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変革期を迎えた企業のリーダーに求められるもの

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「質問」は、双方向のコミュニケーションを起こし、新しい発見を生む]

「リーダーシップをとるために何をすべきか」。多くのリーダーがもつ悩みの1つです。

例えば、成長期の企業の多くは、企業の方針へ社員のベクトルを合わせることに専心しています。同じ考え方を共有するために、上司は部下を叱咤激励し鼓舞する。上司は部下に「アドバイス」をして既存の成功パターンを継承する。これが、成長期のリーダーシップの特徴のひとつと言えると思います。

一方、第2創業期、第3創業期のような大きな変革期を迎えた企業の多くは、「顧客のニーズを再発掘し、サービスの価値を再定義し、市場を創造する」ために、成長期とは異なるリーダーシップを必要としています。変革に向けて新しい発想を取り入れて柔軟に舵をとること。わたしたちは、ここで求められているリーダーシップを実現する手法として「質問」があると考えています。

そこで、今回は「質問」という手法を使ったリーダーシップの有効性を明らかにするために、質問を多くする「質問型リーダー」とアドバイスを多くする「アドバイス型リーダー」について比較分析を行いました。

図1.「質問」をしているリーダーと「アドバイス」をしているリーダーの割合 (リーダーの自己回答)
図1.「質問」をしているリーダーと、「アドバイス」をしているリーダーの割合 (リーダーの自己回答)

※ 7段階評価のスコアを基準に、「YES(6,7を選択)」「NO(1-4を選択)」を分類
※ 7段階評価(1.全くあてはまらない-7.とてもよくあてはまる)
n=227
コーチング研究所調査2016年

「質問型リーダー」と「アドバイス型リーダー」は、ほぼ同じ割合でいることがわかります(図1)。

次に、「質問型リーダー」と「アドバイス型リーダー」で、リーダー自身の状態の認識差にどのような違いがあるのかを調べました。

表1. 「質問型リーダー」と「アドバイス型リーダー」の "自身の状態"の認識差 上位5項目
自身の状態 平均値 差分
質問型
リーダー
(n=72)
アドバイス型
リーダー
(n=76)
1 情報共有 私は、自分が気づいた課題や役立つ情報をいつも周囲に話している 6.0 5.0 1.1
2 新しい視点 私は、固定観念にとらわれず、新しい視点を取り入れている 6.0 5.0 1.0
3 変化適応力 私は、仕事上の不測の事態・変化に素早く対応している 6.1 5.0 1.0
4 ビジョン構築 私は、自分の将来の目標やビジョンを持っている 6.1 5.1 1.0
5 積極的な提案 私は、自分のアイデアを上司や同僚に積極的に提案している 6.1 5.1 1.0

(小数点第2位を四捨五入)
※「質問型リーダー」「アドバイス型リーダー」の分類定義は、図1を参照
7段階評価(1.全くあてはまらない-7.とてもよくあてはまる)
n=227
コーチング研究所調査2016年

「アドバイス型リーダー」より「質問型リーダー」の方が、「固定観念にとらわれず、新しい視点を取り入れている」「自分のアイデアを上司や同僚に積極的に提案している」など、自ら課題を発見し積極的に行動する創造的なリーダー像がうかがえます(表1)。

表2は、2つのリーダーの部下や同僚の認識の違いを比較した結果です。

表2. 「質問型リーダーの部下や同僚」と「アドバイス型リーダーの部下や同僚」の "自身の状態"の認識差 上位5項目
自身の状態 平均値 差分
質問型
リーダーの
部下や同僚
(n=311)
アドバイス型
リーダーの
部下や同僚
(n=327)
1 ビジョン構築 私は、自分の将来の目標やビジョンを持っている 5.6 5.2 0.4
2 目標設定 私は、自分から積極的に目標を立てて挑戦している 5.5 5.2 0.4
3 積極的な関係構築 私は、目標を達成するために、積極的に必要な人物と関わりをつくっている 5.5 5.2 0.3
4 情報共有 私は、自分が気づいた課題や役立つ情報をいつも周囲に話している 5.4 5.1 0.3
5 積極的な提案 私は、自分のアイデアを上司や同僚に積極的に提案している 5.4 5.0 0.3

(小数点第2位を四捨五入)
※「質問型リーダー」「アドバイス型リーダー」の分類定義は、図1を参照
7段階評価(1.全くあてはまらない-7.とてもよくあてはまる)
n=638
コーチング研究所調査2016年

「質問型リーダー」の部下や同僚は、「将来の目標やビジョンを持っている」「目標を達成するために、積極的に必要な人物と関わりをつくっている」など、主体的に行動し人間関係を築く姿勢が見られます。一方、「アドバイス型リーダー」の部下や同僚は、前者と比較して全体的に消極的な様子がうかがえます(表2)。

「質問型リーダー」と「アドバイス型リーダー」で、表1,表2のような違いがあるのは、なぜでしょうか。あらためて、「質問」の有効性について考えたいと思います。

リーダーが「質問」する効果の1つは、表1の結果より、リーダーが部下や同僚のアイデアを引き出すことで、リーダー自身も新しい視点や気づきを得られることだと考えられます。「質問」には、双方に創造性や独創性を生む力があると言えるのではないでしょうか。

そして、もう1つの効果は、表2の結果より、リーダーが部下や同僚の潜在的な課題を引き出し解決手段を一緒に考えることで、部下や同僚が自ら考え、主体的になることだと考えられます。おそらく、リーダーが「アドバイス」を多くすると、リーダーの意見を優先する状態が続き、結果的に部下や同僚は消極的になり受け身で仕事をする姿勢になるのではないでしょうか。

今回の結果より、変革期を迎えた企業には、「上司→部下」という一方的な「アドバイス」を多くする構図から、「上司↔部下」という「質問」を利用した双方向のコミュニケーションをとるリーダーシップへ移行することが必要だと推察できます。

リーダーは柔軟性をもち、双方向のコミュニケーションをとおして新しい発見を得る。このリーダーシップを実現する手法のひとつに「質問」があると言えるでしょう。

調査概要

調査対象:企業に所属するリーダー 227名、リーダーの部下や同僚 638名
調査期間:2015年5月~2016年3月
調査方法:ウェブアンケートへの回答
調査内容:D-meter「個人の状態(10項目)」


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