Global Coaching Watch

Global Coaching Watch では、海外コーチのブログ記事の翻訳を中心に、世界のコーチング業界のトレンドやトピックスをお届けします。


コミュニケーションの何に一番価値を置くのか?

【原文】What’s the best investment you can make in communication?
コミュニケーションの何に一番価値を置くのか?
メールで送る リンクをコピー
コピーしました コピーに失敗しました

その問いへの答えは、あなたが想像しているものとは違うかもしれない。

コミュニケーションは、「話す」「書く」「聞く」という3つの要素から成り立っている。私たちは幼い頃、親や保護者から話すことを学ぶ。書くことは学校で先生に教わる。では、聞くことは、いつ、どこで学ぶのだろうか?実は、その機会はどこにもない。それゆえに、聞くことを学ぶ必要がある職業を選ぶ人もいる。(例:カウンセリング、コーチング、営業)。また、人間関係を改善する方法を模索しているときに、人の話をよく聞くことを学ぶこともある。また、マネジメントトレーニングの一環として、人の話をよく聞くことを学習することもあるが、これらは定期的なものではなく、1回限りであることが多い。話すことや書くことと違い、コミュニケーションスキルとしての「聞く」はあまり教えられていない。

今日、これまで以上にコミュニケーションが重要視されている。その証拠に、「話を聞いてもらっている気がしない」と、多くの人が口々に言っているのを耳にする。話を聞いてもらうことの力、本当に話を理解してもらうことの影響力を過小評価してはいけない 。それは私たちを結びつけ、人間関係を構築していく。私たちはよい関係を築きたいと思っており、関係を築くためにはコミュニケーションが不可欠だ。あなたは、コミュニケーションをとるのがうまくなりたいだろうか?どうすればプロのようなコミュニケーションがとれるようになるのだろうか?

私はICF(国際コーチング連盟)のマスター認定コーチとして、何年も前から聞くこと・リスニングを研究し、実践してきた。もちろん、まだまだ学ぶことはあるが、今回は私にとって最も役立ったことを紹介したいと思う。私は、アクティブ・リスニングよりも強力なリスニングがあると信じている。これは、私が「スティル・マインド・リスニング(still mind listening)」と呼んでいるものである。

人にじっくりと話を聞いてもった経験はあるか?

あなたが誰かに話をじっくりと聞いてもらった時のことを思い出してみてほしい。それは、家族であったり、友人や同僚が相手だったかもしれない。あなたが十分に聞いてもらい、理解してもらったと感じたとき、つまり、あなたの会話が大切に扱われた時のことである。どうだろう?思い当たる場面はたくさんあるだろうか?

私たちの多くは、話を十分に聞いてもらった経験をあまりもっていない。私は幸運にも、ゼネラルモーターズ・ホールデンの会長兼マネージング・ディレクターであるビル・ハメル氏と仕事をする機会があったが、彼は聞き手のエキスパートだった。彼はMBWA(Management by walking around・歩き回りながらマネージメントをすること)を実践していた。自分のオフィスでポケットの小銭をジャラジャラさせながら、工場の現場から幹部用のダイニングルームに至るまで、そこで聞いたことを整理し総括していた。また、彼の妻のファニータも聞き上手であった。彼女と話をしていると、まるで自分が世界でたった一人の人間であるかのように錯覚してしまうのだ。彼女は相手が話すことに集中し、その相手と共にいることに意識を向けていたのである。ビル・クリントン大統領にもこの能力があると聞いている。ビルとファニータ・ハメルは、おそらく無意識のうちに「スティル・マインド・リスニング」という、リーダーにとってとても重要なスキルを実践していたのだと思う。

「話すことは知識の領域であり、聞くことは英知の特権である。」

オリバー・ウェンデル・ホームズ(Oliver Wendell Holmes)

スティル・マインド・リスニングとは?

では、スティル・マインド・リスニングとは何か?それは、相手の話を聞いている時に、自分がどう返そうかと考えていない状態だ。それがどういう意味なのか、あなたには分かるだろう。私たちが話を聞いているときは、コメント、反応、アドバイス、例、解決策、反論などを準備していて、心が動いていることが多い。これが、アクティブ・リスニングと呼ばれる理由だ。自分の心が活動しているため、話し手と共にいることに完全に意識を向けていないのである。話し手が一息つくと、すぐに自分の反応を伝えようとする。

多くの場合、私たちは話し手が今言ったことについて、似たような例、解決策、質問、より広範囲な、より良い、より多くの内容を伝えようと準備している。それを認めよう。このことについて罪悪感をもつ人もいるのではないだろうか。でも、私たちは皆、そうなのだ。それは間違ったことではなく、単に制限を生み出しているということだ。相手の話すことの文脈ではなく、内容だけを聞いているのだ。

あなたの大切な人や同僚と、より良い関係を築くために学ぶことは、今からでも遅くはない。では、どうやって学べるのだろうか?もしあなたが真剣に関係を築きたいと思っているなら、以下を読み進めて欲しい。

スティル・マインド・リスニングは、あなたのコミュニケーション・ツールに加えるべきひとつ上のリスニングレベルだ。もし、話し手に自分の話が聞かれている、価値を感じてもらえていると思ってもらいたいのであれば、スティル・マインド・リスニングの練習を始めることをお勧めする。職場でも家庭でも、人間関係の質が向上することは間違いない。

スティル・マインド・リスニングを実践する8つのステップ

ここでは、私が考えるスティル・マインド・リスニングの8つのステップをご紹介する。

  1. このレベルのリスニングが存在することに気づく(この記事を参考にしてほしい)。
  2. 自分の話を十分に聞いてもらえたとき、それに気づく(素晴らしい気分になり、自分が大切にされていると感じるはずだ)。
  3. この方法を実践することを意識的に決める。静かな気持ち(スティル・マインド)で話を聞くことを意識する。
  4. 気持ちが活発な状態で聞いているときにそれに気づく。「私は本当に聞いているのか、それとも自分が話す準備をしているのか」と自問してほしい。
  5. 心静かに聞くことを選択する、つまり、スティル・マインドで聞く。
  6. 自分の気持ちが漂っていることに気づいたら、今に戻ることを意識し、リラックスしよう。自分の中の思考システムを静めるといい。過去や未来のことを考えて気持ちを乱される必要はない。聞き手の内なる対話にではなく、話し手が言っていることの文脈に集中しよう。
  7. 現実的には、聞いている間、気持ちは漂い、忙しい状態に戻ったり、活動的にもなる。もう一度、心を静めて聞くことを選択しよう。
  8. リラックスして心の感度が高いときは、気持ちが忙しいときには聞くことができない文脈の中身を聞くことができることを覚えておこう。そうすれば、分析的な思考に惑わされることなく、私たちはもっと直観を感じることができる。それが、全身全霊で耳を傾けることに繋がる。

静かな心で相手の話に耳を傾けることは、相手への贈り物

聞き手が静かに話を受け止めれば、話し手が話す内容もより深くなる。そして何よりも、話し手が自分の話を聞いてもらえている、大切にしてもらえていると感じることができるのだ。これは相手へのとてもいい贈り物になる。さらにいいことに、一度この贈り物を人に与えると、これがとてもパワフルでやりがいのあることだと感じ、何度も実践するようになる。人と人とのつながりが深まっていくことに繋がるのだ。

「私がこれまでに最も敬意を払われたと感じたのは、誰かに私の考えを尋ねられ、その相手が私の答えを注意深く聞いてくれたことだった。」

ヘンリー・デイヴィッド・ソロー(Henry David Thoreau)

静かな心で聞くことを学ぶには、練習と忍耐が必要であることを覚えておいてほしい。自分自身で練習することも可能だが、早く習得したい場合は、私に連絡してもらえれば、1対1のコーチング・セッションを予定し、一緒にスティル・マインド・リスニングを体験し、練習することもできる。

スティル・マインド・リスナーの多くは、定期的に瞑想を行っている。瞑想のための時間を確保している人もいれば、ヨガのような呼吸法を行っている人もいる。定期的に静かな運動をしている人もいるし、自然の中で時間過ごすようにしている人や、シンプルに短い仮眠をとる人もいる。あなたが普段行っている、あるいはこれから行う瞑想の方法には、どのようなものがあるだろうか?

「十分に聞くということは、言葉の背景にあるものに細心の注意を払うということである。単に「音」を聞くだけではなく、話している人の本質に耳を傾ける。その人が何を知っているかだけではなく、その人がどんな人なのかを聞くのだ。耳は音の速さで働いているが、これは目が取り込む光の速さよりもはるかに遅い。ジェネラティブ・リスニング(共創的傾聴)とは、自分の中に深い沈黙を築くことで、心の聴覚を耳の自然な速度に合わせてゆっくりとさせ、言葉の背景にある意味を聞き取ることができるようにする技術である。」

ピーター・センゲ(Peter Senge)

【筆者について】
ベリンダ・マッキンネス(Belinda MacInnes)氏は、国際コーチング連盟(ICF)マスター認定コーチ(MCC)。1999年にコーチングのキャリアを開始し、グローバルで複雑な職場環境におけるエグゼクティブ・コーチングに従事している。

【翻訳】Hello, Coaching! 編集部

【原文】What’s the best investment you can make in communication?(2021年1月13日に Coach U Blog に掲載された記事の翻訳。許可を得て翻訳・掲載しています。)


この記事を周りの方へシェアしませんか?

この記事はあなたにとって役に立ちましたか?
ぜひ読んだ感想を教えてください。

投票結果をみる

※営利、非営利、イントラネットを問わず、本記事を許可なく複製、転用、販売など二次利用することを禁じます。転載、その他の利用のご希望がある場合は、編集部までお問い合わせください。

信頼関係/関係構築 聞く

コーチング・プログラム説明会 詳細・お申し込みはこちら
メールマガジン

関連記事