コーチングカフェ

コーチが、日々のコーチングの体験や、周囲の人との関わりを通じて学んだことや感じたことについて綴ったコラムです。


一人のビジョンから組織のビジョンへ

一人のビジョンから組織のビジョンへ
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今から10年ほど前のことです。私は前職の採用支援企業で異動を経験しました。異動先のチームはメンバーのモチベーションが高く、異動前の部署と比べると働く意欲に明らかな差がありました。当時はその理由を解明できなかったのですが、今振り返ってみると、それは異動先のリーダーが掲げるビジョンの差だったように感じます。

ビジョンを描くとは?

ビジョンとは何でしょうか。ビジョンとは、将来のあるべき姿を描くこと、将来の見通しをたてることと定義されます。

では、なぜビジョンを描くことが大切なのでしょうか。

たどりつきたい姿をよりはっきりさせればさせるほど、そこに到達するイメージがわいてきて、それまで見過ごしていたような情報が目に飛び込んでくるようになります。これを、心理学用語では「選択的知覚」といいます。行き先を決めれば、そこにたどり着くための情報を自然とキャッチできるようになり、目的地まで早いスピードでたどり着けるようになる可能性が高まるのです。

異動先の部長は、

「今までお手伝いできていなかった求職者の転職のお手伝いをしよう。
我々の手で中途採用市場をもっと活性化させて、事業部を大きくしよう」

というビジョンを掲げていました。異動したての私をはじめとして部署のメンバーの8割は1年以内に入社した人でしたが、部長から「あれをやれ、これをやれ」と言われたことは一度もありません。営業数字のトレースもありませんでした。

ただ、

「もっと多くの転職者のお手伝いをするために、どんな会社の求人を獲得したらいいか?」
「我々がたくさんの転職のお手伝いができるとその先にはどんな未来が待っているだろう?」

日々、部長からそんな問いかけをされました。

さらに、

「事業部が大きくなったら君にはどんないいことがある?」

私たち自身にも問いは向けられました。

1つの問いに対して私たちの答えは一人ひとり違いました。

「まだ転職を迷っている人でも受けたくなるような有名企業の求人を増やそう」

という声もあれば、

「大規模、小規模問わず、多くの会社の求人を載せて求職者が選べる状況にしたい」
「広告宣伝で認知度を高め、他社に相談に行く前にうちの会社にまずは来てもらえるようになりたい」

という声もあり、私たちはみんなでアイディアを出し合いました。

時に意見がぶつかることもありましたが、全員が「中途採用市場をさらに活性化させ、事業部を大きくする」というビジョンのもとに一致団結していました。

異動前は自分の営業数字をいかにあげるかを考えていた私自身も、異動後は、求職者、求人企業が笑顔で握手している、「いい会社を紹介してくれてありがとう」「いい人を紹介してくれてありがとう」と、両者から言われている、そんなイメージを思い浮かべながら日々仕事をするようになりました。

その部下はどんなビジョンを持っているのでしょうか?

先日、あるメーカーの部長をコーチしたときのことです。

「部下にはもっと楽しく働いてほしいんだ。そのためには、自分からこうしたいという提案をもっとあげてもらいたい。そのために彼にはもっと勉強してほしい。」

「もっともっと」とたくさんの要望が出てきました。

そこで私は尋ねました。

「その部下はどんなビジョンを持っているのでしょうか?」

「ビジョン・・・」

黙ってしばらく考えた後で、そのリーダーから、

「今の状態からのレベルアップについては話したことがあるけれど、どこに行きたいかは聞いたことがなかったな」

という言葉が聞こえてきました。

これは、多くのリーダーが陥りやすいことではないかと思います。部下がどこに行きたいかを聞かずに、自分の理想像を押しつけている。「こうなってほしい」という期待を伝えることは、決して悪いことではありません。しかし、その先にどんな未来が待っているのかを一緒に考える機会があると、部下は受け身にならず、より自発的に「自分のビジョンに向かって何をするか」という思考になってくるのではないでしょうか。

みんなでビジョンを描く

リーダーのビジョンを、リーダーだけのものではなく、メンバー全員のビジョンに昇華させること。それはリーダーの成功の条件と言えるのではないかと思います。

先述した前職の私のチームでは

「事業部を大きくして、マネジメントに携わりたい」
「事業部を大きくして、もっとたくさんのお客様のありがとうを聞きたい」
「事業部を大きくして、ボーナスをたくさんもらいたい」

事業部を大きくするという未来の先に、メンバーそれぞれの未来が描かれていました。私自身も、他のメンバーのビジョンを聞いて共感し、自分もその人のビジョンを応援したいと思いました。まさに、一人のビジョンから、みんなのビジョンになっていたのです。

あなたはどんなビジョンを部下とともに描いていますか?


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