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AI時代におけるスキル・シフトに備えるには
2019年01月18日
AI時代において、企業は従業員の再教育に注力する必要がある。
今後期待されるスキル
マッキンゼーの調査では、米国とヨーロッパの企業のCEOのうち、約80%が「AIと自動化の時代において、成長を支える適切なスキルを備えた人材を確保できるかどうかを懸念している」と答えている。回答者はさまざまな業界のリーダーであり、人材を戦略の1つとして考えている。
最新のテクノロジーを導入する複雑さを考えると、当然ながら、企業には適切なアルゴリズムをデザインし、データを解釈できるような人材が必要である。一方で、機械にできない仕事を行うための「ソフトスキル」も必要になってくる。マッキンゼーの調査では、対人スキルや感情的なスキルに対する需要は2030年までに約25%増加すると見られている。また、創造力や複雑な情報を処理する能力など、高度な認知スキルへの需要のシフトも明確になっている。
既存人材の再教育と再配置
既存の労働力を変革する方法にはさまざまなものがある。企業は人材を再教育したり、利用可能な人材を最大限に活用できるように再配置したり、業務を外注したりできるほか、新しい人材を雇用したり、組織のニーズに合わない人材を解雇することができる。
しかし、予想される需要の変化に外部労働市場を利用して対応するにも限界がある。私たちの調査結果から、今後10年で需要の変化は加速すると見られる。必要な技術的スキルとソフトスキルを求める企業の数が急増した場合、フルタイム従業員の報酬や業務委託費が跳ね上がることが予測される。そのため、ほとんどの企業はグローバル企業やテクノロジー大手企業を相手にした場合、人材の確保という面で競争に勝てなくなるだろう。
再配置によって従業員の強みを活かせる場合もあるが、スキルギャップは必ず残るだろう。そのため、AI時代において、企業は生涯学習と適応力に重きを置きながら、従業員の再教育に力を入れなければならない。
再教育の手段は社内か社外か
スキルの再教育(従業員に新しいスキルや質的に異なるスキルを教えること)やスキルアップ(既存のスキルレベルを高めること)については盛んに議論されているものの、話題が先行するばかりで、大規模な取り組みはあまり見られない。
重要なのは、自社に合わせて作られた社内のトレーニングリソースやプログラムを利用するか、それとも教育機関と提携して外部の学習機会を従業員に提供するかのどちらを選択するかである。AT&Tは後者を選択した。同社は32校もの大学とパートナーシップを結び、複数のオンライン教育プラットフォームを開発することで、従業員が新しいデジタルの仕事に必要な資格を取得できるようにした。
ドイツのソフトウェア大手サップ(SAP)社やウォールマート(Walmart)社などの企業は、社内のトレーニングプログラムを活用することを選択した。ウォールマート社は米国で100以上の「アカデミー」を設立し、第一線監督者やマネージャーに授業形式やハンズオン形式のトレーニングを提供している。サップ社はデジタル・ビジネス・サービス部門の数千人の従業員向けに多岐にわたる学習プログラム・シリーズを構築し、短期集中トレーニング、先輩従業員のジョブ・シャドーイング、ピアコーチング、デジタル・ラーニングを提供している。
人材の棚卸しとは
どちらのアプローチでも、従業員の学習を重視している。ほとんどの企業にとっては、外部の教育機関と提携するほうが容易だろう。経験豊富な技術者を雇える資金力のあるテクノロジー大手との競争に勝つことができないからである。どちらの場合も、まず行うべきことは、既に確保できている人材を見直し、将来的に必要になると予想される人材と比較することである。
人材の棚卸しは、より戦略的な人材育成活動の展開に向けた第一歩でもある。多くの企業は数年以内にそれを実行する必要があるだろう。AIが推進する未来の社会においては、人材の供給力に大きく依存する戦略が採用される可能性が高いため、長期計画の策定において人事部門が果たさなければならない役割は一層重要になる。それに伴い、CHO(最高人事責任者)はCFO(最高財務責任者)と同じく中心的役割を担うようになるだろう。
人事部門の新たな役割
また、人事部門はその機能を大きく変える必要があるだろう。つまり、社内の人材層を育成するとともに生涯学習の試みを推進したり、キャリアパス別のスキル習得方法の分析などを通じて従業員の学習を支援したり、人間と機械の連携に注力したりする必要がある。長期的な目標は、ひと際高い柔軟性と適応力を従業員に身につけさせるとともに、人事部門内部でも適応力を高めることである。
的確なタイミングで適切な人材を配置することは、現代の企業が抱える最大の問題の1つである。これまでは、広い意味でのデジタル・トランスフォーメーションによって、そしてこれからは、AIと自動化によって一層顕著な形で、勝者が市場をほぼ独占することを考えると、どの企業も来るべきスキルシフトと、それが企業の展望に及ぼす影響を軽視することはできないだろう。
筆者について
ジャック・ブギン(Jacques Bughin)氏 は、マッキンゼー・アンド・カンパニー ブリュッセル支店のシニア・パートナーであり、マッキンゼー・グローバル・インスティテュートのディレクターを務める。
【翻訳】Hello, Coaching! 編集部
【原文】Preparing for the Coming Skill Shifts (2018年11月1日に『MIT スローン・マネジメント・レビュー』に掲載された記事の翻訳。同機関の許可を得て翻訳・掲載しています。)
Used with permission from MIT Sloan Management Review. All rights reserved.
https://sloanreview.mit.edu/
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