米国コーチング研究所レポート

ハーバード大学医学大学院の外郭団体、「コーチング研究所/Institute of Coaching (IOC)」所蔵のコーチングに関する論文やリサーチ・レポート、ブログなどをご紹介します。


成長の壁を越えた先には

【原文】Hello. I am Your Growth Edge | by Margaret Moore
成長の壁を越えた先には
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ほとんどの人は、自分の仕事や生活をうまく回したいという願望を持っている。明確な意思、目的や、高い目標を持っている人もいる。自分が何をどのような理由で行っているか理解したうえで、それをうまくこなしている。To Doリストの課題を片付け、物事がうまくいったあとの余韻を感じながら気持ちよく一日を終えることができれば、ぐっすりと眠り、次の日を気分よく迎えられるだろう。

心が動揺するときこそが成長のチャンス

しかし、それは人生の一つの側面に過ぎない。物事がうまくいかないとき、心は動揺に満ちている。負のエネルギーが、最高のパフォーマンス、落ち着いた行動、活発な創造力、心からの感謝の妨げになることもある。会話がうまくいかなかったり、気が散ったり困惑したり、焦りや苛立ちを感じたり、自分や他人を疑ったりと、生活する中で心の動揺を感じることは、ごくあたりまえのことだ。仕事に集中しすぎて乗り継ぎに遅れたり、危険な選択をしたり、運動や健康的な食生活を諦めたり、落ち着くために深呼吸や短い瞑想をする機会を逃すことだってあるだろう。

だが、このような心の動揺にこそ、私たちが成長するチャンスがある。それは自分が気づいていない「ブラインド・スポット(盲点)」があることを教えてくれる。ブラインド・スポットは、成長するための知恵や知見をさえぎるものだ。知恵や知見が得られたということは、自分が成長し、それと同時に何かが少し変わったということを意味する。

コーチングがもたらす変化

コーチングには膨大な量の技術と理論があり、それはますます増え続けている。しかし、どのコーチングにも共通しているのは、人々が自分の成長の壁を超え、ブラインド・スポットを克服し、新たな発見や知見、認識に到達するのを助けるということである。壁を超えれば、不安は落ち着く。そのとき、たとえば、次のような変化が起きるのである。

  • 「セルフケアの時間がない」という考えから「セルフケアへの投資は大きな利益を生む」という考えへの変化
  • 「他人の面倒な感情に共感している時間はない」という考えから「わずかの間でも共感することで、物事をすばやく解決することができる」という考えへの変化
  • 「成長の壁を乗り越える時間がない」という考えから「成長するにつれて、自分の集中力と創造力は伸び続ける」という考えへの変化

精神科医のダン・シーゲル(Dan Siegel)氏は、否定的な感情に折り合いをつける神経生物学的な過程を「統合」、あるいは、「意識のわずかな高まり」であると説明している。心と脳は、自然と否定的な感情を落ち着かせて「統合」しようとする。色々な感情が生じたときは「一晩眠ってから考える」のが良いとされるのは、そのためである。

私はコーチングを続ける中で、クライアントが成長の壁を乗り越えるのを助け、クライアントの顔から緊張が消える瞬間を見てきた。その経験から思いついた比喩を紹介しよう。

それはあたかも不安の「粒」が、心地よさとともに一体感と調和へと変わるような感覚である。

成長の壁を克服するための視点

成長の壁の克服は個人だけの問題ではない。それは家庭、チーム、組織、制度、文化においても、日常的に姿を現している。医療業界を例に見てみよう。今日の主な成長の壁としては次のようなものがあり、それを乗り越えることで次のような変革を実現できる。

  • 「技術第一」から「人間第一」へ
  • 「厳格なプロセス」から「創造的なデザインやイノベーション」へ
  • 「トップダウン型のリーダーシップ」から「一人ひとりによるボトムアップ型の改革と自己決定」へ
  • 「派閥争い」から「連携による才能の発揮」へ
  • 「変革への躊躇」から「成長のチャンスの活用」へ
  • 「燃え尽き」から「回復力の獲得と繁栄」へ

古代ギリシャのストア派は、障害をチャンスとしてとらえることを教えてくれる。その教えは、コーチングやセルフコーチングにとってどのような意味があるだろうか? 成長の壁はチャンスである。心の動揺は、私たちの成長にとってそれが重要であることを表している。

成長の壁を乗り越えた先には、知恵が待っている。

筆者について

マーガレット・ムーア(Margaret Moore)氏は、米国、英国、カナダ、フランスにおけるバイオテクノロジー業界で17年のキャリアを持ち、2つのバイオテクノロジー企業のCEO及びCOOを務めた。2000年からは、健康関連のコーチングに軸足を移し、ウェルコーチ・コーポレーションを設立した。ムーア氏は米国コーチング研究所(IOC:the Institute of Coaching)の共同創設者および共同責任者であり、ハーバード大学エクステンション・スクールでコーチングの科学と心理学を教えている。

【翻訳】Hello, Coaching! 編集部
【原文】Hello. I am Your Growth Edge (2018年7月20日にIOC BLOGに掲載された記事の翻訳。IOCの許可を得て翻訳・掲載しています。)


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