リーダーの哲学

各界で活躍される経営者やリーダーの方々に、ご自身にとっての「リーダーとしての哲学」お話しいただく記事を掲載しています。


経営者インタビュー
株式会社Kyash 鷹取真一 代表取締役 CEO

第19回 「強くなければ生きていけない。優しくなければ生きていく資格がない。」

第19回 「強くなければ生きていけない。優しくなければ生きていく資格がない。」
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さまざまな業界のトップに、経営に関する哲学をお聞きする経営者インタビューシリーズです。

今回は、送金・決済ができるデジタルウォレットアプリ「Kyash(キャッシュ)」を展開する、株式会社Kyashを創業した鷹取真一代表取締役CEOのインタビューをお届けします。送金・決済のできるアプリは数多くありますが、Kyashの特長の一つは、誰でも即座にVisaカードが発行できる点です。人々の価値観や想いが詰まったお金を、お店や人、そしてさまざまな対象に自由に届けられる「価値移動のインフラを創る」をミッションに掲げるに至った背景や、起業家として常に意識していることについて、お話をうかがいました。


鷹取 真一氏 / 株式会社Kyash 創業者 兼 代表取締役
三井住友銀行に入行後、法人営業や経営企画にて海外拠点設立、海外ベンチャーキャピタルへの出資を担当。その後、米系戦略コンサルティングファームの日米拠点にてB2C企業のデジタル戦略に携わる。2015年に株式会社Kyashを創業し、価値移動のインフラを構想するデジタルウォレット「Kyash」を提供。一般社団法人Fintech協会の元理事。
写真提供: 株式会社Kyash

「当たり前」を変えることで、世の中に価値を問う

「これができたらもっと多くの人が喜ぶんじゃないか」「こうなったらもっと良い世の中になるのに」----。

こういった思いやアイディア、気づきは多くの人が持っていると思います。僕の場合はそれを、「もしこうなったら」と思いながら生きていくのではなく、形にして実現したい。この一番難しいところに真っ向から勝負していきたい。そういう思いがとても強くて、今の起業家としての自分があると感じています。

幼少期から、母方が寿司屋を営む姿を見てきたことで、自ら主体的にモノやサービスを世の中に出していく、つくり手サイドの仕事に就きたいという思いが自然に芽生えていました。加えて、ホストファミリーとして多くの留学生を受け入れてきた家庭の中での体験にも大きな影響を受けました。留学生らと食卓を共にしていると、「どうして日本ではチップを渡さないんだ?」と言われたり、「誰に『いただきます』をしているの?」と聞かれたり、自分たちにとっての「当たり前」の文化なり慣習について、真顔で質問されることが多くありました。確かに、海を渡って違う国に行けば、日本とはまったく違うことが「当たり前」のように起きている。異国の「当たり前」が日本に入ってきたらどうなるんだろう...。

世の中の「当たり前」の概念にはギャップがある。そういう思いを肌で感じてきました。それがいつしか、誰もが受け入れているその「当たり前」がガラっと変われば、世の中がもっと良くなることもあるはず、という考えに昇華していきました。果たしてそれはどういう変革なのか。また、いろいろある中で自分がやるべきものは何なのか。銀行員として社会人生活をスタートした自分が、ずっと「それ」を考え続けて出した解が、Kyashの起業です。

お金の持つ「可能性」を開放する

私が起業して社会や世界に問うているのは、一言で言うと、お金にまつわる不便を解決する価値です。現代は、IT技術の進歩によって、インターネット、ソーシャルネットワークなど、いつでもどこでも誰でも、コミュニケーションを図ったり情報にアクセスしたりできる環境です。金融サービスは、本来テクノロジーとの親和性は高い業界であるはずなのに、こと「お金の動き」に関しては50年前から人間中心のサービス設計になりきれずにいます。

提供: 株式会社Kyash

一方で、可処分所得の高さが幸福度の高さと必ずしも一致していないように、「豊かさ」の定義そのものも変化しています。お金をいくら稼いでいるかではなく、どういうものに価値を置いているか、どのようにお金を使えているか、という視点に変わってきたように思います。例えば「1円=1ありがとう」といった概念で「お金」を使うことで、自己実現や人生に彩りが出るのではないか。そうしたエネルギーとしてのお金の側面で、人々が自由に価値交換ができる仕組みを構築したい。

そうした思いで、Kyashは「新しいお金の文化を創る」ことをビジョンに、そして「価値移動のインフラを創る」ことをミッションに掲げています。

ミッションに忠実なチームで「Beyond the Best」を目指す

Kyashには、ミッションに共感して入社してきてくれたメンバーが本当に多く、この80人超によるミッションに忠実なチームと、お金を動かすインフラのレイヤーから自前で作り上げているプロダクトとそれを支える技術力こそが、当社の大切な財産です。

このチームが思いを共にして事業を運営し続けるために、「頂点志向」「動いて風を知る」「One Team」という3つのバリューを掲げています。なかでも特に私が強く発信しているのは「頂点志向」です。頂点、すなわち業界最高峰のレベルを知ることは極めて重要ですが、そこを目指すだけでは同率一位止まりです。一位になることがゴールではありませんが、Best of Bestが何かを知るだけでなく、Bestのその先、つまりBeyond the Bestを、どう創り上げていくか。そこにチーム全体のクリエイティビティを使いたい、とよく言っています。

僕らが創りたい世界は、まったく新しい概念であり、まったく新しい価値です。これらを生み出そうとする時に、既存のものから延長線上に未来を描くのではありません。これまでとは異なる非連続な、新しい価値のある未来を、「お金」を軸にどう社会に届けられるのか。これこそが本当に大きなチャレンジです。

「収益」と「パーパス」が作るベン図の重なりを意識する

その一方で、絶対に忘れてはならない大切なことは、ビジネスとして成り立つ、収益をきちんと上げるということです。ベンチャーキャピタルなどから大きな投資をいただいて事業をしている以上、それは当然の責務です。でも、収益や利益が上がるのならどんなサービスを手がけても良いのか、となると、それはまた違います。ビジネスとして成り立つ「収益」の円と、人々の発展に貢献する「パーパス」の円で作るベン図の「重なり」の部分に、Kyashは存在意義を見出している。それを常に、意識していますし、社内にも広く共有している概念です。Kyashは、世のため人のために変革を創り出すために集まったチームだと思っています。

米国人作家レイモンド・チャンドラー(Raymond Chandler)氏の小説「プレイバック」に登場する私立探偵のセリフに「強くなければ生きていけない。優しくなければ生きていく資格がない」がありますが、これのビジネス版とでも言いましょうか。ビジネスとして成り立たなければ事業として存続はできない。けれど、本当に人々にとってより良い世界を創るために存在していないのであれば、事業として存続していく価値がない。

金融は、その行為の重要さゆえに、業務の正確性が常に優先されてきました。テクノロジーの活用によって従来の概念を民主化し、人間中心に設計していくのがKyashの社会的な役割でもあると考えています。

本記事は2021年4月の取材に基づき作成しています。
内容および所属・役職等は取材当時のものを掲載しています。
表紙写真: 株式会社Kyash


株式会社Kyash

2015年設立。株式会社Kyashは「新しいお金の文化を創る」ことを目指し、「価値移動のインフラを創る」をミッションに、Fintechサービスを提供している会社です。人々のライフスタイルに寄り添いながら、価値観や思いを自由に届けることができるインフラとして、アプリ「Kyash」を提供しています。Kyashをインストールすると、誰でもすぐにチャージ式Visaカードを発行し、銀行口座やクレジットカード経由で入金することで、Visa加盟店でお買い物ができます。また、限度額を事前に入金することで使い過ぎを防いだり、リアルタイムに利用明細を確認したりする機能もついています。Apple PayやGoogle Payにも対応しており、スマホひとつで日本全国のコンビニ・スーパー等で利用できるほか、さらに「Kyash Card」、「Kyash Card Lite」を発行すると国内外の店舗での利用も可能です。

株式会社Kyash


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