げつつあります。

誇りは人との関わりから生まれる

これら2つの事例から、誇りは一人で築けるものではなく、人と人との関わりを通じて醸成されるものであると考察します。自分の行動や想いが相手に認められてこそ、自尊心が生まれ、他者や組織への貢献意欲につながると思うのです。

この機会に、同僚コーチ二人に、誇りを感じるときについて尋ねてみました。一人は、「コーチという仕事の社会的意義、世の中のリーダーに役立っている実感をもてることが誇りだ」と答えました。もう一人は、クライアントから「ありがとう」と言われることこそが、自分を誇れる時だそうです。私自身はといえば、お客様の組織風土改革に、そのメンバーの一員として貢献できた実感をもてたときに誇りを感じます。

こうして三人で話をする中で、相手の話を聞きながら、自分についても振り返り、自分の誇りを表現する言葉を探すプロセスも、貴重なものだと感じました。

皆さんの職場では、誇りをはぐくむ対話はどのくらいなされているでしょうか。

参考文献
『奇跡の職場 新幹線清掃チームの"働く誇り"』矢部輝夫 2013年 株式会社あさ出版

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