マネジメントに変化を起こしたいなら、スキルを学ぶよりまずは部下と話す時間をつくること。毎回じっくりと話す必要はなく、日常の必要な場面で短く話すことのつみ重ねが、やがて部下やあなたのマネジメントに変化をもたらします。その最初のステップや「1on1ミーティング」にも活用できるヒントがここに!
事例で学ぶ 1on1(8) 部下の「好き」にアクセスする
2020年03月31日
イギリスのビジネス心理学研究所OPPの調査によると、84%の従業員は「自分にはまだ発揮できていない才能がある」と思っているそうです。そのうえ、そのうちの74%は「才能を発揮する手段がない」と答えています。
カー用品の販売店の店長は、1年前の4月に着任したばかりにもかかわらず、それ以降、急速に売り上げを伸ばし、地域ナンバーワンとなる勢いです。前の店でもその地域ナンバーワンの売り上げを上げました。
「君はなにをするのが好きなの?」
「なにが得意?」
というのが口ぐせで、顔を合わせるたびに聞いているそうです。とくに、ピットにいるメカニックのサービス強化が差をつくる、という考えで、販売部門より彼らと多くコミュニケーションをとっています。
さて、彼が新しく移った店のピットには、あまり人とコミュニケーションを交わさない若いメカニックがいて、お客さまへも愛想がありませんでした。彼に「なにが好きなの?」と聞いても「さあ?」とか「別に」と言うだけ。
この店長は、ならば好きなことを見つけてやろう、ということで、彼をよく観察しているうちに、彼が修理した車のドアをなんどもうれしそうに閉めているのを見つけて、声をかけました。
「ドアの音、好きか?」
「はい」
「どの車がいい?」
「やっぱBMW」
「ベンツはどう?」
「ベンツは“ボムッ”って感じです」
「国産車では、どれがいちばんいい音がする?」
「(フェアレディ)Z、いいですよ」
といった会話がはじまりで、彼とよく話すようになりました。
それ以来、そのメカニックはお客様との間でも「このドアの音、最高ですね」とか「ホイール、いいのつけていますね」とか「このオーディオ、いい音出すんじゃないんですか?」といった会話をするようになり、リピーターも増えているそうです。
とにかくまずスタッフの好きなことにアクセスし、そのうちスタッフがお客さまの好きなこと・大切にしていることにアクセスするような会話をするように、というのがこの店長のモットーなのです。
普通のマネージャーは、最初から自分の用意した答えを部下に与えてしまうものです。
一方、部下を伸ばし、活かす上司は、最初に部下のことを知り、理解し、それからコーチする、この手順を崩しません。
(『「小さなチームは組織を変える―ネイティブ・コーチ10の法則」』伊藤守著より抜粋編集)
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