米国コーチング研究所レポート

ハーバード大学医学大学院の外郭団体、「コーチング研究所/Institute of Coaching (IOC)」所蔵のコーチングに関する論文やリサーチ・レポート、ブログなどをご紹介します。


優れたインフルエンサーがとっている5つの行動(「コーチングと影響力」第二部)

【原文】Influence Is Not A Dirty Word: How To Start A Following Without Manipulation
優れたインフルエンサーがとっている5つの行動(「コーチングと影響力」第二部)
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「コーチングと影響力」シリーズ第二部

影響力に関する誤解

「影響下にある」「影響力がある」「彼女は悪い影響を及ぼしている」。誰もが影響力を持ちたいと思っているが、誰もそれを認めたがらない。「影響」という言葉は、「相手を操る」という否定的な意味合いを含んでいるからだ。影響を与えることを悪いことと思わない人でさえ、「一方が勝ち、一方が負ける」といった対立的な意味合いがあると感じている。

実際のところ、世界中どこであろうと、影響を与えることは仕事を遂行するうえで欠かせないことである。威圧することは、それができるのであれば短期的には有効な方法である。しかし、長期的な変化を求めるならば、隷属的な関係ではなく、フォロワーシップ(リーダーを自発的に支えていく姿勢)を生み出すことが重要である。

一緒に仕事をしたいと思える人

サラは周囲の変化を促す存在だ。完璧な仕立てのスーツに身を包み、奇抜な靴を履いている。サラが出すアイデアは常に革新的であり、そのアイデアを実現するための戦略も斬新だ。本物のフォロワーシップを生み出せる優れたインフルエンサーであり、社内では高い潜在能力を持つ人物として評価されている。彼女は優れた人材を引きつける磁石のような存在である。誰もがサラのチームに加わり、彼女が常に主導する大規模な変革プロジェクトに参加したいと望んでいる。しかし、それはプロジェクトが人気であるという理由だけではない。サラが何をしていても、みな一緒に仕事をしたいと言うのである。

サラの同僚のデイブは次のように言う。「彼女が行くところなら、行き先がどこか分からなくても、どこにでもついていきますよ。」

サラが成功している理由は、影響を与えることを1つのプロセスとして考えているからであり、自分の試みの成功や失敗について常に詳しく検討しているからである。相手に働きかけるときは、成功または失敗した理由を詳細に把握する。これは私の「影響力」に関する調査とも重なる点であるが、他人から自発的な支援を得るためには、注意しなければならない重要な要因が5つあることを、サラは直観的に理解している。

支持されるインフルエンサーの行動とは

1. 自分の力を認識する

サラのような経験豊富なインフルエンサーは、最も効果的なやり方を選択できるように、相手との関係に応じて、自分自身の個人の力と地位の力を見極めている。

同僚と比べて自分がどれだけ個人の力と地位の力を持っているか、いないか、冷静に評価する。

自分にそれだけの力があることを同僚が認識しているかどうかを評価する(未熟なインフルエンサーは相手の目に映る自分の力を過大評価しがちである)。

最後に、フォロワーシップを生み出すために、さらに大きな力を使う必要があるか、既に十分な力を持っているかどうかを、他の影響要因も踏まえたうえで分析する。

2. 過去の経験を振り返る

サラはこれまでの経験を、日記を読み返すように振り返り、過去の成功と失敗を考慮したうえで、今後の状況に自分の戦略をどのように適合させる必要があるか検討している。

3. 自分の依頼が相手に与える影響を検討する

サラは同僚の視点で「依頼」を検討している。自分が相手に依頼していることは、相手が積極的に行いたいと思うことだろうか。それとも困難だとか、重要なことだとか、無理だと思われることだろうか、という視点である。

依頼の種類によっては、感情への直訴などのソフトなアプローチを使ってコミットメントを得ることもあれば、威圧などのハードなアプローチをとり義務感を与えなければならない場合もある。各種のアプローチを使い、自分のチームへの依頼内容を常に調整している。

4. 結果を予想する

未熟なインフルエンサーは、自分の働きかけが成功するか失敗するか十分に考えることがない。別のアプローチを使うべきときでも、使いやすいアプローチをずっと使い続けてしまう。

経験豊富なインフルエンサーであるサラは、自分の働きかけが成功するだろうと感じたときは、失敗するかもしれないと思ったときよりも、ハードなアプローチを使うことが少ないという。そうすることで、成功に向けて着実に歩みを進められるようにしているのである。

5. 3つのアプローチを使い分ける

他者と会話するとき、私たちは常に3種類のアプローチをすべて使用して相手に働きかけている。そのアプローチとは、ソフトなアプローチ、ニュートラルなアプローチ、ハードなアプローチである。ニュートラルなアプローチとは、合理的説得である。サラのような経験豊富なインフルエンサーは、上記の重要な影響要因を評価したうえで、ソフトなアプローチとハードなアプローチを意識的に使い分けている。

たとえば、サラの個人の力が強い場合、つまり、過去の成功によって同僚の信頼を得ており、同僚に依頼している内容は重要であり、成功が予想できる場合は、うまく影響を与えるために、ハードなアプローチはあまり使わずに、ソフトなアプローチとニュートラルなアプローチをより多く使うことができる。未熟なインフルエンサーは、ごく少数の影響要因しか考慮しないため、適切なアプローチを組み合わせて使うことができない。

他人の立場で考える

影響力の強いインフルエンサーになるためには、サラのようになる必要があり、影響を与えることは他者を操ることとは違うことを理解しなければならない。むしろそれは、同僚との関係、自分と自分の力に対する相手の認識、相手に対する依頼の影響を十分に把握することである。

おそらく、最も難しいのは他者の視点から依頼を考えることだろう。私たちは、やる気や恐れや喜びを感じるものは、誰でも同じだと考えているからである。彼女の独特のスタイルを真似する人はいないかもしれないが、サラの本当の才能は、他人の立場で考えることができることである。

(Forbesに掲載された記事を許可を得て転載。)

【筆者について】

トレーシー・コシヴェラ(Tracy Cocivera)博士は、ナショナル・コーチング・プラクティス・リード (National Coaching Practice Lead) のヴァイス・プレジデントであり、グローバル人材企業、リー・ヘクト・ハリソン・ナイトブリッジ (Lee Hecht Harrison Knightsbridge) のマスターコーチ。

【翻訳】Hello, Coaching! 編集部
【原文】Influence Is Not A Dirty Word: How To Start A Following Without Manipulation
(2018年2月22日にIOC BLOGの IOCに掲載された記事の翻訳。IOCの許可を得て翻訳・掲載しています。)


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