コーチングカフェ

コーチが、日々のコーチングの体験や、周囲の人との関わりを通じて学んだことや感じたことについて綴ったコラムです。


一緒に考える能力

一緒に考える能力
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私は、現在、コーチ・エィでマネージャーをしています(2021年12月当時)。数か月前、私のマネージャーとしての現状を把握するために、自分で28項目のアセスメントを作り、業務で関わりのある20人に回答してもらいました。評価は5段階です(圧倒的に当てはまる/当てはまる/少し当てはまる/あまり当てはまらない/当てはまらない/分からない)。

その中で、興味深い結果が出た項目があります。「一人で考えず、一緒に考えている」と「一緒に考える能力を身につけている」の2つです。この2つは「一緒に考える」という実際の行動と、そのための能力を聞いている項目です。

設問: 一人で考えず、一緒に考えている

回答:圧倒的に当てはまる 16%
   当てはまる 68%
   少し当てはまる 16%

設問:一緒に考える能力を身につけている

回答:圧倒的に当てはまる 16%
   当てはまる 32%
   少し当てはまる 26%
   あまり当てはまらない 26%

この結果を見ると、私自身の一緒に考える「行為」と「能力」について、周囲からの評価に差があることがわかります。つまり、「行動はしているが、能力が低い」と思われているということです。

具体的にどのような点でそう思うのか、もっと詳しく知りたいと思った私は、「行動に高く、能力に低い」点をつけた人に聞きに行きました。その人からもらったのは次のようなフィードバックです。

「大塚さんは、相手のためにたくさん情報共有してくれるし、一緒に考えてもくれる。相談もしてくれる。でも、最後まで一緒にいてくれる感じがしない。途中で、いなくなっちゃう感じがする」

それを聞いて、自分なりにわかるような気がしました。

自分の考え方が行動に表れる

「一緒に考える能力」には、「考えて創造するプロセスを最後まで共にする」という意味がありそうです。

自分を振り返ってみると、私の中には「一緒に考えはするけれど、そこから何を見出すかは人それぞれ自由であり、それぞれの責任だ」という考えがあります。そこで「考えて創造するプロセスを最後まで共にする」と考えると煩わしさが先に立つのです。

ちょうどそんなタイミングで、上司からも私のマネジメントについてフィードバックをもらう機会がありました。

「大塚さんが考えるスピードで、部下は考えられないかもしれない。彼らが自ら考え続ける動機にアクセスし、彼らのスピードで考えるのを待ってあげてもいいのでは」

そのフィードバックを聞いて、自分のマネジメントに「考えて創造するプロセスを最後まで共にする」ことへの煩わしさが影響していることを自覚しました。相手を「待つ」よりも、前進すること、前進させることを常に優先している自分がいることに気づいたのです。

もしかしたらコーチングにおいても、同じようなテーマが表出している可能性があります。

「一緒に考える能力」について、ここで立ち止まってみることは、私自身のマネージャーとしての成長だけでなく、コーチとしての成長、そしてクライアントや部下への貢献にとても重要なことだと改めて思いました。

私にとっての「一緒に考える能力」

では、「一緒に考える能力」とは、いったい何なのでしょう。どういう能力を身につけることができれば、「一緒に考える」ことができるようになるのでしょうか。

ヒントを探す思いで、国際コーチング連盟の規定するコーチのコア・コンピテンシーとPCCマーカー(コア・コンピテンシーを具体的な行動レベルにしたもの)を読んでみると、次の項目に目が留まりました。

コンピテンシー7:気づきを引き起こす

7.6:コーチは、クライアントが考えたり感じたり振り返ったりしやすいペースで、一問ずつ、明快に、単刀直入に、主にオープンクエスチョンで質問している。

この項目に目が留まったのは、コーチングのトレーニングで、何度か同じ趣旨のフィードバックをもらった経験からです。

それは「コーチとして、クライアントの話した様々な情報をつなげて要約する能力は高いが、逆に、クライアント自身が自ら考えて要約する機会を奪っている可能性がある」というものです。

確かに、クライアントからもらうフィードバックに、コーチング自体への評価は高いものの、クライアント自身の自己変革への評価が低いことがときどきあります。これはもしかしたら、私が前進を優先するあまり、クライアントが自ら考え、行動を起こしたという実感が薄いからなのかもしれないと思い当たったからです。

このことをマネジメントに置き換えたときに浮かぶのは「部下が成果を上げるプロセスで、自分の能力が上がっているという実感をもてているか」という問いです。

いまは、自ら考え、気づき、行動を起こして成果を手にするという喜びを、部下に充分に味わってもらうためにも、私自身のペースではなく、部下のペースで向き合ってみたいと思っています。


日本コーチ協会発行のメールマガジン『JCAコーチングニュース』より、許可を得て転載)


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