米国コーチング研究所レポート

ハーバード大学医学大学院の外郭団体、「コーチング研究所/Institute of Coaching (IOC)」所蔵のコーチングに関する論文やリサーチ・レポート、ブログなどをご紹介します。


パンデミック状況下で問いたい効果的なオープン・クエスチョン

【原文】 IOC RESEARCH DOSE: Beautiful Coaching Questions
パンデミック状況下で問いたい効果的なオープン・クエスチョン
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オープン・クエスチョンの力とは

オープンエンドの思考を広げる問いかけや、示唆に富み、気づきを与える質問は、コーチングの核となるスキルである。質問は、新しい可能性とそのかなたに続く地平線への扉を開く。それは、「あなたは何をしたいですか」というシンプルなものから、「あなたが死ぬ間際に、今までやらなかったことを最も後悔するのはどんなことですか」というような深遠なものまである。

コーチや健康に関する専門家に広く利用されているモチベーショナル・インタビューに登場する豊富なフレームワークは、オープン・クエスチョンのスキルに役立つのでとても参考になる。オープン・クエスチョンとは、相手の自立性を引き出し、モチベーションを導き、行動にフォーカスしてそれを促進する質問である。このモチベーショナル・インタビューは、広範なエビデンスに基づき多くのメタアナリシスと1,000以上の無作為化比較研究の手法で実施されている。

理想的なコーチングとは、オープン・クエスチョンによって熟考がうながされるようなものである。オープン・クエスチョンはクライアントの視野を広げ、熟考はクライアントの探求を深めるのである。

パンデミックの状況下で集められた質問

コーチは日頃からセッションのために素晴らしい質問を集め、コーチングの質問に関するかなりの数の本を読んでいる。今回の記事では、IOCの研究員や関係者から集められたコーチングの質問を紹介する。それらは、私たちが現在の環境下でお互いにつながり、サポートし続けるために開催してきた最近のズームによるミーティングで集められた質問である。これらの質問は、このパンデミックの状況化で素晴らしい質問を集めようとしているあなたにとって、よい出発点となるだろう。

コーチへの質問

  1. コーチとしてどんな人になる必要がありますか?
  2. マインドフルコーチングとは、どのようなものですか?
  3. クライアントが必要としているものを感じ取る能力に、自分のあり方はどのように影響していますか?
  4. 自分が答えを知らないとき、もしくは、誰にも答えがわからないときに、私はどのように答えを知っているふりをしているのでしょうか?
  5. 私はどのように自分をコントロールしているのでしょうか?

クライアントへの質問

よいものに目を向ける

  1. あなたは何に感謝していますか?
  2. このパンデミック時代の希望の光は何ですか?
  3. 何があなたを元気づけていますか?
  4. 今のあなたは、力強く前進することをどのようにとらえていますか?家庭において、そしてリーダーとして。
  5. あなたが最も楽しみにしていることは何ですか?

セルフケア

  1. あなたはどのように健康を維持し、自分自身のケアをしていますか?
  2. あなたは自分の感情に対してどのように前向きに対応していますか?
  3. 自分自身に対してどのように優しさや思いやりを示していますか?
  4. あなたは自分自身とどのような新しい関係を築いていますか?
  5. 今日、あなたの身体は何を伝えていますか(身体知)?
  6. あなたはどのように自分自身のケアをしていますか?
  7. セルフケアを改善するために何をしていますか、新しくできることはありますか?
  8. あなたのエネルギーをどのように測り、どのように改善しますか?

体験を棚卸しする

  1. 今、あなたが優先していることは何ですか?
  2. 何を考えていますか?何について考えたいですか?
  3. あなたの意識の中に入るのを許している感情はどういうものですか?また、意識に入らないようにしているのはどんな感情ですか?
  4. あなたの関係性の中で何がうまくいっていて、何がうまくいっていないのですか?
  5. どのような前提を、あなたは手放す必要がありますか?
  6. あなたが見失っていないものは何ですか?
  7. あなたが気づいたことの中で、何があなたにとって重要で、何が余計と思えるものですか?あなたの価値観の変化に対応するために、どのようにあなたの時間を使っていますか?
  8. 家庭において生産的であるために何をしていますか?
  9. 今現在、あなたに活力を与えているものは何ですか?また、活力を奪っているものは何ですか?
  10. あなたが心の最も深いところで自分自身に話しているストーリーは何ですか?あなたについて、組織について、世界について。
  11. あなたは今、最も恐れているのは何ですか?あなたの最悪の悪夢は何ですか?
  12. 今、あなたはどのようにフィードバック/フィードフォワードを受け止めていますか?ネガティブもしくは、ポジティブに。

何が良くなっているのか

  1. あなたは何を学んでいますか?あなたが忘れていたかもしれないあなた自身のことについて、何を学んでいますか?
  2. あなたがうまくいくと思ったり感じたことについて、どんなことを試してみましたか?
  3. あなたが最高の状態にあるのはいつですか?どうすればその状態になるのですか?また、どうすればもっとコンスタントにその状態をつくれるようになりますか?
  4. 表に出ることに対して、準備ができていることや待ち望んでいることは何ですか?

あなたはどうなるのか

  1. あなたは今、人から何と呼ばれていますか?
  2. 今の時勢においてどのような人として存在したいですか?
  3. あなたはどうすれば、自分自身も他人も強くすることができるのでしょうか?
  4. この時代にどの人間関係を育んでいきたいですか?

リーダーシップの変化

  1. どういうリーダーシップモデルや特徴に注目していますか?その何が優れていると思っていますか?
  2. どこで卓越したリーダーシップを見たことありますか?
  3. パジャマ姿で、自宅からマネジメントするのはどんな感じですか?
  4. 不確実で最小限のデータしかない中で、どのように意思決定をしていますか?
  5. 雑音の中からどうやって感じ取るべき合図(シグナル)を見つけていますか?
  6. チームが必要としていることをどのように感じ取っていますか?
  7. この経験は、将来のリーダーシップについて何を教えてくれますか?
  8. 今まで気づかなかったかもしれない自分のリーダーシップスキルについて、何か気づいたことはありますか?
  9. 自分の経験を共有することにどのくらい信頼をおいていますか?
  10. どのような倫理的課題が生じていますか?
  11. 何がうまくいっているかについて、あなたは今何を知っていますか?チームについて、会社について、またさまざまな局面において。

どんな未来を創るか

  1. もし魔法の杖を使うことができたら、あなたはどんな未来を想像しますか?
  2. どの時点で未来のビジョンを作るべきと思いますか?
  3. あなたはどのように未来を創造していますか?
  4. 今後、どんなことを大きくしていきたいですか?
  5. あなたは成功をどのように測りたいですか?
  6. 今から1年後の自分はどのような立場に立っていたいですか?
  7. やめたいことは何ですか?始めたいこと、続けていきたいことは何ですか?
  8. パンデミック対策が終わった時、あなたは何をやりとげたと思いたいでしょうか?
  9. 未来の自分はどんな姿をしていますか?
  10. あなたの1日の仕事/1週間の仕事は将来どうなってほしいですか?
  11. 未来の世代に何を望んでいますか?歴史書に何を語って欲しいですか?

コーチのためのヒント

今は、コーチにとってオープン・クエスチョンのレパートリーを増やすのに良い時期である。以下のヒントを覚えていて欲しい

  1. 自分のクライアントにとってタイムリーであり、また圧倒されることのない質問の領域を考えてみよう。
  2. 自分自身に尋ねてみよう - この話題で自分のクライアントが得られることは何だろうか?道筋をつけて、経験することなのか?あるいは前進することなのか?
  3. 自分自身に尋ねてみよう - 自分のクライアントは今、自分自身とどんな会話をする必要があるのだろうか?
  4. あなたのクライアントを「質問の嵐」に招き入れ、今、この瞬間に最適な質問を見つけて欲しい。

「質問を楽しもう、なぜならその質問がたくさんの扉を開いてくれるから。答えは忘れよう。なぜなら答えは常に変化するものだから。」
- Paulo Coelho

IOCチームより

参考文献

IOC Resources on Motivational Interviewing
Coaching Questions by Tony Stoltzfus
A More Beautiful Question by Warren Berger

筆者について

マーガレット・ムーア(Margaret Moore)氏は、米国、英国、カナダ、フランスにおけるバイオテクノロジー業界で17年のキャリアを持ち、2つのバイオテクノロジー企業のCEOおよびCOOを務めた。2000年からは、健康関連のコーチングに軸足を移し、ウェルコーチ・コーポレーションを設立した。ムーア氏は米国コーチング研究所(IOC:the Institute of Coaching)の共同創設者および共同責任者であり、ハーバード大学エクステンション・スクールでコーチングの科学と心理学を教えている。

アンディ・クック(Andy Cook)氏は、エグゼクティブコーチ、教育者、組織開発、リーリーダーシップ開発の専門家として20年以上の経験があり、教育学の博士号を持つ。

【翻訳】Hello, Coaching! 編集部
【原文】Beautiful Coaching Questions(2020年5月14日にIOC Resources(会員限定)に掲載された記事の翻訳。IOCの許可を得て翻訳・掲載しています。)


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