マネジメントに使えるコーチング

マネジメントに変化を起こしたいなら、スキルを学ぶよりまずは部下と話す時間をつくること。毎回じっくりと話す必要はなく、日常の必要な場面で短く話すことのつみ重ねが、やがて部下やあなたのマネジメントに変化をもたらします。その最初のステップや「1on1ミーティング」にも活用できるヒントがここに!


事例で学ぶ 1on1(34)バットの握りかたさえ教えなかったコーチ

事例で学ぶ 1on1(34)バットの握りかたさえ教えなかったコーチ
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あるとき、ロシア人のグループに野球を教えたアメリカ人のコーチがいました。そのロシア人たちは、それまでまったく野球などしたことがありません。しかし、コーチは彼らに、スリーストライクでバッターが交代すること、スリーアウトになったらチェンジ、ボールを打ったら一塁に向かって走る、などといった基本的なルールだけ教えると、彼ら18人を、2つのチームに分けて、すぐ試合をはじめさせました。

当然のことながらほとんど試合になりません。バットの握りかたにしても、みんな右手と左手を離し、バントをするときのようなバットの握りかたをしています。もちろんその握りかたではバットを振ることはできませんから、ボールにも当たりません。コーチは、バットの握りかた、ボールの投げかた、ボールをキャッチする方法など、基本というものを教えるものです。しかし、そのコーチはバットの持ちかたを注意したり、直したりはしません。椅子に座って、ゲームを観戦するだけです。

ところが、試合を続けるうちに偶然、右手と左手をつけてバットを握る選手が現れます。するとコーチは、その選手のところに飛んでいき、「That's it ! それだよ!」とバットを握る選手を指差しました。できた瞬間をとらえて、「それだよ!」と「アクノレッジ」したのです。

すると次の打者からは、他のメンバーも全員、同じように両手をつけてバットを握り、スイングするようになりました。教えたり注意するのではなく、よく観察していて、もしかしたら本人さえも気がついていない「動き」を伝える。それがアクノレッジメント(認めること、相手を受け入れる具体的行為)です。それはほめているのではなく、事実を事実として伝える行為です。

一般に上司はよくその反対をやってしまうものです。

「ほら、またやった!」
「だから言わんこっちゃない!」

部下の失敗を観察してそれを注意することが多くないでしょうか。

一方、アクノレッジメントは、うまくいっていること、これからうまくいかせようとしていることを部下がやったとき、そのことを伝えます。

  • 約束の時間を守ったとき
  • ルーティンの仕事に変化をもたらしたとき
  • 小さな創意工夫
  • 他人に対する思いやり
  • 気の利いた行動
  • 動きのよさ

アクノレッジメントの教育効果は絶大です。アクノレッジメントには、その本人だけではなく、まわりにいるすべてのチームメンバーに一瞬にして、学習させてしまう力があります。

部下を活かし育てる上司は、漠然と部下を観察しているわけではありません。彼らは、部下の、ポジティブインテンション(前向きな意図)に注意を向け、それをタイミングよくアクノレッジします。

(『「小さなチームは組織を変える―ネイティブ・コーチ10の法則」』伊藤守著より抜粋編集)

■ TIPS for 「1on1ミーティング」

●アクノレッジする。そのために日頃から観察する

1on1や部下とのコミュニケーションに、アクレのレッジメントを取り入れましょう。
そのためには、日頃から部下をよく観察していることが必要です。

  • あなたは今、部下がどんな状態か理解していますか?
  • あなたは今、部下がどこを目指しているか理解していますか?

その理解なしには、部下の変化に気づくことはできません。


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