コーチが、日々のコーチングの体験や、周囲の人との関わりを通じて学んだことや感じたことについて綴ったコラムです。
コーチングを始めるのに早すぎることはない
コピーしました コピーに失敗しましたみなさんは、「エグゼクティブコーチ」と聞くと、どのような人物をイメージするでしょうか。
私は、新卒第一号の社員として、2016年4月にコーチ・エィに入社しました。
「何のビジネス経験もない新卒に、コーチができるのだろうか?」と訝しく思う方もいるのではないかと思います。実際に、私自身も入社前にその点について悩みました。
しかし、コーチ・エィという会社が新卒を募集しているのは事実です。つまり「新卒であってもコーチになれる」ということだと理解しました。最終的には「やってみなければわからない」。このチャレンジは世の中で誰一人としてしたことがなく、自分がパイオニアになれる。そういうワクワクが不安を勝り、入社を決意しました。
いまでも不安を感じることはありますが、入社して2年が経ち、早くコーチングを始めてよかったと思う日々です。
学生時代に経験した「リーダーの孤独」
私は学生時代に、400名程のメンバーを抱えるダンスサークルの代表を務めました。その時の経験が、コーチという仕事を選んだ大きな理由の一つです。
3年生でサークルの代表に就任した私は「できるだけ全員の意見を取り入れた組織運営をしよう」と決めました。しかし、全員の意見を聞こうとするあまり、決断を下せない状態になっていきます。
「柴田はどうしたいのか教えてくれ」
「もういいから決めてくれ」
という声がメンバーから聞こえてくるようになり、サークル内にピリピリしたムードが漂い始めました。そのときになって初めて、自分が明確なビジョンをもたずに組織運営を始めたことに気づきました。周囲の意見を取り入れることと、自分が「こうしたい」という想いをもつことは矛盾しません。しかし前者に重きを置くばかりに、後者はすっかり置き去りになっていたのでした。
周囲の意見を聞いたとしても、最終的な意思決定はリーダーである自分の責任です。そのことに気づいたとき、「リーダーとはなんて孤独なんだろう」と思いました。もちろん周囲のメンバーはいろいろな面で自分のことをサポートしてくれます。しかし、最後の判断は自分。責任をとるのも自分。みんな、リーダーに「なんとかしてほしい」と思っている。ふとした瞬間に、その重圧を感じたものです。
どうすればいいのかわからなくなり、リーダーシップ関連の本を何冊も読みました。「コーチング」に初めて出会ったのもその時です。
リーダーによって組織は変わる
大学時代に、もう一つ印象的な体験があります。大学4年間にわたりアルバイトをしていた衣料品の小売店で、スタッフも売っているものも同じなのに、店長が変わったことで店の雰囲気やスタッフのモチベーションなどがガラッと変わったことがありました。
いま振り返ってみると、二人の店長の違いは本当に些細なことです。自分に興味をもって質問してくれる、ちょっとした声掛けをしてくれる、言うべきことをしっかり伝えてくれる、効果的な伝え方を考えてくれる。そうしたリーダーの振舞いが、私自身はもちろん、組織全体のモチベーションを上げるという体験をしました。
頭から離れなくなった命題
この2つのできごとを通して、リーダーの影響力の大きさを実感しました。リーダーのスタンスやあり方、ちょっとした言動や振舞いは、メンバーの考え方や行動に大きく影響します。そして、組織の規模に関係なくリーダーとメンバーはお互いに影響し合っているということも肌で感じました。
就職活動中にこのような経験を振り返り、学生であってもこのような「リーダーシップ」にまつわる問題に直面するのだから、企業のリーダーが日常的に直面する問題は比べ物にならないくらい大変だろうと思いました。そして、「そんなリーダーたちをサポートしたい」という気持ちが芽生え、その想いから、最終的にコーチという仕事を選びました。
ビジネス経験がないとコーチングはできないのか?
「ビジネス経験がないからできない」
「その人の仕事のことは知らないからコーチできない」
こうした言葉をよく耳にしますが、決してそんなことはないと思います。
もちろんビジネス経験は大きな財産です。しかし、コーチという仕事にとっては経験がないこともメリットになり得ます。実際にさまざまな分野でキャリアを積んで中途で入社した社員に聞くと、「課題解決」「問題解決」の思考の癖がついていて、それがクライアントの話を純粋に聞くための障害になることがあると言います。目の前の課題を解決することに気を取られ、解決策を提示したくなるだけではなく、相手にとっての「本当の課題は何か」ということを見失いがちになるというのです。
いま、コーチ・エィには、私を含めて9名の新卒入社のコーチがいます。今年の春に入社した後輩から、鋭く、考えさせられる問いが飛んでくることがあります。そのような「問い」は自分の中に残り、モヤモヤ考え続けるうちに、新しい気づきや行動につながります。先日のトレーニングでも、コーチングのロールプレイで、入社したばかりの新卒が20年以上のコーチング経験をもつ先輩社員に対して「やりたいと言いながら、やれていないのはなぜか」という本質に迫る質問を投げかけていました。
最後に
「コーチング」は一つの専門領域であり、そのエキスパートになることと、ビジネスのエキスパートになることは意味が違うということを、入社して2年を経て実感できるようになってきました。エグゼクティブコーチになるためには、「コーチング」を身につけるのに早すぎることはないと確信しています。そして、そのことを少しでも多くの人に伝えていきたいと思っています。
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