コーチングの歴史、具体的なコーチングスキルなど、コーチングとは何かを知るための基礎知識をご紹介します。
エグゼクティブがコーチをつけるということ
DBJ投資アドバイザリー株式会社 代表取締役 村上寛氏
第3章 コーチングはどんな人に機能するか?
2019年02月26日
海外ではCEOがコーチをつけているケースが珍しくありませんが、日本においてもエグゼクティブコーチをつけている経営トップが増えつつあります。そのお一人であるDBJ投資アドバイザリー株式会社の代表取締役である村上寛氏に、エグゼクティブがコーチをつける意味やその価値についてお話を伺いました。
第1章 | コーチングとの出会い |
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第2章 | コーチングの体験 |
第3章 | コーチングはどんな人に機能するか? |
第3章 コーチはどんな人に向いているか
最終回では、コーチングは誰にとっても意味のあるものなのかということをテーマにお話をうかがいます。コーチングから最大限の効果を得るためには、クライアント(コーチングを受ける側)の姿勢や資質も大きく関係するようです。
コーチングが機能するために必要な要素とは
村上さんは、コーチをすごくうまく使っていらっしゃるように聞こえます。コーチングの成果は、コーチの技量だけでなく、クライアントがどういう意識で取り組むかという組み合わせで変わってくるところがあるように思うのですが、村上さんは何が一番大きな要素だと思われますか。
村上 コーチングが機能するには、「本人の動機、モチベーション」「コーチの技量」が必要だと思います。それからあえて言うと、コーチングに対する「会社の姿勢」でしょうか。コーチの能力が高くても、会社がその成果を評価しなければうまくいかないでしょう。会社が「組織全体のパフォーマンスを上げるために、この社員にこうなってほしい」という思いをもっていて、本人にも「もっと上にいきたい」というモチベーションがあるということが、コーチングが機能する前提になると思います。そして、本人がそういったモチベーションをもつように関わるのは、その上司の役割です。それからコーチの技量ですよね。
どれも大切な要素だと思いますが、やはり一番大事なのは本人のモチベーションでしょう。これがないと、いくら会社がその人を引き上げたいと思っていて、コーチの技量があったとしても、機能しないのではないでしょうか。
クライアント側のセットアップがすごく重要ということですね。
村上 その通りです。「どういう人がコーチングに向いているか」といえば、「動機がはっきりしてる人」である必要があります。「動機がはっきりしていて、頭が柔軟で、人と話して気づいたことを実行に移せるような実行力のある人」がコーチングに向いていると思います。気づいたことを実行できないと意味がありません。とはいえ、「動機があるかどうか」というのは絶対的な条件ですね。それ以外は資質の問題です。
あともうひとつ、コーチとの相性の影響もあるかもしれません。相性もよくて、コーチの技量もあって、本人に動機があって、本人も思考に柔軟性があって、会社もサポートしているという全部の条件がそろえば、当然大きな効果が出るでしょうね(笑)
かなりの条件が必要ですね(笑)
村上 そうなんですよ。とはいえ、そこまでの条件が整わなくても、それなりの効果はあると思います。ただ、効果は1だった10だったり、いろいろになるだろうと思います。
周囲から見てコーチが必要そうな人ほど、なかなかその価値を理解してくれないといった話を耳にすることがあります。
村上 私もそういう人をときどき見ます(笑)動機はあるものの、頑固で自分の考え方をなかなか変えられない。それは資質の問題なので難しいところです。会社としてできるのは、動機をなるべくはっきりさせること。ただ、資質の問題というのはどこかで顔を出します。それでも、続けているうちに変わる可能性があるので、チャンスを与えるのは大事だと思います。
コーチングの効果をどう測るか
村上さんご自身が周囲から「変わった」と言われるとおっしゃっていましたが、そのことは会社全体にはどのように影響していると思われますか。
村上 「エグゼクティブコーチを雇う」というのは、DBJグループの中で私がほぼ初めてのケースでした。そのときにあったのは「なぜ自分でお金を払わないのか」という議論です。「あなたのためのコーチでしょう」「英語学校に行くときには自分で払うよね」といった議論があったので、会社に費用を負担してもらうのは大変でした。私の場合、お金を払ってもらったからには、なんとしてでも周りの人に「変わった」って言わしめたかったというところもありますが(笑)、社内でのコーチングマネジメントの導入も続いているし、DBJでも導入が決まったと聞いているので、組織としても効果があったということと言えるでしょう。今は「なんでコーチングにお金を出すの?」という声は聞こえなくなりました。
会社の成長や業績向上という点で、コーチングはどれくらい寄与しているとお考えですか。
村上 コーチングの効果をどのように測るかというのは難しい話です。いい会社になっているかどうかという定性的なことを評価の項目に入れれば、その変化は明確にわかるでしょうが、「いい会社になった」という定性的な評価と業績が上がったことがどう関係しているかを証明するのが難しいことに変わりはありません。
ただそれでも、CEOの振る舞いがよくなることは、会社にとってプラスであるに決まっています。従業員のモチベーション向上につながる。当社は、エンゲージメント調査を実施するとDBJグループの中で上位に位置しています。ですから、そういうところに現れていると言えるかもしれない。CEOについてのアンケートは簡単にできるのではないでしょうか。2年経って社員から「変わった」と言われないとしたら、コーチングの効果がないということだと思いますよ。それははっきりわかると思います。
これから先の展開
先程、「この先、自分にとってのコーチングの意味はまた変わっていくだろう」とおっしゃっていましたが、どのように変わっていくとお考えですか。
村上 当初の目的である「投資先のバリューアップにどう活かせるか」という観点でのコーチとの関わりということです。投資先のエグゼクティブにコーチをつけるのがよいのか、組織的にコーチングを導入するのがよいのか、日本人と外国人のコーチではどちらがよいかなど、その会社のステージや状況によって違ってくるだろうと思います。そういうことを考えていくのが次の段階といえるでしょう。実際に、少しずつ試しているのですが、自分の会社にそれを適用するのと、お客様である投資先にやってもらうのとは、また違って、いろいろ工夫しなければいけないことがあるということがわかってきています。
コーチングを受けてもらう環境を整えるのに工夫が必要ということですね。
村上 そうですね。投資をするのであれば、投資先のパフォーマンスを上げないと意味がありません。投資先のパフォーマンスを上げるためには、人のパフォーマンスを上げるということが非常に重要です。人事制度や報酬制度を変えるなど、その手段はいろいろとあるでしょう。でも、コーチングは間違いなく強力な武器になると思うので、投資先にはどんどん入れていきたいと思っています。ただ、自分たちがお金を支払うわけではないので、どのようにコーチングを活用できるか考えているところです。
今日はありがとうございました。エグゼクティブの方にとってコーチングがどのように機能するのか、具体的なお話を伺うことができて私たちにとっても学びがありました。
村上 実感として、コーチングは企業にとって非常に価値があるものだと思います。コーチングが日本でももっと広がるといいですね。
インタビュー実施日 2018年12月14日
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