コーチングの基本

コーチングの歴史、具体的なコーチングスキルなど、コーチングとは何かを知るための基礎知識をご紹介します。


エグゼクティブ・コーチングの体験
エグゼクティブがコーチをつけるということ
DBJ投資アドバイザリー株式会社 代表取締役 村上寛氏

第1章 コーチングとの出会い

第1章 コーチングとの出会い
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海外ではCEOがコーチをつけているケースが珍しくありませんが、日本においてもエグゼクティブコーチをつけている経営トップが増えつつあります。そのお一人であるDBJ投資アドバイザリー株式会社の代表取締役である村上寛氏に、エグゼクティブがコーチをつける意味やその価値についてお話を伺いました。

第1章 コーチングとの出会い
第2章 コーチングの体験
第3章 コーチングはどんな人に機能するか?

第1章 コーチングとの出会い

村上さんとコーチングの出会いは偶然だったといいます。また、最初はご自身がコーチをつけるという興味ではなく、お客様へのサービスの一つとして検討していたとのこと。第1回では、村上さんご自身がどのような経緯でエグゼクティブコーチをつけることにされたのかについてお話しいただきました。

「よくわからないけど、いいかも」

村上さんは、ご自身がエグゼクティブコーチをつけていらして、かつ、会社にも組織開発の観点でコーチングを導入されています。まずは、いつ、どのようなきっかけで村上さんご自身がコーチングを受け始められたのかを教えてください

村上 欧州企業を買収するときにお手伝いをしたA社のグローバル会議がニューヨークで開かれ、私たちもその会議に参加しました。その会議後のディナーの席に、A社の人でも、買収した会社の人でもない人が二人いました。誰だろうと思ったら、彼らはA社のCEOがつけていたコーチだったんです。そのCEOはもともとブルーチップ米国企業の出身の方で、その時代からずっとコーチをつけていると聞きました。それで「面白そうだな」と思い、そこにいたコーチの一人と話をしたのがコーチングを知ったきっかけです。

偶然にコーチとの出会いがあったということなんですね。

村上 そうです。実はそのときの興味は、投資先の会社のパフォーマンスを上げる施策の一つとしての興味でした。当時は、パフォーマンス向上における人的要素に注目していたので、「投資先のパフォーマンスを上げるためにコーチングを導入できないだろうか」というのがコーチングに興味をもった始まりです。

ディナーの席で名刺交換をしたら、そのコーチは定期的に日本に来ているというので、話を聞かせてほしいと言ったのです。彼と日本で2回ほど会って話を聞き、「やはり、投資先のバリューアップのために、役立つかもしれない」と思いました。

どんな点で「役に立ちそうだ」と思われたんでしょうか。

村上 うーん、正直に言うと「よくわからないけど、いいかも」と思ったという、そんな感じです(笑)。

そのコーチと話した後、A社のCEOにも、A社の人事担当役員にもコーチングの効果について話を聞きました。話を聞いて効果があるらしいことがわかったし、「アメリカではエグゼクティブがコーチをつけることはあたりまえである」ということもわかった。A社のCEOは世間で「プロ経営者」と言われるような人でしたが、彼のような人がコーチをつけているということも、コーチングというものへの信頼性や、自分自身のコーチングに対する興味を高めることに作用したと思います。

そして「本当に価値があるかどうか判断するには、まず自分でやってみたほうがよいだろう」と考え、そのコーチにお願いして自分が受けるところから始めることにしたのです。始めた当初は「なんだかよくわからないけども、差別化になるかもしれないし、面白そうだからやってみるか」という感じでしたね。コーチングの理論に納得して始めたというわけではありません。

なるほど、直感的なものだったのですね。

村上 そうです。コーチを受け始めてからコーチングの本を数冊読み、「なるほど、そういう理屈なのか」と、ピンとくるものがありました。今はどうしてコーチングが機能するのか、どういうときに機能するのかということを理解していますが、始めた当初は理屈ではなかったですね。

村上さん自身は違ったということですが、コーチングの理論を理解することは、クライアントにとって意味のあることだと思われますか。

村上 意味があると思います。逆にそれを知らないと「なんでこの人は質問ばかりしてくるんだろう?」と思うかもしれません。特に日本では、「コーチ」というと、何かを教えてくれるものだと勘違いしがちなので、クライアント側がコーチングの意味を知っているか知らないかでは質問の受け止め方が違うと思うんです。知っているほうが、おそらくより活性化された受け答えができるだろうと思います。

組織開発を目的に自社にコーチングを導入

村上さんの場合、ご自身がコーチを受けられていることに加え、会社全体にコーチングを導入されています。組織への導入については、どういう目的をもっていらっしゃるのでしょうか。

村上 コーチを受けようと決めた時期と前後して、今度は日本政策投資銀行(DBJ)の紹介でコーチ・エィの鈴木社長と知り合いになりました。鈴木さんからもコーチングのプレゼンテーションを受けて、自分がコーチをつけることとは別に、自社の組織開発のためにコーチングの導入を決めました。

現在社内には、コーチングマネジメントを学んでいる社員とエグゼクティブコーチをつけている社員がいます。コーチングマネジメントの導入は、上司と部下とのコミュニケーションを通じた組織全体によい影響を期待していますが、エグゼクティブ・コーチングについてはその社員の開発が目的です。

コーチングマネジメントを学んでいる社員については、部下育成という共通した目的があります。日本の企業で普通に育つと、部下の育成スタイルはどうしても説教スタイルになりがちです。部下に対してオフィスでは思いっきり怒鳴って、後で飲みに誘うといったスタイルが「標準仕様」です。私としてはマネジメント層の社員たちに、違うアプローチがあることを知ってほしいと思っています。

エグゼクティブコーチをつけている社員については、より大きな役割を担えるようになってほしいという思いがあります。もう一段上に行くために、自分自身についての認識を深めてほしい。

ちょうど40代前半くらいに差し掛かった社員によくあるケースなのですが、「仕事はできるけれど、リーダーになるには何かが不足している」という人材がいます。やや自己中心過ぎるとか、あるいは自信がないとか、あるいはチームプレーとは何かということが本当の意味ではわかってないなど、パターンはいろいろですが、仕事はできても真のリーダーとしてはいま一歩というケースの人材です。本当に優れたプレーヤーになるため、あるいはチームを引っ張る存在になるためには、もう一皮も二皮もむけてもらう必要がある。こういうケースは一人ひとりの課題が明確に違います。私自身がその社員にとって課題だと思っていることをコーチに伝え、コーチとその社員と3人で面談することもあります。すでに始まっていますが、どのくらい成果が出るかまだはっきりしたことはわかりません。

どのくらいの期間を考えていらっしゃるのでしょうか。

村上 場合によっては、数年かかると思います。そもそも簡単に成果が出るものとは思っていません。自分の経験からもそう思いますし、最初にお話ししたA社の経営者もそうおっしゃっていました。1年くらいで効果を期待してはいけないと思っています。

インタビュー実施日 2018年12月14日

プロフィール

村上寛 氏

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