マネジメントに変化を起こしたいなら、スキルを学ぶよりまずは部下と話す時間をつくること。毎回じっくりと話す必要はなく、日常の必要な場面で短く話すことのつみ重ねが、やがて部下やあなたのマネジメントに変化をもたらします。その最初のステップや「1on1ミーティング」にも活用できるヒントがここに!
事例で学ぶ 1on1(20) 手柄は部下に
2020年07月28日
上司は、部下を前にして話すと、自慢話に終始しがちです。確かに部下に信頼され、ほめられるのは悪い気分ではありません。しかし、マネージャーの仕事は部下の育成にあります。自らを超えていく部下を育成することにあります。
量販店のある店長は、毎日部下からの提案を求めています。
わざわざ会議を開くのではなく、店の中を歩いている途中で、店の売り上げ、改善のためのアイデアを聞いてまわります。
部下のほとんどは、パートタイムやアルバイトです。店長は彼らからのアイデアのうち、その場で使えるものは、その場で実行に移します。また、本社決裁の必要なものは、かならず本社での会議にかけ、その結果を、ひとりひとりに報告します。中には画期的なアイデアもあり、売り上げを10パーセント以上、上げるようなものもありました。その店長は、本社の会議の席で、そのアイデアは誰のものか、部下の名前をはっきりさせます。
自分を売り込む前に、部下の手柄を、きちんと報告します。そして、その結果を、直接部下に伝えます。その店では、店長が求めなくても、提案やアイデアが部下から持ち込まれます。
「あなたの手柄はどうなりますか?」
と、聞いたところ、彼はこう答えました。
「部下の成功が私の手柄ですから」
往々にして、上司は自分が優れていることを部下に認めさせることに腐心しています。しかし部下を育て活かすことに長けている上司は、部下に自信を持たせ、部下のモチベーションを高めることに成功しています。彼らは部下に意思決定させ、実行させ、成功体験をたくさん積ませます。そして、手柄を部下に立てさせます。
(『「小さなチームは組織を変える―ネイティブ・コーチ10の法則」』伊藤守著より抜粋編集)
●提案のサイクルをつくる
まずはあなたから部下に提案を聞き、それを検討し、その結果を伝えるというサイクルを取り入れてみましょう。
そのとき、いくつか気を付けるべきことがあります。
それは、提案を聞くときには、すべてに応えられるわけではないことをあらかじめ伝えておくこと。
そして、実現できた時も、実現できなかったときも、そのことを結果としてきちんと伝えることです。
サイクルを回し続けるには、信頼関係を築き続けることが重要です。
このサイクルが定着することで、部下は効力感や自信、思考を高めることができます。
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