コーチング研究所によるさまざまな調査の結果や、データの分析結果をご紹介します。
データに見る、海外赴任を成功に導くポイント
2016年08月23日
「アグレッシブな姿勢」「ビジョンの発信」「ネットワーク構築」がカギ
外務省の調べでは、民間企業の派遣で海外に駐在している日本人は26.7万人にのぼります(※)。最も多い赴任先は中国で7.2万人。これほど多くの海外赴任者がいるわけですから、当然ながら成功する赴任もあれば、失敗する赴任もあります。どうすれば赴任の成功率を高められるのでしょうか。
中国に赴任している日本人駐在員(30社90人)が受けたリーダーシップ・アセスメントの結果があります。「対象者は、現地会社(赴任先)のビジネス拡大に大きく貢献している」という設問に対し、部下の評価が高かった人(上位層)と低かった人(下位層)で、リーダーとしての行動にどのような違いがあるのかを調べました。
まずは上位層と下位層とで、差が小さかった項目を見てみます。差が小さいということは、その行動は赴任の成果に比較的影響しない、と考えられます。
リーダーの行動 | 平均値 | 差分 | |
---|---|---|---|
上位層 (n=30) |
下位層 (n=30) |
||
部下に挨拶をしたり、声をかけたりしている | 6.3 | 5.7 | 0.5 |
部下に話しかけられたら手を止めて話を聞いている | 6.2 | 5.5 | 0.7 |
部下の話を途中でさえぎったり、否定することなく最後まで聞いている | 6.2 | 5.4 | 0.7 |
※上位層(部下評価の高い上位30人の駐在員)、下位層(部下評価の低い下位30人の駐在員)
7段階評価(1.全くあてはまらないー7.とてもよくあてはまる)
コーチング研究所調査 2016年
上位層と下位層で差が小さかったトップ3項目は、日常的なコミュニケーションに関するものでした。異文化同士での考え方や価値観のすり合せには、日常的なコミュニケーションが不可欠だと考えられます。これらのコミュニケーション要素は下位層でも評価が高いことから、駐在員として「できて当たり前」の要素と言えるでしょう。
一方、上位層と下位層で、差が大きかった項目は表2の通りです。
リーダーの行動 | 平均値 | 差分 | |
---|---|---|---|
上位層 (n=30) |
下位層 (n=30) |
||
従来のやり方にこだわらず、新しいやり方を取り入れている | 6.1 | 4.7 | 1.4 |
自らが管轄する組織のビジョンを魅力的に語っている | 5.7 | 4.4 | 1.4 |
社内外に情報源となる人的ネットワークを持っている | 6.2 | 4.9 | 1.3 |
※上位層(部下評価の高い上位30人の駐在員)、下位層(部下評価の低い下位30人の駐在員)
7段階評価(1.全くあてはまらないー7.とてもよくあてはまる)
コーチング研究所調査 2016年
赴任の成果に影響を与えるのは、「新しいことに取り組むアグレッシブさ」や「自らビジョンを描き、発信する力」、そして「社内外にネットワークを構築する力」でした。異文化環境でなくても重要な要素と考えられますが、海外ではさらに重要度が増すということではないでしょうか。
これまでのやり方が必ずしも通用しない異文化の環境で、苦労している駐在員の方はたくさんいると思います。是非一度、この3つのポイント「アグレッシブな姿勢」「ビジョンの発信」「ネットワーク構築」を、ご自身で振り返っていただければと思います。
また、海外に駐在員を送り出す人事の人たちには、赴任者の育成や人材開発という点から3つのポイントを参考にしていただきたいと思います。
※ 外務省『海外在留邦人数調査統計』(平成28年要約版)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/page22_000043.html
調査概要
調査対象:中国に赴任している日本人駐在員30社90人の部下775人
調査期間:2012年12月~2016年6月
調査方法:ウェブアンケートへ回答
調査内容:駐在員向けリーダーシップ・アセスメント
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