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自律性を育てる
2008年05月28日
コーチングは、新たな部下操縦術だと誤解されている節がありますが、部下を意のままに操ろうとすることは、コーチングではありません。
そもそも本人が目標を達成しようと思っていなかったり、金メダルを取ろうと思っていないものを、外側からどうにかできるものではありません。
また、自律性をもたせるという意図以外の操作があれば、それは、結果として自律性を損なわせることにつながります。
自律性をもった人材は、仕事を依頼された瞬間から、それは自分の仕事であり、その責任は自分にあるという立場に立ちます。受身ではなく、自分から責任をとっていきます。どんなに環境が変化しようと、最後まで最善の選択を続けることを手放さないスタンスをとります。
さて、コーチングの目的は、behavior modification、つまり、習慣化された行動を変える、パターンを変えることにあります。
頭でわかっていることを、いかに行動に移し具現化していくか。そのために必要な知識やスキルを棚卸しし、それを備えさせる、そのプロセスがコーチングです。つまりコーチングには、相手にセルフマネジメント能力を身につけさせるという目的もあります。
マネジメントとは、目標達成に必要なリソース(知識・情報など)を確保し、それらを状況に応じて適宜運用しながら目標に向かうことです。これは企業などの組織集団でも、個人でも同じです。
自律した人材は、個人レベルのマネジメント、すなわちセルフマネジメントができる必要があります。
しかし問題なのは、マネジメント能力は経験を通してしか獲得できないことです。理論をいくら勉強しても、自転車には乗れないし、ゴルフで思ったようなショットができないのと同じです。ひたすら自律的な行動を繰り返し、目標達成の成功体験を重ねる中で獲得していく能力なのです。それは、スポーツ選手であっても、ビジネスマンであっても同じです。
そして、方向がずれた時に修正するための「フィードバック」をしてくれたり、自分とは違った考え方や視点を与えてくれるコーチがいることで、効果的かつ短時間で、自律した人材としてセルフマネジメント能力を身に付けていくことができるようになります。コーチの役割とはそのようなものです。
自律性をもった人材の育成には、それなりに時間がかかります。一度や二度の講義や、研修で育てられるものではありません。集中的、継続的、長期的な関わりが必要になります。
さまざまな変化を経験し、時には自ら変化を起こし、変化への対応力を身につけ、同時にクリエイティビィティを発揮できるようにならなければなりません。
したがって、あらゆる場面でコーチしなければ、自律性をもった人材育成は難しいのです。そこで、常に意識して、自律性をもった部下の育成を心がけているコーチング型マネージャーが求められていると思います。
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