各界で活躍される経営者やリーダーの方々に、ご自身にとっての「リーダーとしての哲学」お話しいただく記事を掲載しています。
株式会社ウラタ 浦田一哉 代表取締役社長
第18回 「街づくり」を通じた好意形成で、「百年企業」を目指す
2021年10月25日
さまざまな業界のトップに、経営に関する哲学をお聞きする経営者インタビューシリーズです。
今回は、建設、不動産開発、リノベーション等の事業を手掛ける株式会社ウラタの浦田一哉代表取締役社長のインタビューをお届けします。地元・千葉県浦安市の祭り「ウラヤスフェスティバル」や社会人サッカーチーム「ブリオベッカ浦安」へのスポンサーシップなど、地域や街づくりに対する考え方や、次世代後継者を含めた人材育成の在り方などについて、お話をうかがいました。
株式会社UBS 代表取締役会長、URATA (CAMBODIA)CO.,LTD/CEO、UY UNITED CO.,LTD/CEO、WTCPP MANAGEMENT CO.,LTD/CEO。2009年、公益社団法人 浦安青年会議所 理事長。2012年、公益社団法人 日本青年会議所 国際常任理事。2013年、公益社団法人 日本青年会議所 副会頭。日本JCシニア・クラブ 世話人。一般社団法人日本サッカー名蹴会 理事。ブリオベッカ浦安 ゼネラルアドバイザー 兼 後援会会長。ウラヤスフェスティバル実行委員会 委員長。一般社団法人鴻盧舎 代表理事。東京2020オリンピック聖火リレー 聖火ランナー。
「建物」ができたその先の「街」を想う
建物を造るためには、予算、工期、顧客要求事項、コンプライアンスといった制約の塊の中でパフォーマンスを上げていかなければなりません。地域に根付いた地場の建設・不動産会社として、しっかりとルーティンをやり切ることは絶対に必要なことですが、だからといって建物を造ったら「はい、終わり」ではおもしろくない。
なんのためにここにマンションが必要で、ここに住まう人たちはどういう生活をしていくのか。建物が建ったその先まで、会社として関心・興味を持ち続け想像することができる、そういう会社でありたいと思っています。その思いから、ウラタは「より良い文化と街のつくり手を育み、地域社会から信頼される企業市民を目指す」ことを基本理念として掲げています。
地域に対してどう向き合うか。人々の生命と安全を守る「建物」を軸に、そこから派生する「人」と「文化」の双方をつくり上げることで、「街づくり」につなげていきたいと思っています。
街づくりは「文化」づくりと「人」づくり
僕の地元・千葉県浦安市は、海面埋立事業で造成された土地ということもあり、親世代は千葉も含めて47都道府県から移り住んで来た人が大半を占めています。もともと異なる背景を持つ人たちが集まった地域であっても、僕世代にとっては浦安こそが我がふるさと。その"地元"感を醸成するための一つの手段として、お祭りのような文化的事業があればと考えました。そこで、2000年から僕が実行委員長となって「ウラヤスフェスティバル」を立ち上げ、盛り上げてきました。浦安を離れた人も、「お祭りに参加してみようか」と地元に戻ってくるきっかけにもなりますからね。「浦安っていいよね」と地域外の人からも羨ましがられるような発展を遂げられる、そうした街づくりに寄与したいという思いは常に持ち続けています。
提供: 株式会社ウラタ
現在は、実行委員長を下の世代にバトンタッチし、僕が参画するのは企画の部分のみ。リーダーになるその経験こそが、リーダーシップの醸成につながります。なので、次世代リーダーを育成するために、リーダーの交代は必要だと感じています。
組織は継続してこそ価値がある
僕は、社長の仕事の50%は次世代育成、後継者づくりだと思います。残り50%は、自社の業績を伸ばすことでしょうか。そう言いながら1週間を振り返ると、僕は社長の仕事を最大でも2日くらいしかしていないかもしれません(笑)。どうしても事業に多くの時間を使ってしまっているのが現実です。となると、当社の最大のリスクは「僕」かもしれません。後継者がまだつくれていないのですから。
組織は、継続させていくことにこそ価値があります。組織として「百年企業」を目指すにあたって、当社では「建設・不動産業の6次産業化」と銘打ち、建設・不動産に関わるすべてのサービスを当社一社で提供できる体制の構築を図っています。18年前から社長をしている僕のミッションは、このビジネスモデルを完成させ、住まいに関すること、建物を通じて生活を豊かにすることならどんなことでも「ウラタに任せよう」と思っていただけるブランドに成長させることです。
人は個別対応で育成する
これを実践していく中で欠かせないのが人材です。いかに自立した人材を育て、揃えていくか。僕は人材育成においては個別対応が重要だと考えています。できる人材とそうでない人材がいるのは仕方ありません。ただ、そのことを考慮せず一律同じような指導をすれば、当然、漏れが出てしまい、後から自分が大変になります。
ですから僕は常に管理職層に「金太郎飴のような指導はするな」と伝えています。一を聞いて十を知るようなできる人材でなくても、手間さえかければ前に進めるようならば、その人材の育成のためにかける手間は惜しみません。また、もし足りないところを考えさせてもわからないようなら、こちらから明確に伝えもします。
組織はチーム戦。失点しない仕組みをどうやってつくるか。そのためにはウィークポイントがどこにあるかを見極め、そこを重点的に管理することが肝要です。もちろん営利企業ですから、手を施しても改善が見られない人材には厳しい決断をしなければならないときもあります。できる人材に対しては、きちんとそれを評価する。手間のかかる人材には、手を差し伸べる。これが僕の考える「人を大切にする人材育成」のあり方です。
「正しいことをする」を貫く
後継者となる人材はもちろんですが、僕が社員全員に求めることはただ一つです。「正しいことをしているか」。社会的に、倫理的に、コンプライアンスも含めて、人として正しく物事を進めることが極めて重要です。ですからコストが多少かかっても正しい方を選択する、そういう会社であり続けたい。多様な事業を展開していても、「正しいことをする」という横串が一本刺さっている。戦術はたくさんあっても戦略は一本。そんな会社でありたいと思っています。
僕はきっと、自分自身のアイディアが枯渇し、時代の先端を走れていないと実感したら、引退を意識するでしょう。現役選手としては続けられたとしても、二流になるくらいなら辞めたい、と思うアスリートの気持ちに近いと思います。特に今の世の中は、情報化や社会の多様化も進み、国境や性別など、これまで明確に定義されていたボーダーも薄まりつつあり、大きな変化の渦の中にいます。地に足のついた仕事をしっかりと続けながら、こうした変化や多様性を現実として捉え、柔軟に対応もしていく。
そして、「ウラヤスフェスティバル」しかり、社会人サッカーチーム「ブリオベッカ浦安」しかり、誰もやったことのない取り組みを通じて、地域の方々の間に「好意」を形成し、そこに生まれた信頼関係を強固にしながら、ウラタのファンを増やして未来の街づくりに貢献していきたい。そんな「尊敬される街をつくる」企業へと進化を続けていきます。
本記事は2021年7月の取材に基づき作成しています。
内容および所属・役職等は取材当時のものを掲載しています。
表紙写真: 株式会社ウラタ
株式会社ウラタ
当社は1974年に創業した建設の企画・開発、設計・施工・リフォーム・リノベーション工事の総合建設企業です。現在は「建設不動産業の6次産業化」を推進することにより社会課題の解決をするとともに、積極的な社会貢献活動を展開することで「尊敬される街をつくる」ことを目指しています。
東京・千葉エリアを中心に、自社ブランドの分譲マンションシリーズ開発や、マンション(分譲・賃貸)、オフィス・テナント・商業施設、工場・物流施設、教育・高齢者施設等の施工を数多く手がけています。また、土地の売買・開発から建物の企画、建築、販売、メンテナンス、資産運用コンサルティングにいたるまで、一貫して手がけていることも当社の強みです。
このような安定した基盤のもと、「新たな地」で「新しいビジネス」を展開していくことも必要だと考えており、浅草でのホテル事業への挑戦や近年発展が目覚ましいカンボジアへの進出など様々なビジネスを展開しています。
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