Global Coaching Watch では、海外コーチのブログ記事の翻訳を中心に、世界のコーチング業界のトレンドやトピックスをお届けします。
Google流 変革を成功させる4つの「問い」とは
2019年01月11日
Googleでは絶えず変革が行われる。しかし、変革の管理やコミュニケーションが常にうまくいっているわけではない。そこで、私たちは組織の再編を見直すためのシンプルな枠組みを策定した。それは「これを変える必要はあるか?」という問いかけから始まる。
変革へのアプローチを模索するプロセス
Googleでは、組織の再編など、社内の変革を管理する方法は統一されていない。しかし、私たちは現在、新しいアプローチの試験的導入を行っている。そのアプローチはこれまでに社内の各部署で採用され、数千人のGoogle社員に影響を与えてきた。
多くの企業と同じく、私たちは変革を最善の形で実行していなかった。Googleの従業員アンケートによると、再編が行われたあるチームでは、変革の理由を理解していたメンバーは50%にも満たず、また変革時にチームリーダーから刺激を受けたメンバーも50%未満であった。
ある研究によると、3分の2以上の組織変革活動が本来の目標を達成できていないという。私たちはクルト・レヴィン(Kurt Lewin)の変革モデル理論、ジェイ・R・ガルブレイス(Jay R. Galbrith)のスターモデル、ジェフ・ハイアット(Jeff Hiatt)のADKAR(認識、意欲、知識、能力、強化)モデル、ジョン・コッター(John Kotter)の8ステップの変革モデルなど、代表的なチェンジ・マネジメント・モデルを慎重に検討した。
これらのモデルは当然ながら、変革を最も効果的なものにするために、どのような組織に変えるかということを前提としたうえで構築されている。ところがGoogleでは、固定的な最終状態を設定しない場合が多い。ビジネスの速度を維持するために、組織構造に流動性を持たせる必要があるからだ。
組織変革を成功に導く4つの「問い」の誕生
そこで、私たちは新しいアプローチを開発した。早期から変革について対話を始めて、「この変革を行う必要はあるか?」から始まる一連の重要な「問い」について考えてもらおうと考えた。変革プロセスにチームを早い段階から巻き込み、さまざまな情報を集め、代替案を検討し、最善のアイデアを見極め、ベストの決断をしたいと考えていたからだ。
試験的導入を何度か繰り返した後、私たちは4ステップで業務部門主導の組織変革を実施するアプローチを考案した。私たちはこれを、「チェンジ・ルール(ChangeRules)」と呼んでいる。その中核にあるのは4つの分析的な「問い」である。
以下の「問い」は、変革に対する共通認識を生み出し、変革戦略と変革プロセスを1つにまとめる役割を果たす。
チームに共通認識を生み出す「問い」
フェーズ1 - 「なぜ?」
- なぜ変革を行う必要があるのか?今すぐ必要か?
- 変革はあなたのビジョンや願望に沿っているか?
- あなたが解決しようとしている問題は何か?
- どのような危険やチャンスがあるか?
- 決断を下す前に、変革が必要な理由について、誰からどのような情報が必要か?
フェーズ2 - 「何を?」
- 戦略を変えるつもりか?新しい優先課題や方向性を提案しようとしているか?
- 望ましい将来像はどのようなものか?
- 将来像を実現するにあたり、どのようなリスク/トレードオフが生じるか?
- 成功や失敗の基準は何か?
- 反対意見や代替案は何か?
- 最終決定を下す責任者は誰か?意見のすり合わせは行っているか?
フェーズ 3 - 「誰が?」
- 変革の影響を受けるのは誰か?
- 同意を取り付ける必要がある重要なステークホルダーは誰か?
- この変革の主導に関与させるべき人物は誰か?
- 変革に反対する人は誰か?どのようにすればその人の変化を支えることができるか?
フェーズ 4 - 「どのように?」
- どのように変革を実行するか?
- どのように変革を伝えるか?
- どのように変革を定着させるか?
- どのように変革を導くか?
- どのようにして変革が成功したかどうかを知ることができるか?
- どのように変革を測定するか?
新しいアプローチによる成果
私たちはまず、このアプローチの初期の案を、グローバル・ビジネス・オペレーション部門のカスタマー・サポート・グループでテストした。このグループでは、定型業務を自動化して規模を拡大する必要があった。しかし、変更が必要な理由について、それを牽引するチームと考えが一致していないことがすぐに判明した。
そこでまず、解決しようとしている問題、変更のリスク、変更を実行した場合としなかった場合のメリットやデメリットについて時間を掛けて話し合った。さらに、サービスモデルに対する変更の検討にマネージャーを巻き込んだ。このアプローチを採用することで、マネージャー全員、チームメンバーの80%(以前は50%)が変更について理解し、結果的に90%が変更の採用を表明したのである。
また、この枠組みのおかげで再編を行わずに済んだこともあった。ある新任のリーダーが既存の組織に着任したとき、他の新任リーダーと同様に、さまざまな変革を実行しようとした。しかし、私たちはこの枠組みを使い、なぜ変革する必要があるか、望ましい将来像はどのようなものかを検討した。その結果、再編を行ってもリーダーが望む方向には組織を動かせないだろうと判断したのである。
変革を定着させるには
変革を実行すると決めた場合、どのようにしてそれを定着させればよいだろうか?この枠組みを使うとき、変革活動を促し成果を高めるために、私たちは次の3つのことを行っている。
1.「なぜ」と「何を」から始める
私たちのあるリーダーが言ったとおり、「変革は絶えず行われる。しかし、この枠組みを使うことで、戦略的な事業決定を最終承認する前に、検証して明確にすることができる。」
2.急がば回れ
決定したことをただ共有するのではなく、できるだけ早い段階で、解決策の策定に従業員を関与させる。最初に腰を据えて困難な話し合いを行えば、全員を容易に導いていけるだろう。
3.最初だけでなく、最後まで尽力する
変革についてただ知らせるだけでなく、実際に変化をもたらすことにも必ず注力する。ますます多くの業界で変化が恒常的なものになっているため、この姿勢は長期的に良い効果をもたらすだろう。
変革の成功を測るには
では、変革を「定着」させることができたとしたら、どのようにして成功を測ったらよいだろうか。達成したい目標を決定し、変革の前にそれを測定しておくのである。組織の健全性を表す指標(従業員アンケート、スキル開発、人員の自然減など)やビジネス上の指標(顧客満足度、製品採用率など)を測定するとよいだろう。変革の結果、うまくいっていることや改善に関するフィードバックを促すために、毎月、メンバーに対して簡易な従業員調査を実施するようになったチームもある。
企業が成功するためには、変化に対してオープンであるとともに、チェンジ・マネジメントへの取り組み方を柔軟に変更できる必要がある。適切な「問い」(なぜ、何を、誰が、どのように)を問いかけ、すべてのステークホルダーを変革プロセスに関与させることで、企業の発展を促すことができるだろう。
【翻訳】Hello, Coaching! 編集部
【原文】Changing the change rules at Google
(re:Work*に掲載された記事の翻訳。re:Workの許可を得て翻訳・掲載しています。)
Article translated and reproduced with permission of re:Work
この記事を周りの方へシェアしませんか?
※営利、非営利、イントラネットを問わず、本記事を許可なく複製、転用、販売など二次利用することを禁じます。転載、その他の利用のご希望がある場合は、編集部までお問い合わせください。