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年上をコーチする難しさーミレニアル世代のコーチにとってのハードルとその乗り越え方ー

【原文】Millennials as Coaches: Overcoming Barriers
年上をコーチする難しさーミレニアル世代のコーチにとってのハードルとその乗り越え方ー
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ここ数年、職場ではジェネレーション・ギャップを埋める方法について盛んに議論されている。「ミレニアル世代*」という言葉は、(米国の)職場で最も多い20代から30代の人々に対する呼称として使われているが、すでに市民権を得ており、しばしば物議をかもす世代でもある。

*ミレニアル世代・・・米国で、2000年代に成人あるいは社会人になる世代。1980年代から2000年代初頭までに生まれた人をいうことが多く、ベビーブーマーの子世代にあたる。

多くの企業は、ミレニアル世代との関係を築き、世代間の協力を促進する文化の形成に力を入れている。しかし、そのことに注力しているにもかかわらず、ジェネレーション・ギャップに関する問題と、その問題をどのように明確化して対処するかという問題は依然として残っている。

プロフェッショナルによるコーチングは、このような世代間の対話を促進し、さまざまな教訓を活かすことについて大きく貢献できるようである。

年上のクライアントをコーチする際のチャレンジとは?

私と何人かの同僚は、年齢の違いとコーチングとの関係に興味を持ち、次の質問の答えを検討することで、多くのことを学べるのではないかと考えた。その質問とは、

「ミレニアル世代のコーチは年上のクライアントに対してコーチングを行う際に、どのような障害を感じているか?その障害はどのようにして取り除けるか?」

というものだ。また、本記事で追求しているアイデアを広げるために、私たちはトレーニングを受けたミレニアル世代の新人コーチ、ベビーブーム世代、およびX世代**のベテランコーチと話し合った。

**X世代・・・米国において1960年代初頭または半ばから1970年代に生まれた世代。

コーチングに特有の関係性が、職場における年齢差の壁を取り除くうえで役立つかもしれないし、少なくとも教訓は得られると私たちは考えている。コーチングは、自分より年上の人を含め、他人の成長を促進したいと考えるミレニアル世代に、良いきっかけを与えるものである。

コンサルティングやメンタリングとは異なり、優れたコーチングは、仕事経験や人生経験よりも、あり方の質、自己と他者の認識力、直観力、注意深く聞く力、高い質問力といった資質の影響を大きく受けている。これらの資質は、職業経験を積み、年を重ねて成熟することによって自然と培われる。しかし、若く経験の少ないコーチでも、これらの資質を培い、年配世代を相手にコーチとしての能力を示すことは可能だと思われる。

だが、このような考えは一般常識とは相いれないものである。ミレニアル世代がベビーブーマーをコーチングする様子は、普通は想像しにくいものだ。多くの人は、関係が逆転しているように感じるだろう。

私たちがインタビューしたミレニアル世代のコーチは、自分よりも年上の人をコーチングすることに対しておそれをいだいていた。ほぼ全員が、これまでコーチの仕事をしてきた中で、コーチとしての資質を疑われたり、自分の経験を正当化しなければならなかったり、年上のコーチからおせっかいな忠告を受けたりしたことがあったと話した。

コーチングする上で、世代共通の障害は

しかし、驚くべきことに、このような外的ストレスは、ミレニアル世代のコーチが気おくれしている主な理由ではない。彼らが最も大きな障害としてあげたのは、彼らの思い込みやセルフトークであり、それらは自己認識や自信を脅かすものとして、彼らの中に根強く存在しているのである。ベビーブーム世代とX世代のコーチに聞いても、おそらく同じものを障害としてあげただろう。つまり、年齢にかかわらず、役に立たない思考パターンはコーチングへの取り組み方に影響を与え、効果的なコーチングを行う際の足かせとなるおそれがあるのである。

若者はコーチにあまり適していないという一般常識的な考え方は、ミレニアル世代のコーチの内面に刻み込まれてしまう可能性がある。その可能性があることを意識せずにそのまま放置した場合、そのような一般常識的な考え方は年上のクライアントと効果的なコーチング・パートナーシップを構築し、維持するうえで悪影響を与えるおそれがある。しかし、ミレニアル世代のコーチ(またはあらゆる世代のコーチ)が、自分が影響を受けている内面の状態を自覚すれば、自分に課せられている責任を進んで負い、コーチとしての自信をさらにつけていくだろう。

たとえば、ミレニアル世代のコーチは「自分より年上のクライアントは物事をしっかりと理解していて、年下である自分は何も提供できるものがない」と思い込んでいるかもしれない。さらに、年上のクライアントも自分と同じように考えていると思い込んでいる可能性もある。自らを無力にするこのような思考によって、自分自身やクライアントは才能にあふれ、完全な存在だと考えられなくなるおそれがある。内面の不安がコーチングに対する集中を妨げるのである。

しかし、このようなネガティブな思い込みを捨てて、内面の状態を変える努力することで、ミレニアル世代のコーチは障害を克服することができる。

上記にあげたようなミレニアル世代のコーチは、コーチするときに、自分の能力を発揮することや楽しむことを本気で追求してもよいはずだ。自分の「ランク」に思い悩んだり、他人がどう思っているか考え込んだりすることなく、自分の年齢を武器として利用すればよい。

このようなシフト、つまり、欠けているものが完全になっていくプロセスと意識を変えていくトレーニングが始まると、ミレニアル世代のコーチは、余裕を持って堂々とコーチングやさまざまな仕事に取り組めるようになる。そして、自分が影響力を行使できる唯一の対象、つまり自分自身に対して責任を持つようになる。クライアントはそのような彼らの変化に気づくだろう。依然として自分の年齢について気にすることはあるかもしれないが、それが邪魔になることはなくなるだろう。

効果的なコーチングは、コーチとクライアントの間の強い関係、特別な会話や交流を強化する。そこでは年齢は重要ではない。ミレニアル世代でも年配のコーチでも、コーチが最高に能力を発揮するときは、状況を十分に把握し、会話の動きを容易にコントロールできる。会話の中で世代の違いが問題になったときも、そのようなコーチなら会話の動きを確実に示して維持し、コーチングが持つ変革力を高めることが可能である。

コーチングをマスターするなら、自ら進んで内面の状態を変えていかなければないようだ。年齢にかかわらず、どこまで挑戦するかを決めるのは私たち自身である。

筆者について

シアスティ・スタントン(Sheersty Stanton)氏は、ミレニアル世代の一人であり、グラスウィング・クリエイティブ社(Glasswing Creative, LLC)の代表。人やコミュニティの変化に向けた能力構築戦略に基づいた、クリエイティブなコーチングやコンサルティング・サービスを組織に対して提供している。

【翻訳】Hello, Coaching! 編集部
【原文】Millennials as Coaches: Overcoming Barriers(2018年11月19日にICFCOACHING WORLDに掲載された記事の翻訳。ICFの許可を得て翻訳・掲載しています。)


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