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問題の本質に迫る

問題の本質に迫る
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「大学で扱うケーススタディは、非常に優れた経営の訓練の材料になる。しかし一方で、問題を教えてしまうという意味では、大きな欠陥がある」

かつてケネディ政権で国防長官を務めたロバート・マクナマラ氏は、ハーバードビジネススクールを訪れた際、そう指摘したそうです。(※1)
常に変化しつつ複雑に事情が絡み合う現実の世界では、その時々のビジネス環境、財務状態などを基にまとめられた事例が、目の前の問題にどれだけ活用できるかは未知数だということでしょう。

では、リーダーは、いかにして問題を発見することができるのでしょうか。




「問題がわかっていればいいんです。どんなに困難な問題でも、それが明確になっていれば、対処すればいいわけですから。一番不安なのは、『何が問題なのか』が見えないことなんです」

以前エグゼクティブ・コーチングをさせて頂いていたAさんも、「問題を捉えること」の難しさを語っていました。

Aさんの企業は、多国籍企業との競合が激化するなか、外資系企業の異業種事業を買収。海外に本拠地を構えるという大胆な施策は、会社にとって未経験のチャレンジでした。
その海外の本拠地に送られたのがAさんでした。
「問題」は、日々、山のように発生します。目の前の問題に対応しつつも、Aさんは、「『本当に取り組むべき問題』は何なのか?」という漠然とした不安を抱えていました。
そして、「自分がまだ知らないことがあるからだろう」と話していました。
そこで、スタッフと面談し、現場に足を運んで自分の目で見ることにしました。合弁企業の協力を得て、営業先も積極的に回りました。

その結果わかったのは、

・問題に関しては、スタッフも現象を把握し、随時報告してくれていること
・ただし、脈絡なく報告されるため、つかみどころのない「問題の山積」と思っていたこと
・むしろ、リーダーである自分が個々の現象から「本質的な問題」を見つけ出せていなかったこと

などでした。

そこで、「本質的な問題」を見出すことを意識しました。
まず、個々の現象を洗い出し、全体を眺めます。すると、別の部門や場所で起こっている問題には、共通点があることが想定できました。
ひとつの現象が、他の現象を引き起こしている可能性も判明しました。さらに、事業の「将来のビジョン」を徹底的に描き直すことをしました。
ターゲットを2020年に定め、その時点から逆算して「現状」を振り返り、どの問題が最重要事項なのか、どの問題から着手すべきなのか、どの問題が会社としてエネルギーを使うべきか、などを整理しました。

現場を捉え、将来のビジョンを見据えた上で、本質的な問題を明確にする。
Aさんは、そうしたプロセスを経て、ある「ひとつのこと」を解決すれば、広範囲に良い影響が及ぶと確信できるものを見つけました。

目の前の山積みの問題から、どう本質に迫るのか。
大安売りのバーゲンセール会場など、お客さんが殺到し、混乱するようなシーンで、「ここが先頭」と起点が明確になった瞬間に混乱が収まり、列ができるといったことはないでしょうか。
ビジネスはバーゲンの先頭が起点となるようには単純ではありませんが、未来を描くと、問題の本質がみえてくることがあるように思います。

カナダのトロント大学ロットマン・スクール・オブ・マネジメント学長を務めたロジャー・マーティンは、リーダーは「統合的思考能力」を開発しなければならない、と説いています。
情報を色々な形に組み合わせて「全体像」を合成することがリーダーの最も重要な責任だ、と。(※2)

目の前の「問題」に忙殺されるのでなく、「全体像」そして「未来のあるべき像」を見据えながら取り組むべき「本質的な問題」を見つけ出す。
リーダーにはいま、一歩引いた鳥瞰的な視点がいっそう求められているように思います。



【参考資料】

※1『決断の本質 プロセス志向の意思決定マネジメント』(英治出版)マイケル・A・ロベルト(著)
※2「How successful leaders think」 Roger Martin, Harvard Business Review, FROM THE JUNE 2007 ISSUE

※営利、非営利、イントラネットを問わず、本記事を許可なく複製、転用、販売など二次利用することを禁じます。転載、その他の利用のご希望がある場合は、編集部までお問い合わせください。

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