マネジメントに変化を起こしたいなら、スキルを学ぶよりまずは部下と話す時間をつくること。毎回じっくりと話す必要はなく、日常の必要な場面で短く話すことのつみ重ねが、やがて部下やあなたのマネジメントに変化をもたらします。その最初のステップや「1on1ミーティング」にも活用できるヒントがここに!
事例で学ぶ 1on1(28) 要求の代わりに「正論」を言う上司、要求の代わりに「不平不満」を言う部下
2020年11月09日
部下に、指示命令はできても、「要求」を苦手としている上司は少なくありません。
「〜してほしい」「〜しないでほしい」。そう言葉にするよりは、「〜すべき」という正論を表に出して、自分の要求を代弁させることがよくあります。
確かに、自分の「要求」を、はっきりと言葉にすることには抵抗があります。断られたり、拒絶されるかもしれないことに対する恐れ。また、もともと欲求や要求をよしとしない文化が背景にあることも否めません。したがって、要求にまつわるリスクを避けるために、正論を言ったり、交換条件を用意したりします。
コミュニケーションの目的は「要求」
しかし、コミュニケーションの目的は「要求」にあります。要求を目的としているところが、コミュニケーションと会話のいちばんの相違点なのです。要求があって、決断や行動が起こります。
特に上司から部下へ向けては、指示命令ではなく、「毅然と要求」する必要があります。なぜなら、部下が会社を辞める理由のひとつに、「上司が、自分になにを望んでいるかがわからないから」という項目が挙がっているからです。もちろん、すべての要求が通るわけではありませんが、それも了承したうえで、上司は部下に毅然と要求する必要があります。
また、部下が不平や不満を言うのは、要望を口にできないからです。要求できないことが、不平や不満になって表れているのです。その場合は、不平、不満そのものを取り扱うのではなく、
「なにかしてほしいことはある?」
「してほしくないことは?」
と、部下の要望を直接聞き出します。不平、不満の背後には、言葉にできていない「要求」があります。そうであれば、直接それを聞き出してしまうほうが、解決は早いものです。
人にお願いしたり、知らないことを聞いたりすることを苦手としている人は、決して少なくありません。コミュニケーションは「要求」することでありながら、「要求」することは敬遠されています。
「要求=コミュニケーション」によって、行動を起こし、行動を変え、行動を終わらせることができます。会話はあっても、コミュニケーションのないチームは、和気あいあいとしているかもしれません。しかし、物事が具体的になったり、お互いを刺激し、行動を誘うことはありません。
文化的な背景、個人のプライドなど、「要求」の障害になるものは考えられます。しかし「要求=コミュニケーション」をはじめることは、トレーニングによって可能になります。
(『「小さなチームは組織を変える―ネイティブ・コーチ10の法則」』伊藤守著より抜粋編集)
●要求する、要求させる
まずは自分自身に目を向けて、必要な「要求」をはじめてみましょう。
次に、部下に目を向けて、「要求」を聞き出してみましょう。
▼要求(リクエスト)についてはこちらを参考に!
リーダーシップミニ講座
【コーチング型リクエスト】 第1回 コーチング型リーダーは、部下やチームに率直にリクエストする
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