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可能性を拓く

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11月の初旬にカナダのケベックで開催されたICFの大会で、とても素晴らしい講演に出会いました。

普段から様々な人の講演を聴きますが、これまで聴いた中で間違いなくベスト3に入る講演でした。

講演者の名前はベン・ザンダー。ボストンフィルハーモニーの指揮者です。テーマはリーダーシップ。

彼はフィルハーモニーの指揮者を務める傍ら、音楽学校も経営しています。フィルハーモニーの演奏には、いつも50席程、音楽学校の生徒を招けるように席を用意しています。

ある時、フィルハーモニーのコンサートにヨーロッパからゲストピアニストを呼びました。前評判は非常に高く、チケットはあっという間に完売。当日は演奏前から会場は大変な熱気に包まれていました。

いよいよこれから開始という時に、高揚した気持ちでザンダーが観客席を見上げると、音楽学校の生徒がいるはずの席が半分ほどしか埋まっていません。多少気になりながらもザンダーは指揮を始めました。

大成功で終わった演奏後、ザンダーはスタッフに聞きました。
「うちの生徒はどうしたんだ?」

返ってきた答えは、
「どうもショッピングモールに遊びにいったらしいです」

ザンダーは、頭に一気に血が駆け上るのを感じました。チケットを手に入れたくても手に入れらない人がたくさんいる中で、せっかく空けてあるシートを無駄にして、ショッピングセンター。彼は収まりきらない気持ちを抱えたまま家に帰りました。

家で奥さんにそのことを話すと、コーチでもある彼女は言ったそうです。
「リーダーには常に3つの選択肢があるのよ。相手に妥協すること、相手にフラストレーションを感じて怒りを投げつけること、そして相手の可能性を拓くこと。あなたはどれを選択するの?」

ザンダーは考えました。明日生徒に何と言ったらいいのだろうかと。

そして、次の日。コンサートをすっぽかした生徒を前にして彼はいいました。

「君たちは昨日コンサートに来ずにショッピングモールに行くことを選んだ。でもそれは全くもって私の責任であって、君たちの責任ではないんだ。今回のコンサートがいかに君たちのキャリアにとって意義深く大事なことであるかを、私は伝え切れなかったのだから。許してほしい。本当に申し訳ないことをした」

それ以降、その生徒たちは、かつてないほど熱心に音楽の習得に努めたということです。もちろんコンサートをサボることは二度とありませんでした。

相手の可能性を拓くということの可能性について、深く考えさせられた講演でした。

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