米国コーチング研究所レポート

ハーバード大学医学大学院の外郭団体、「コーチング研究所/Institute of Coaching (IOC)」所蔵のコーチングに関する論文やリサーチ・レポート、ブログなどをご紹介します。


コーチングカルチャーをつくるには(IOCコーチング・レポート 2019年5月号より)

【原文】May 2019 Coaching Report
コーチングカルチャーをつくるには(IOCコーチング・レポート 2019年5月号より)
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優れたコーチングは新しい発見や知見を得る喜びを教えてくれる。このことを私たちが初めて経験すると、すぐにこのように考えるようになる。コーチング・カンバセーションが日常の出来事になったら、いったい世界はどうなるだろうか?人々が権威的に(上司のように偉そうに)振る舞うのをやめて、相手の強み、知見、知恵を呼び起こすオープンで創造的な会話をする方法を知ったら、どうなるだろうか?

IOC(米国コーチング研究所)のウェビナー講演者、ジェーン・ジェンキンス(Jayne Jenkins)氏は、「知らないうちに可能性を潰してしまうのではなく、人々の可能性を最大限に引き出せるようにしたい」と語っている。

コーチング・カンバセーションとはオープンで、広がりがあり、多様で、創造的な会話であるが、それはコーチングカルチャーを生み出すきっかけとなる。コーチングカルチャーが醸成されると、その組織に属する個人、チームは、めまぐるしく急速に変化するこの前例のない時代に対応する能力を身につけることができるようになる。

IOCのソートリーダー(先進的な考えを主導するリーダー)がコーチングカルチャーについて語ったこととは

コーチングカルチャーは・・・・

「真実と勇気の文化である。コーチング・マインドセットは、誠実なコミュニケーションを実現し、人をのけ者にしたりやる気をそいだりすることを防ぐするために不可欠なものである」(ダグ・リドル(Douglas Riddle)氏、2018年

「会話を通じて人の思考と行動が広がる」(リドル氏、2015年

「コーチングの価値観を向上させるもの。真剣に取り組めるアイディアを考える手助けをしたり、より優れた長期的な解決策にたどり着けるように深く掘り下げ熟考する手助けをする」(リドル氏、2010年、418ページ

「選ばれた『有望な人材』だけでではなく、すべての人が変化に対する自分の内的な障壁を乗り越え、間違いや弱点を個人と会社の成長の好機として活かしている」(An Everyone Culture

「企業がコーチングを日々の行動や意識を支える基礎にしようと努めている」(リドル氏、2010年、416ページ

コーチングのメリットとは何か

「コーチングのスキルと枠組みを持っているリーダーは、自分の部下や他のリーダーと関係を築き、お互いに正直に話し、周囲の人々との関わりを促すことができる。」(リドル氏、2018年

「コーチングがもたらすことの1つは、リーダーはコーチングを通じて、部下の感情的な側面に配慮することと精神的な強さを持つことのバランスを取れるようになることである。

コーチングの主な役割は真実を明らかにすることであるが、コーチングが効果的なのは、『真実が不快なものであっても、その受け手は変化することができ、これからも変化する』という仮定があるからだ。コーチがクライアントに誤った行動や選択をさせたり、間違った人間関係を作らせることはない。コーチングとは、真実を明らかにし、困難な問題に向き合い、改善のために解放的な空間を作ることである」(リドル氏、2018年

コーチングカルチャーがないと何が失われるか

「コーチングの考え方や価値観に基づいて作られた文化がないと、本当のことが語られず、危機が起きるまで変化が生まれず、勇気のある人がほとんど見られなくなる。」(リドル氏、2018年

「(コーチングカルチャーがない)ほとんどの組織では、給料の出ない第二の仕事をほぼ全員がしている。その仕事とは、自分の弱点を隠し、自分の良い所を見せて、他人の印象を管理することである。このこと以上に企業のリソースを無駄にする行為はないだろう。その究極的な損失は、組織も従業員もその潜在能力を十分に発揮できないことである。」(An Everyone Culture

コーチングカルチャーを作るには

コーチングカルチャーはコーチングの連鎖から生まれる。コーチングを次のように連鎖的に広め、最終的にコーチングをビジネス計画に組み込む(リドル氏、IOCのプレゼンテーション)。

コーチにできること

論文や書籍をご覧になることをお勧めする。ダグ・リドル氏のCCL(Center for Creative Leadership)関連の本の他にも、ピーター・ホーキンズ氏が『コーチングカルチャーの創造(Creating a Coaching Culture)』という本を書いている。この本は、コーチング・カンバセーションをIR(投資家向け広報)にまで広げるヒントを教えてくれる。現在や未来の投資関係者を相手にコーチング・カンバセーションを行うことができたらどうなるか、想像してみてほしい。

コーチへの提案

コーチングカルチャーを完全な形で実現することは、口で言うほど簡単なことではない。しかし、コーチは自ら積極的に挑戦し、コーチング・カンバセーションを行う方法をすべての人に教えるべきである。それこそが、持続可能な世界の実現に向けて私たちができる最大の貢献だろう。

【筆者について】

マーガレット・ムーア(Margaret Moore)氏は、米国、英国、カナダ、フランスにおけるバイオテクノロジー業界で17年のキャリアを持ち、2つのバイオテクノロジー企業のCEOおよびCOOを務めた。2000年からは、健康関連のコーチングに軸足を移し、ウェルコーチ・コーポレーション(Wellcoaches Corporation)を設立した。ムーア氏は米国コーチング研究所(IOC:the Institute of Coaching)の共同創設者および共同責任者であり、ハーバード大学エクステンション・スクールでコーチングの科学と心理学を教えている。

【翻訳】Hello, Coaching! 編集部
【原文】May 2019 Coaching Report
(2019年5月11日にIOC Resourcesに掲載された記事の翻訳。IOCの許可を得て翻訳・掲載しています。


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