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あなたには「勇気」がありますか?

【原文】Do you have the courage of your convictions?
あなたには「勇気」がありますか?
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変化のスピードが速い今日、企業の経営幹部の中には機能不全を起こしてしまう人もいる。今は、リスクを冒すことや失敗に対してもっとダイナミックな姿勢をとることが求められている。


勇気。この言葉は、シニアリーダーと話す時に、現在の非常に厳しいビジネス環境下で経営幹部に求める資質として、彼らが最も頻繁にあげるキーワードだ。

ここでの勇気とは、明白な正解がない状況で、意思決定をする自信と不屈の精神を持つことを意味する。それは、たとえその決断が社内の人々の賛同を得られないとしても、会社にとって最善のことをするということだ。またそれは、会社での自分の地位を損ねるリスクを負っても、間違っていると感じる計画に従うことを拒否し、自分の表明した価値観を貫くことを意味する。 

多くのリーダーが安全策をとっている

私はこれまで何百人もの経営幹部と仕事をし、面談をしてきたが、その中には私が言うところの「ヒポクラテス的な経営幹部やマネージャー」に出会うことがあった。「ヒポクラテス的」とは、古代ギリシアの医学書「ヒポクラテスの誓い」からとったもので、「まず害をなすなかれ(”First, do no harm”)」という彼の言葉から連想したものだ。これらの経営幹部たちは、自分のキャリアや任務を遂行する上でこの言葉と同じ哲学を身につけているように感じる。彼らは安全策をとり、目立たないように行動し、あえて挑戦しないのだ。

しかし、もしあなたが上位のポジションを目指すのであれば、多くのCEOはあなたに行動する勇気があるかどうかを知ろうとしていることを忘れてはならない。もちろん、社内の全員が戦略や方針に関して大きな決断を下したり、新しい取り組みにリソースを配分したりしているわけではない。しかし、誰もが自分なりの立場でリーダーシップを発揮する必要がある。そのためには、自ら責任を担い、自分が組織にどのような影響を与えるのかを考えなければならない。

「勇気は、今、非常に貴重なスキルだと、リンクトイン(LinkedIn)のCEOであるライアン・ロスランスキーは、昨年私にこう言った。「特にコロナ禍で、正しい決断が容易にはできないときにこそ、決断を下す勇気を持つことが大切だ。多くの情報が得られるまで待つというパターンにはまることは簡単だが、今は勇気を持ってただ決断し、前進することが重要だ。多くのリーダーがその点で苦労している」

自分の意見を共有し、リスクを覚悟する

では、どうすればより大きな勇気を持つことができるのか?

議題が何であれ議論をするときには、自分の意見を持つことが大切だ。「私はチームメンバーと、いつも、勇気について話しています」と、投資会社ブラックストーンのグローバル人事責任者であるペイジ・ロスは語った。「答えがわかることが重要なのではないのです。自分の意見を持ち、それを共有することが求められます。私のチームでは、それが出来なければキャリアの進展は望めません」と彼は話す。

勇気あるリーダーは、自ら危険を冒すことが、時には間違いや失敗のリスクを伴うということも理解している。多くのCEOやシニアリーダーは、失敗を経験し、その経験から学んだことを活かせる管理職を昇進させたいと考えている。大きな決断を下し、もしつまずいたとしても、何が間違っていたのかを見極められるリーダーを彼らは求めているのだ。

失敗から学ぶ

しかし、依然として私たちは皆、完全無敵なふりをしがちである。そして、順風満帆な経歴と一貫した成功してきたことをを示す履歴書を作成する。採用面接においても、候補者は失敗や弱点を認めたがらず、「働きすぎてしまう傾向があります」とか「あまりに真剣に取り組みすぎてしまうのです」といった、ありきたりで答えにならない答えしか返ってこない。

「優柔不断でリスクを避けていれば、間違った決断はしないかもしれない」と、私が数年前にインタビューしたウェザー・カンパニーのCEOのデビッド・ケニー(現在は、市場調査会社ニールセンの経営者)は語る。「私は失敗したことのある人を雇うのが好きだ。ここには本当の挫折を経験した優秀な人材もいる。一度失敗し、そこから学んだ人たちは、リスクを冒した分、とても優秀だ。彼らはより謙虚で、より社内の文化に貢献し、失敗から学んだからこそ偉大なことを成し遂げる」 

すべてのリーダーがこのように考えているわけではない。いまだに、ヒポクラテス的な考え方を奨励する企業風土もある。そこでは、リスク回避の風土があり、何かに挑戦したけれどうまくいかなかった社員にはペナルティを課すこともある。このような企業のリーダーにとってお気に入りの言葉は 「ノー(No)」であり、たとえば 「『ブランドを守る』ことで、自分たちの価値を高めている」と自分に言い聞かせることで、その考え方を正当化しているのである。

IBMの元人事最高責任者であるダイアン・ガーソンは、会社に勤め始めたころの印象的なエピソードを話してくれた。その話はこのリスク回避の心理をうまく捉えている。「大学院を出て最初の仕事では、とても頭脳明晰な上司のもとで働きました。私は彼のところに行き、『改善のアイディアがあるのですが』と言ったことを覚えています。彼は私の話を注意深く聞いてくれて、『それは本当にいいアイディアだ。さて、ここでは良いアイディアをどう扱うかを知っているかな?』と言いながら、彼のデスクの引き出しを開けました。するとそこには丁寧に折りたたまれた小さなメモがたくさん入っていました。『これらのアイディアは机の中に入れておいて、しかるべき時に取り出すんだよ』と彼は言ったのです」

ビジネスの世界がもっと安定していて、予測可能だった頃なら、そのやり方はうまくいったかもしれない。しかし、今やそれでは通用しない。誰もが今、決断を下し、自らの視点を持ち、行動する勇気を必要としている。立ち止まっていては、あっという間に時代に取り残されてしまうのだ。


【筆者について】
アダム・ブライアント氏は、シニア・リーダーシップ開発会社であるExCo Groupのマネージング・ディレクター。ケビン・シェアー氏との共著に「The CEO Test: Master the Challenges That Make or Break All Leaders」がある。

【翻訳】Hello, Coaching! 編集部
【原文】Do you have the courage of your convictions
(2023年3月6日のstrategy+business magazineに掲載された記事の翻訳。 strategy+business magazineの許可を得て翻訳・掲載しています。)
© 2023 PwC. All rights reserved. PwC refers to the PwC network and/or one or more of its member firms, each of which is a separate legal entity. Please see www.pwc.com/structure for further details.www.strategy-business.com. Translation from the original English text as published by strategy+business magazine arranged by COACH A Co., Ltd.


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