コーチングカフェ

コーチが、日々のコーチングの体験や、周囲の人との関わりを通じて学んだことや感じたことについて綴ったコラムです。


「完璧」ってなに?

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私にとっての「完璧」

「『完璧』ってなに?」

突然、友人に聞かれました。彼女が食器を洗ってくれた後の、水が飛び散った状態を見て、「最後まで完璧にやってほしいな」と何気なくつぶやいた時のことです。

ハッとしました。

家事を「完璧」に。
仕事を「完璧」に。

私のセルフトークには「完璧にする」という言葉がありました。自分が完璧を求めがちなことも、なんとなく自覚していました。

私の「完璧」はいつ生まれたのか?

私の「完璧」ってなんだろう? 私は、いつから「完璧」を意識しているのだろう?

友人から聞かれて、問いが頭の中で回り始めました。「完璧」を辞書で引くと、「欠点や足りないところがなく立派なこと」とありますが、私の中の「完璧」とは次のようなものです。

  • 家の中は、汚れがない状態、整理整頓されている状態
  • 仕事においては、自分のタスクを棚卸できている状態
  • やるべきことが可視化できている状態
  • 身なりは、ヘアがセットされ、フルメイクの状態

いつからそう思うようになったのかははっきりしませんが、長女だった私は小さい頃から、両親や親戚をはじめ近所の人たちから「お姉ちゃんだからきちんとしなさい」「あなたはなんでもできて立派ね」としょっちゅう言われていました。そんな中で「ちゃんとする」「きちんとする」ことは大事なことであり、「自分はそうあって当然」「そうでなければいけない」と思うようになったのかもしれません。それ以降、さまざまな場面で私は「私の完璧」を意識してきました。そしていつしか、「私の完璧」を、人や物事を判断する物差しにもしてきたのでしょう。

「私の完璧」を手放してみたら

友人は、続けて私に聞きました。

「そんなに完璧をめざしていたら、疲れない?」

いろいろなことが頭をめぐりました。

私には「私の完璧」によって、手にしているものがありました。それは「達成感」や「満足感」、それに「周囲からの称賛」といったものです。

「疲れる」ことなんて、あっただろうか? 最初は疑問でした。

しかしよく考えてみると、周囲から「熊谷さんはいつも苦しそう、大変そう」と言われることが多いかもしれません。もしかしたら、「私の完璧」を目指すあまり、一方で失っているものもあるのかもしれないと考え始めました。

そこで、少し「私の完璧」を手放してみようと考えました。まずは、仕事での「自分の完璧」のレベルを下げてみたのです。「私の完璧」レベルで「10」になるまでは周囲に共有できないと思っていたものを、「7」のレベルで共有するようにしました。そうしたところ、より早く、大きな成果を生み出すことができるようになっていきました。

それまでは、自分で「10」のレベルだと思って共有しても、周囲からのフィードバックがあり、修正を求められることがよくありました。それまでの「10」は私基準の「10」であり、みんなの「10」ではありませんでした。それが「7」のレベルで提出することで、周囲の力を借りながら、みんなで共有する「10」のレベルに仕上げることができるようになったのだと思います。

いま振り返ってみると、「私の完璧」に固執することで失っていたものは、「余裕」や「新しいことへのチャレンジ」「周囲への配慮」「新たな可能性」といったものだったかもしれません。

クライアントの「きちんとした」状態

「完璧」と似た言葉に「ちゃんと」「きちんと」があります。コーチングのクライアントAさんが、ある時

「部下とのコーチングがきちんとできていないので、部下が目標に向けて動けていない」

と言い出しました。その方は、部下と定期的にセッションを重ねていたので、「きちんとできない」という言葉が私には意外に聞こえました。そこで、聞きました。

「Aさんの『きちんとやれている』とは、どんな状態のことですか?」

Aさんの答えは、

「コーチングフロー通りに、自分の用意した質問ができている状態です」

というものでした。振り返ってみると、確かにAさんは「マニュアル通りにできた」「学んだ通りにやれた」とよく口にします。フロー通り、マニュアル通りにやることが「きちんとした状態」で、部下とのコーチングでもAさんなりの「きちんと」に重きをおいていたのです。

続けて

「Aさんが『きちんと』を大事にすることで得ていること、失っていることは何ですか?」

と聞くと、Aさんは少し考えて、

「得ていることは自分の満足。失っているものは...部下の話を聞けていないことですかね...」

という答えました。

自分が「きちんと」という言葉につけている定義、 そしてそれによって失っているものに気づいてから、Aさんは部下とのコーチングでも、仕事の場面でも「相手の言葉」にアンテナを立てるようになったそうです。相手が使う言葉の定義を聞き、イメージをすり合わせるようになりました。そうすることで、それぞれの目指していることが互いに明確になり、認識が一致することで、チームとしてもより早く成果を出せるようになったそうです。

言葉から大事なものを紐解く

人によって言葉にこめる「状態」も「レベル感」「定義」は様々です。

私は、「完璧」という言葉を起点に、自分を見つめ直すことができました。価値観、欲求、得ていること、失っていることが明確になりました。その体験は、「相手の言葉」の定義を聞くという行動に結びつきました。そしてそれは、自分自身の捉え方や行動の選択肢を増やすことにつながりました。

人との関わり方にも変化が起こっています。「この人、苦手だな」とか「イヤなことを言われたな」と思ったときに、言葉を起点に「自分の定義」を振り返り、「この人の定義はなんだろう? レベル感はどれくらいなのだろう?」と一呼吸おくことで、反射的に他者を判断せず、理解することを意識できてきたように思います。

あなたがふだんよく使う言葉はどんな言葉ですか? そこから、あなたの価値観が見えてくるかもしれません。


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